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97話 揺れるクランハウス


 ダンジョンの29階層――夜の草原で、クランハウスを建てた。

 部屋の中で仮眠を取っていたところ、激しい音と揺れを感じた。


 皆がびっくりして個室から飛び出してくる。


「にゃにゃ! にゃんの音かにゃ!」

「凄い揺れてるのじゃー!」

「クランハウスの外から壁を叩く音がしてるぞ!」

「トール! 外に魔物がいるんじゃないかしら!」 


 ドカーーーーーーン!!

 ドカーーーーーーン!! 


 クランハウスを外側から力強く叩く音が聞こえてくる。室内が激しく揺れる。


「す、凄い音ですー!」

「お、お兄ちゃん、これ大丈夫!? クランハウス壊れそうだよ!」


「お、おう……多分、頑丈には出来てるとは思うけど……。ちょっと窓から外を見てみる!」


 クランハウスは3階のバルコニーがある部屋以外は、基本的に窓は無い。ここは1階の正面フロアだ。

 俺は、階段を駆け上がり、3階へ向かう。


「にゃ! ミーアも見に行くにゃ!」

「わらわもじゃー!」


 皆が付いて来る。


 そして、窓から外を見ると、大きな棍棒を持った巨人が数体いた。

 クランハウスを取り囲み、その大きな棍棒でハウスの外壁を力強く叩いていた。

 顔の位置が3階のバルコニーと同じ高さにある。かなり大きい。


 一応バルコニーへ出る扉は頑丈そうだ。窓も強化ガラスのような材質で出来ていて、強度はかなりあるように思える。

 

 窓を通してその巨人と目が合った。



―――鑑定―――

サイクロプス Lv390

・巨人族の魔物

・体力と筋力に優れる

・大きな棍棒での攻撃に注意

・弱点:やや魔法系等

―――――――― 


 巨大な一つ目の魔物だった。  


「うわ……でかい!」

「にゃ! にゃんと大きいのにゃ!」

「こ、これは、強そうだぞっ!」 


 ドカーーーーーーン!!

 ドカーーーーーーン!! 


 クランハウスが音を立てて揺れる。


「だ、大丈夫なのかにゃ?……」

「ま、まあ、この建物は丈夫そうだし……」


 その時――クランハウスの天井辺りからシステム音のような声が聞こえて来た。


≪クランハウスへの外部からの攻撃を確認しました≫

≪クランハウスの耐久値は100です≫


「おお! 耐久値なんてあったのか!」


≪クランハウスの耐久値が90になりました≫

≪クランハウスの耐久値が80になりました≫ 

≪クランハウスの耐久値が70になりました≫ 


「にゃにゃ! 少しづつ減っていってるにゃ!」


 早く外に出て魔物を倒した方がいいのかもしれないが……。

 これ、耐久値が無くなったらどうなるんだろう? などと思っていると――。


≪クランハウスの耐久値が0になった場合、クランハウスは消滅します≫  

≪クランハウス内の備品以外の物は、消滅後、外部にばらまかれます≫

≪クランハウス内設置のアイテムボックスの中に入っているアイテムも、消滅後、外部にばらまかれます≫  


 おお! なんか親切な説明だな。俺たちが持ち込んだ物が無くなることはないのか。それは助かる。

 まあ、所有物は自前の空間魔法やモフ猫のポーチに入れてるし、問題は無さそうだけどな。


 などと、呑気なことを考えているうちに、耐久値がどんどん減っていってる。


≪クランハウスの耐久値が20になりました≫


「にゃー! 外に出て早く魔物を倒したほうがいいかもしれないにゃー!」

「そ、そうだな! トール殿! 早くバルコニーから飛び出して倒しにいく――あっ!」


 俺たちがバルコニーに向かい、敵を倒そうと剣を構えた瞬間だった――。


≪クランハウスの耐久値が0になりました≫ 


「あ…………」


 ドゴオオオオオオオオオオーーーン!!


 クランハウスが大きな音を立てて崩れ去り、目の前が真っ白になった。

 気が付いたら、クランハウスは霧となって消え失せ、俺たちは地面に投げ出されていた。


「痛たたた……!」

「ぎにゃあああー!」

「ぐえっ!」

「いっ――! 痛い!」


 地面に投げ出されて尻もちをつく皆。痛そうだ。

 何気に地面を見ると、お菓子などが散らばっている。これはきっとミーアとイナリたちが個人的に持ち込んでいたものだろうな。


 ……などと呑気なことを考えている場合じゃない。

 

「――と、トール! か、囲まれてる…わよ……」


 サイクロプスの群れはさらに増えており、俺たちは完全に囲まれていた。


 俺は瞬時に行動に移す。風魔法を使うか!


 ――風魔法Lv7 シルフリング!!


