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83話 因縁の対決 ②


 死霊魔法とエルフの結界が、ぶつかり合いせめぎ合っている。

 しかし、エミリーの魔力が今にも尽きそうになっていた。



 ――その時だった。エミリーの首に掛かっている首飾り――トゥーマ・レム・ミルアが輝き出した!

 満月に照らされたその首飾りは、まるで生きているかのように輝いている。


 そして、エミリーの魔力が徐々に回復していくのが感じられた。


――――――――――  

トゥーマ・レム・ミルア(ユニークアクセサリー:首飾り)

・装備時、魔力+20

・結界系の魔法Lv+1

・付与スキル 水魔法Lv3

・満月に近づくにつれ魔力回復が多くなる

・月の巫女の魂が封じ込められた首飾り――???

―――――――――― 


 月の巫女が力を貸してくれているのか! 


 そして、徐々に、徐々に、エミリーの結界が死霊魔法の漆黒の闇を押しやっていく。


「ウォオオオオオオオオオオオオオ!!」

「はぁあああああああああああああ!!」


 叫ぶニバラス。更に結界に力を籠めるエミリー。


 パァアアアアアアアアアアーーン!!


 双方の力が反発し弾け飛んだ。


 ギルドの屋根の上で膝をつくニバラス。その目は更に怒りで燃え上がっていた。


「貴様……一体何者だ…… "エルフの結界" まで使うとは……まさか……!?」


「そうよ! 私の名前はエミリー! あなたが4年前に亡き者にしたロザリーの妹よ!」 


「そうか、そうだったのか……クックッ、あのエルフの縁者(えんじゃ)か! よく覚えているぞ。あの女には全く酷い目に合わされたものだ。馬鹿な女だった。自分だけ逃げればいいものを、あの女は自分のすべての魂を魔力に変えて最後まで抵抗しやがったのだ。おかげで、私は4年もの間、傷ついた魂を回復させられる羽目になったのだ!」


「――っつ! それはあなたの勝手な言い分だわ!」


 エミリーが叫ぶ。


 その横で、男爵が怒りをかみ殺したかのような表情を浮かべ、静かにその拳を震わせている。


「いいだろう! 私の魂の半分をくれてやる。回復には十数年はかかるだろうが……。全員屍に変えてやる! ――」


 ――ゲ・エグドラバス・グラ・ウル――


「――死霊魔法!」


 再びニバラスの両手から漆黒の闇が放たれる。先ほどとは比べ物にならないくらいの闇の強さを感じる。


「――エルフの結界!」


 エミリーが再度結界を張る。


「ウォオオオオオオオオオオオオオ!!」

「はぁあああああああああああああ!!」 


 強烈な死霊魔法とエルフの結界が、再び衝突する。広場が更に振動し揺れる。


 エミリーの結界が揺れる。

 再びエミリーの首飾り――トゥーマ・レム・ミルアが輝き出す。


 しかし、エミリーの魔力は急激に減っていく。


「あぁぁああああああああああ!!」


 エミリーの悲痛な叫びが聞こえる。ミレアもエルフの結界を張るが、すぐに弾け飛ぶ。


 そしてエミリーの魔力が尽きそうになったとき、一人の男が静かにエミリーの指に、指輪のようなものをそっと付けた。


 ――男爵だった。 


 その指輪がエミリーの指にはめられたとき、急激にエミリーの魔力が回復するのを感じた。


 男爵は静かな怒りを秘めながら言い放つ。 

  

「ニバラス! お前の負けだ!」


 エミリーの結界が大きく膨れ上がり、眩くまでに光輝く。


 男爵はニバラスに向かって言う。


「やっと会えたな。ニバラス。まあ、お前は私のことなどまるで眼中に無かったかもしれないがね。確かに私には、皆と違って戦う力は無い。だが、私がこの4年間何もせずにいる訳がない。私はこの日が来ることを一日たりとも忘れたことは無い。毎日、毎日、このロザリーの形見の指輪に微力ながら魔力を蓄えながらね――。私の4年分の想いが込められた魔力だ。受け取るがいい」


―――――――――

ロザリーの指輪(エルフの秘宝)

・魔力を蓄えることが出来る指輪

・一日に蓄えられる量に限りがある

・魔力容量は無限

―――――――――


「お、お前は! あの女の!――くっ!」


 エミリーの結界が更に輝き、死霊魔法の闇を封じ込める。


「そう、ロザリーは私の妻だったのだ。まあ、もはやお前には関係のないことだ……」


 男爵は俺に目を向け少しだけ頷く。


 俺は瞬時に判断する。今だ! 俺はステータスを開きながら、パーティーメンバーに目くばせをする。皆は俺の意図を感じたのか、一斉に各自ステータスを操作し始める。――SP(スキルポイント)を更に振る。


