第1部第4章 成長の喜び
HORIZON GYMに通い始めて、3ヶ月が経った。
鏡の前に立つたび、里穂は確かに感じていた。
――自分の体が、変わってきている。
二の腕には、うっすらと筋肉のラインが浮かび、
背筋も自然と伸びるようになった。
なにより、ウエスト周りが引き締まったおかげで、服のサイズがひとつ下がった。
「……あれ、ちょっと、スタイル良くなった……?」
そう思えたとき、自分の中に芽生えた小さな“誇り”に、驚いた。
豊かなバストは以前と変わらず、むしろその周囲が絞られたぶん、余計に目立つようになった。
けれどそれは、かつての“コンプレックス”ではなかった。
むしろ――「自分の体を、自分でつくっている」という実感があった。
努力は、結果に変わる。
それを知ることで、人は強くなれる。
重さも、回数も、記録も、少しずつ更新されていく日々。
自分の中で確かに「できること」が増えていくことが、勉強とはまた違った種類の達成感をもたらした。
ランニングマシンも、最初は10分で息が上がっていたのに、
いまでは60分間、休まずに走り続けることができる。
その時間、イヤホンで語学教材や講義音声を聞きながら学習を続けるのも、もはや“日課”になっていた。
「汗をかくと、頭がスッキリする」
「体が元気だと、心も前向きになる」
トレーニングと学びが相乗効果を生み、生活のサイクルが安定していった。
決して派手な変化ではない。
でも、確かな変化だった。
この3ヶ月で、何かが変わった。
いや、自分で変えた。
そのことが、ただ嬉しかった。