 囲まれた時には便利な、今まで何度か使った風魔法だ。


 12体の風の妖精シルフたちが現れ、俺たちを中心に守るように回り始める。そのシルフたちは、一斉に強力な風を、周囲のサイクロプスに放つ。


「「ウォオオオオオオオオーン!!」」


 サイクロプスの群れは、叫び声を上げ霧となって消えていった。



 ふぅ、いきなりの事でびっくりしたな。


「おーい。みんな、大丈夫かー」


「にゃー、なんとか無事にゃー」

「わらわもじゃー」

「た、助かったのか……」


 どうやら皆、無事のようだ。


 しかし、クランハウスが壊れるなんて、予想もしてなかったな。普通の建物よりは頑丈に出来ているようだが、さすがに力のある魔物の攻撃には耐えられなかったようだ。


 まあおかげでクランハウスの大体の耐久性が分かった。あれだけの巨人が群れで攻撃してきたのだ。普通の建物ではあっさりと壊れることだろう。どうやらクランハウスは、通常の建物よりは頑丈に出来ているようだ。


 しかしまあ、やはり高レベル帯のダンジョン内では使うべきじゃないな。強い魔物が現れたらまたこういうことになるかもしれない。

 考えてみれば、一旦転移でダンジョンから出て休めばよかっただけの話だ。

 夜の草原が広々として気分がよかったので、ついダンジョン内で建ててしまった。今後は気を付けることにしよう。


 クランハウスが一つ無くなってしまったが、まだ予備はいくつかある。足りなくなれば、領都のB級ダンジョンでいくらでも調達できるので、全く問題ない。



 サイクロプスの群れが落としたドロップアイテムが、辺りに散らばっている。


~~~鑑定~~~

サイクロプスの角(素材)

・硬く強い武器素材となる

‥‥‥‥‥‥‥‥

サイクロプスの大棍棒(レア武器)

・攻撃力(AR)15

・装備時、体力+10、筋力+15

‥‥‥‥‥‥‥‥

ヘパイトスの鍛冶腕輪(ユニークアクセサリー:腕)

・装備時、体力+10、筋力+10

・鍛冶スキルLv+2

~~~~~~~~


 なにかいろいろと出て来たな。ユニークアイテムは、鍛冶スキルが2つも上がる腕輪だ。

 俺たちの中には、鍛冶スキルを持っている人はいないので、あまり必要ないかもしれないな。これは鍛冶師のバッカスさんにでもプレゼントするか。

 2つドロップしたので、1つはオークションに出してもいいのかもしれない。これは鍛冶師にとっては喉から手が出るほどの希少なアイテムに違いない。きっと凄い値段が付きそうな気がする。

 レアアイテムの大棍棒も、かなりのものだ。棍棒はあまり人気がないかもしれないが性能はいいのでこれも高値で売れそうだ。


 すべてのアイテムを回収する。

 さて、皆も仮眠からすっかり目が冴えてしまったようだ。


 とりあえず、駆け足で夜の草原を進み、30階層に入る。

 そろそろダンジョンの外は、夕方近くになっていることだろう、今日の探索はここまでにするか。

 明日は30階層からの探索だ。


 俺たちは転移してダンジョンを出て行った。



 ◇ 

 


 ポルポワール邸に帰ったら、ブランダさんから話しかけられた。


「トール君、こちらのオークションが少しづつ活気が出てきたようだ。トール君から買い取ったレアアイテムの中で良さそうな物を選んで出品しているのだよ。まだ、ゲルダ商会の闇オークションの方が優勢だが、こちらもこれから盛り上げていこうと思ってる」


「ブランダさん、それは良かったです。今日もレアアイテムがたくさん手に入ったので、お安くお譲りしますよ~」


「おお! それは助かる! トール君、それに皆さん、ありがとう!」


 こうして俺たちは、本日のレアアイテムの大半をブランダさんに買い取ってもらうのだった。


―――本日の売却品―――

・ブルーフェンリルの毛皮(レア素材)

・堕天使の灰衣(レア防具:ローブ)

・サイクロプスの大棍棒(レア武器)

・ご飯の製造魔具(ユニーク魔道具)

 (オリュザスの魔石付き)

――――――――――――


 実はひとつだけ「ご飯の製造魔具」というユニークアイテムが入っているが、これは流通させてもいいだろう。便利だし、オークションに出せば高値で売れそうだ。


 ちなみにブランダさんはオークションの主催者だが、自分の持っている商品を、自分の主催するオークションに出品している。まあ、手数料収益は無くなるみたいだが。

 一応、公式オークションなので、王家の方からの監査が入るが、俺から直接買い取ったものなので全く問題無いようだ。なにやら盗品検査みたいな魔道具で、出品物が正当な物なのか分かるらしい。


 ヘパイトスの鍛冶腕輪(ユニーク腕輪)も、ブランダさんに買い取ってもらうか、俺たちでオークションに出してもいいのだが、今はまだ保留にした。オークションがもう少し盛り上がってから、出品するのが良さそうだ。


 こうしてA級ダンジョン攻略と、オークション戦が平行して進みつつあるのだった。


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