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87話 王都へ


 ――3日後。


 俺たちは王都へ旅立つこととなった。

 今、俺たちは街の南門の前に集合している。


 男爵や冒険者ギルドのギードさんやエメルダさん、そしてジーナさんやメアリさん、ガイたちのパーティーも見送りに来てくれている。

 

 以前、エルフの里に行ったときに使用した、高級な馬車と自動操縦機能のある手綱の魔道具を男爵が貸してくれている。

 俺たちは馬車に乗りこんで、皆に手を振る。


「では、皆さん王都へ行って来ます」


「トール君、それに皆も気を付けて行ってくれ。くれぐれもミレアをよろしく頼む」

「トールさーん。気を付けていってきてくださいねー」

「トール、俺たちもいずれ王都に行くからなー! 待ってろよー!」


 見送りに来てくれた仲間たちが、手を振る。俺たちも手を振って応える。


 こうして俺たちは領都の南門を出て、はるか南、王都を目指して旅立つのだった。



 3日前、ミレアやアリシアさんも一緒に王都に旅立つことを、男爵にお願いにあがったとき、男爵は一瞬戸惑っていたが、最終的には、快く承諾してくれた。男爵としてはミレアと一時的とは言え別れることになるのは寂しいだろうが、男爵はミレアの成長を優先させて、俺たちのパーティーにミレアを託してくれたのだ。また、副騎士団長でもあるアリシアさんも、これをいい機会に見聞を広め成長を期待しているようだった。


 ジーナさんとメアリさんからは餞別として、マナポーションをたくさんもらった。また、以前渡した世界樹の枝についていた葉を使い、錬金して作った特別のマナポーションももらった。どうやら、一瞬で魔力が全回復する貴重なポーションが出来たらしい。さすがメアリさんだ。


 

 王都への道のりは遠いが、俺たちはかなり強くなっていて魔力も豊富だ。いつものように、俺とモフで交代で空間操作を使い馬車を少し浮かせる。エミリーとミレアが風魔法を使い、馬車の向かう方向へ追い風をたてる。

 事前にダンジョンで集めたユニークアイテムもかなり在庫がある。体力や筋力の上がる「黄金芋」を馬車を引く馬に食べさせながら、馬車を走らせる。


 滑るように疾走していく馬車。凄い速さだ。王都に着くのももはや時間の問題だろう。俺たちは早く王都に着きたくてワクワクする気持ちを抑えられない。


 王都は隣の領内の向こう側にある。俺たちフォレスタ領の南には伯爵家の治めるガーランダ領がある。

 伯爵領に入り、そこで1日宿屋に泊まった後、更に南に馬車を走らせる。


 伯爵領を抜けると、そこは王家の直轄地であるグランミーラ王領が開けてくる。


 大いなる加護という意味を持つ王国、グランミーラ。これが俺たちの王国だ。そして王都グランミーラへと馬車を走らせる俺たち。


 ついに王都グランミーラへ到着する。たった2日間の馬車旅だった。





 王都の北門に到着した俺たちは王都の外壁を見上げる。それはかなりの高さがあった。外壁の所々に黒い煤みたいなものが付いている。先日の魔物の襲撃の跡なのだろうか。


 門は大きく、出入りをする冒険者や商人、旅人たちなどで賑わっている。かなりの人数だ。


 門番がいて、検問をしている。人ごみに揉まれながら、門番に近づく。身分証として、俺たちはギルドカードなどを提示し、王都内に入る。


「わぁーすごい!」

「お兄ちゃん! 広くて活気があるね!」


 ミレアとリンが感嘆の声を上げる。


「私も久しぶりに来たぞ。やはり王都はスケールが違うなっ!」


 アリシアさんは久しぶりに王都に来たようだ。


 そびえ立つ王城が見え、大きな建物が所々に立っている。王都内は大通りが計画的に走り景観も素晴らしい。そして何より広い。

 通りには様々な店が開かれ、露店なども多く見られる。行き交う人々の数も、領都フォレスタとは比べ物にならないくらい多く活気に満ち溢れている。


 通りを街の中心に向かって連れだって歩く。ミレアとリンはお店や露店をキラキラとした目で見ながらはしゃいでいる。


 ここは物が溢れている。珍しい商品がたくさんある。さすが王都だ。王国の物流の中心はやはり王都にあると言えそうだ。


「お腹空いたにゃ~」

「わらわもじゃ~」


 今は昼過ぎだ。そういえば、朝軽く宿屋で食べてからだいぶ時間も経っている。


「じゃあ、あそこに行こうかしら。私たちが良く行ってた美味しい定食屋に」


「にゃっ! あそこかにゃ! それはいいにゃ~」

「わらわもそこでいいのじゃ~! お肉食べるのじゃ~」


 エミリーたちを先頭に連れだって歩く。

 しばらく歩くと、割りと大きめの定食屋があった。看板に「小鳥のさえずり亭」と書いてある。皆でその店に入る。


「いらっしゃいませ~」


 中はまずまずの賑わいだ。俺たち8人とモフは、店内の片隅にある大き目のテーブルにつく。テーブルの上にはメニューが置いてあったので、皆で目を輝かせながら、店員さんを呼ぶ。