「皆! 行くぞ!」


「にゃ! わかったにゃ!」

「行くのじゃ!!」

「行くぞ!」

「頑張るのです!」


 モフが踊り出した。天から眩いばかりの光の柱が降りて来る。

 そして、ニバラスを包み込む。


「――くっ! な、なんだ、これは!!」


――――――――――

光魔法Lv8 熾天使の光柱

・強力な光の柱で敵を閉じ込め縛り付ける

――――――――――   


 シャンテが叫ぶ。

「操糸術Lv8――ツインマリオネット!」

 2本の螺旋状の強力な糸が、複数放たれ、ニバラスの四股に絡まり縛り付ける。

 ――更に叫ぶ。

「操糸術LV9――紫電の糸!」

 絡まった糸に、輝く紫色の電撃が走る。


「グァアアアアアアアア!!」


 ニバラスは、光の柱と強力な糸により、引きずられながら屋根から落ちて来る。


 ゆっくりとエミリーが前進する。更にエルフの結界が死霊魔法の闇を封じ込める。


「ウォオオオオオオオオオオオオオ!!」


 ニバラスの必死な叫びが聞こえて来る。


 イナリが叫ぶ。

「火魔法Lv9――不死鳥の炎撃フェニックスストライク!」

 灼熱の炎を纏う大きな不死鳥が現れ、ニバラスに向かう。


 アリシアさんが叫ぶ

「騎士剣術――聖光の切り裂き!」

 騎士の剣が光を放ち、ニバラスを切り裂き始める。


 ミーアが叫ぶ。

「ミーア剣術――怒涛の十連撃!」

 ミーアが魔剣ラーフィンを握りしめ、怒涛の十連撃を始める。


 リンが叫ぶ

「土魔法Lv9――魔鉱の槍牢獄!」

 魔鉱石の牢獄がニバラスを包む。その牢獄には鋭い槍がいくつもついている。


 俺も叫ぶ。

「風魔法Lv10――風竜召喚!」

 巨大な風の竜が現れ、ニバラスに猛然と向かう。


 そして、リドルフ騎士団長が叫ぶ。

「騎士剣術――全身全霊!」

 聖剣が強烈な光を放ち、大きく振りかぶられる。


 ――そして、俺たちのすべての攻撃がニバラスの体に炸裂する。


「ウォオオオオオオオオオオオオオオオオーー!!」


 ニバラスの苦痛の叫びが辺り一面に響き渡る。


「な……なぜだ……貴様たちに……ここまでの、力が……グハッ!」


 ニバラスはかなり苦しそうだ。すでに自らの魂を半分以上削っている。


「皆! もう一度だ!」


 俺たちはすかさず再び同じ一斉攻撃を仕掛けようとする。次の攻撃で決まるはずだ。


「――くっ! こ、このまま、やられるわけには、いかない……。魔王様に逆らう者よ! 最後にお前たちの誰かを一人だけ道連れにしてやる!! その力は私にはある! ――魔眼!」


 ニバラスの目が怪しく光り、辺りが灰色に染まる。


「にゃっ……?」

「くっ!?……」

「あ……!?」


 攻撃をしかけようとしていた皆が、金縛りにあったかのように動きが止まった。

 なんとか動けるようだが、体が重い。俺の鑑定機能が自然に発動する。


――――――――――

スキル:魔眼

・魔王の力を得て、深い鑑定が出来る。

・鑑定中は、自身を含め視界に入った者すべての攻撃が不能となる。

・膨大な魔力を必要とする。

――――――――――  


「クックッ、そこのハーフエルフの小娘よ! 見えるぞ! そうか、貴様がエルフの忌まわしき秘儀を継承する者だったのか! 道連れにするのはお前だ! 私のすべての魂と引き換えに――」


 男爵がミレアをかばって前に立つ。俺もミレアの前に立ち、急いで女神の装備ソケットの魔石を「精神」の上がる魔石に一気に取り換えようとするが――


 急にニバラスの動きが止まり、驚愕したかのような表情をする。 


「――なっ! なんだと! そ、そんなことがっ――!! ……クックックッ……アーッハッハッハッーー!! こいつは素晴らしい! なんたる僥倖(ぎょうこう)!! 運は我らに味方したのだ!」  


 ニバルスが何を言っているのか分からない。


「これほど素晴らしい冥途の土産が出来て嬉しいぞ! 私の命は滅んでも、この功績をもって、いつの日かまた私の命も、魔王様に甦らせてもらえるだろう! これで、もはやこの世界は魔族の支配下に置かれるのだ! そしてお前たちには長き暗黒の世が訪れ、苦しむことになるのだ! お前たちの希望は永遠に絶たれるのだ! 悔やむがいい! 嘆くがいい! お前たちは永遠に真理を知ることなく滅びてしまうのだ! こんな愉快なことは無い! アハハハハハ!!」


 ニバラスは狂気に満ちた言葉を発する。

 何を言っているのかさっぱり分からないが、不吉な予言をする。


「そうか、そうだったのか!……そんなところに隠れていたのか――(いにしえ)の勇者と聖女!! いざ、我が命のすべてをかけて、今度こそ転生の(ことわり)を封じ、永遠に死霊の世界に閉じ込めてみせよう! ――そこの女! お前の宿(やど)しその命! 死霊としてもらい受けるぞ!」


 ニバラスの気が膨れ上がる。


「――死霊魔法レベル9 ――魂砕き!」


 グアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!


 ニバラスは絶叫する。

 ニバラスの体は、漆黒の禍々しい玉となり、エルフの結界を突き破りこちらに向かってくる。


 男爵がミレアを抱きしめて庇う。


 しかし――その漆黒の禍玉(まがたま)は、ミレアではなく、別の方向に向かっていく。

 

 その禍玉の進む先には、一人の女性が驚愕の表情を浮かべて立ちすくんでいた。


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