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9話 妹の気持ち、エメルダの気持ち

◇ リンSide ◇


「う~ん、一体お兄ちゃんに何があったんだろう……」


 リンは最近の兄の様子にちょっと戸惑っていた。


 戸惑うと言っても決して悪い意味ではない。


 むしろいい意味で戸惑っていた。


 あの日、私の為に極上のうさぎ肉を持って帰ってくれた。あのお肉は本当に美味しくて、うれしかった。


 しかしそれ以上に、お兄ちゃんが私の為に本当に頑張って手に入れてきてくれたことがすごくうれしかったのだ。


 本人は何でもないふりをしていたけど、きっとすごく大変なことだったのだと思う。長年一緒にくらしている私にはそれがすぐに分かった。


 両親が事故で無くなってから落ち込む私を、お兄ちゃんはいままで陰で全力で守ってくれてきたのを私は知っている。お兄ちゃんの支えがあったからこそ、私もやっと立ち直ることが出来た。


 それはともかく、あの日からお兄ちゃんが見違えるくらい生き生きとしてきたことだった。お兄ちゃんが、楽しそうにしてるのは私としてもすごく嬉しいことだけど、一体何があったのだろう?


 純粋に不思議なのである。


 それに最近、毎日、お菓子や食材など高い物をお土産に持って帰ってくれるようになった。そして、毎日私に渡してくれる生活費も日に日に多くなってきてる。


 最弱冒険者のお兄ちゃんにそんなお金はあるはずはないのに……


 もしかして、お兄ちゃん強くなったのかな?


 確かに最近のお兄ちゃんは、何か今までと違ったオーラみたいなものを感じる。体つきはよくわからないけど、ふとした瞬間に今までにない何かパワーみたいなものを感じる瞬間がある。

 

 まだその強さも、明らかに感じるほど強くはないけれど、妹の私ですらちょっぴりだけど、ドキッとする瞬間がある。


 ひょっとしてお兄ちゃん、レベルが上がったのかな?


 まあなんにせよ、お兄ちゃんが幸せそうで良かった。


 いろいろと気になることがあるけれど、まああまり詮索しても悪いし、しばらくは様子見かなぁ~。


 でもお兄ちゃん、頑張りすぎていつも無理するからなあ……。まさかあの日、ホーンラビットに挑戦するなんて思っても見なかったよ。まったく、無茶しすぎだよ……。もう、無理はしないとは言ってたけど、なんか怪しいんだよね……。


「よし、お兄ちゃんが無理をしないよう、ちゃんと見張っててあげないと……」



 妹の苦労は続く――




◇ エメルダSide ◇


「う~ん、一体トールさんに何があったんだろう……」


 スキルが無いためレベル3で行き詰り、1年間もの間、最弱の冒険者だった彼。

 毎日スライムの魔石とそのドロップ品ばかり売却しわずかなお金を受け取って帰っていく彼。


 それでも明るい表情を崩さずに黙々と頑張る姿に少し惹かれ、気持ちだけだけど陰ながら応援してきた。


 そんな彼がついにスキルを得られてレベルも上がったと言う。そして、この数日でびっくりするほど大量のドロップ品を持ち込んできた。


 彼の表情もいつも以上に明るく、生き生きとしてきたのをひしひしと感じる。

 やっと報われた彼の姿に、自分のこと以上に嬉しく思えた。


 そして、より彼に興味を持ち始めている自分に気が付いた。


「ドロップ率を上げるスキルかぁ……」


 あまり聞いたことが無いスキルである。


 しかし現に信じられないほどのドロップ品を目にし、改めてすごいスキルなのかもしれないと思う。

 

 彼はスキルのことについてあまり詳しくは語らなかったけれど。もともと冒険者自身の持つスキルやステータスは秘密にすることが普通なので、あまり詮索するのも失礼だろう。


 しかし、あまりこのことが他人に知れ渡り広まったら、彼が悪い人に目をつけられる可能性もある。

 ここのギルドに集う冒険者たちは、癖がある人も多いけれど、基本的には皆いい人ばかりだと思うので、あまり心配はしてないが、やはり彼の情報が広まることは避けたほうがいいだろう。


 ギルド職員は、冒険者の情報に対する守秘義務があるし、同僚たちも皆いい人なので、彼に対して協力を惜しまないはず。

今後はギルドでしっかりと彼のことを見守っていきたいと思う。


 それはそれとして、彼と個室でのんびりとお茶をするのは楽しいなぁ……。


 そういえば、何か私の胸のあたりをチラチラと見ていたような気もするけど……多分、私の気のせいなのだろう。彼はとても紳士なのだから。


 まあでも、もしも彼がその気ならそれはそれでもいいかも~。


 ……おっといけないいけない、私ったら何てことを考えているのかしら……。



 ギルド職員エメルダの回想と妄想は続く――



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