「にゃ~、この串焼きがいいのにゃ~」

「わらわもじゃ~。このステーキも美味しそうなのじゃ~」

「私はこのサラダとフルーツの盛り合わせがいいわ。パンも美味しそうだわ」

「ミレアも!」

「みんなでいろいろとたのむといいのですぅ~」

「お兄ちゃん、このスープ美味しそう!」

「私はこのピーザというものが食べたいぞっ!」


 結局、目につく美味しそうなものすべての料理を頼んで、皆でワイワイいいながら食事を楽しむのだった。

 

「にゃあ~。おいしかったにゃ~」

「わらわも満腹なのじゃ~」

「ミレアも~」


 しばらくお茶などを飲みながらくつろいでいると、店内にガヤガヤと7~8人の男たちが入って来た。

 見るからにガラの悪そうな冒険者だ。身なりはまるで山賊のようだ。鎧は黒く、剣や斧などを持ちガチャガチャとうるさい音を立てながら、中央のテーブルに横柄にどかっと座る。


「おい! そこの店員! 酒だ! 酒を持ってこい!」

「あと、肉だ! なんでもいいから(うま)いものを出せよ!」


 うわあ……。いかにもって感じの荒くれ冒険者だな……。なんかモヒカンみたいな頭の人もいるな。ここは世紀末か? なんかめんどくさそうな男たちだな。


「にゃっ! あの男だにゃ! ミーアのしっぽを触った男! ボコボコにしてやるにゃあー!」

「あ! わらわの尾っぽを触った男もいるのじゃー! 火だるまにしてくれるのじゃー!」


 ミーアとイナリが小声で叫ぶ。


「ミーア、イナリ……。ここは店内よ。それに、あなたたちの力はもう並みの冒険者をはるかに超えてるわ。およしなさい」


 エミリーが苦笑いしながら諭す。


「にゃ~、そうだにゃ~。ミーアが本気だしたら殺しかねないにゃ~。もういいにゃ、忘れるにゃ」

「わらわもじゃ~。あんな奴ら相手にするなど、阿呆らしいのじゃ~」


 よしよし、ミーアもイナリも偉いぞ。これが余裕のある大人の対応だ。などと思っていると、彼らは他の客たちに絡み出した。


「や、やめてください!」

「いいじゃねえかよー、お嬢ちゃんたち。俺たちと一緒に酒を飲もうぜー」


 二人の若い女性が明らかに嫌そうにしている。しかし、そんなことも構わずに荒くれ冒険者たちが、女性に詰め寄っている。


「おい! もっと酒を持ってこい! それと肉はまだか!」


 ダン!


 怒鳴り声を上げ、エールをテーブルに叩きつけるモヒカン冒険者。エールの瓶が割れる。更に椅子を持ち上げ、テーブルに叩きつける蛮行。テーブルと椅子は壊れ、辺りに破片が飛び散る。


 女性の店員さんの顔が引きつり、怯えているのが見える。他の客も食事の手が止まり、怯えている。


 はあ、困ったものだな……。ちょっと魔法でも使って、お帰り願おうかな。と思っているとエミリーが静かに立ち上がった。


「あなたたち、ここは店内よ。静かにしなさい。それに関係ない女性にまで絡むのはやめなさい」


 エミリーは特に気負うことなく、当たり前のことを普通に言う。


「なんだと! そこの女! 俺たちに向かって歯向かうのか――って、こりゃ上玉の女だぜ!」

「ほんとだ! しかも皆別嬪(べっぴん)ぞろいだぜ! ぐへへ、こいつは楽しみだ!」

「俺はそこの小柄な女が好みだぜ!」

「俺は騎士みたいな女がいいぞ! くーっ、その体、たまんねえな!」


 俺たち女性メンバーに目をつけた荒くれ冒険者たちが、次々に涎をたらすような嫌らしい目を向けてくる。


 俺は彼らを鑑定してみる。ほとんどがレベルが70前後くらいだった。一人だけ90くらいのがいるが、俺たちにとってはまるで赤子のようだ。


 はあ……全く、馬鹿な男たちばかりだな。


 俺たちのレベルは皆350を超えており、数々のユニーク装備のおかげで、実質レベルは更に上がっている。今ではあの強敵、ネームドモンスター『ラーフィン』と同等かそれ以上の力を秘めている。

 例えは悪いが、ここにはラーフィン8匹、いやモフを含めると9匹いるんだぞ? 

 そんな化け物みたいな俺たちに向かってくるとは、ご愁傷さまです、としか言えないな。


 しかし、店内で争いごとはご法度だ。さてどうするかな……。 


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