表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
81/141

81話 闇の暗躍者


 俺たちは、防衛本部のあるギルド前の噴水広場に転移した。


 そこではお祭り騒ぎとなっていた。

 篝火(かがりび)がいくつも設置され、屋外用の椅子とテーブルなども置かれている。

 冒険者たちが、酒などを飲み、魔物との戦いの勝利を祝っていた。

 

 ギルドの建物やクランハウスの中でも、冒険者や騎士団員が集まっていて賑わっているようだ。


「よう! トール! やったな!」

「トール! 随分活躍したらしいじゃねえか!」

「そこの美人さんたちも凄かったそうじゃねえか! ありがとな!」


 冒険者たちが次々に声をかけてくる。


 男爵と騎士団長のリドルフさんの姿も見え、こちらに近づいてくる。


「トール君、本当にありがとう。どうやら魔物たちは退散したようだ。これで……ひとまずは安心だ……」


 男爵の言葉にやや不安が感じられた。


 実は俺も一抹の不安を抱えていた。まだ今回の魔物の大軍を指揮した者の姿がどこにも見えない。これだけ多くの魔物が意思を持ったかのように統率され、街を襲って来たのだ。いないはずはない。


「トール、まだ油断できないわ」


 エミリーも同じ考えのようだ。俺は広場で勝利に酔いしれている人たちを見ながら沈思する。


 ラーフィンを倒して、俺たちのパーティーメンバーは、かなりレベルが上がったはずだ。

 とりあえず俺は、自分のレベルを確認する。

――――――――――

トール Lv251 →Lv360

――――――――――

 おお、どうやら100以上レベルが上がったらしい。おそらく皆も同じくらい上がっていることだろう。


 そういえばラーフィンを倒した時のアイテムがあったな。早めに確認するか。あれほどの強敵、しかも固有種(ネームドモンスター)のドロップアイテムだ。きっと今後の力になるアイテムだろう。


 俺は広場の噴水の方へ行き、縁に腰掛けてアイテムの鑑定をする。皆も、興味をもったのか俺に付いてくる。

 アイテムをすべて取り出し鑑定する。


~~~鑑定~~~

極上のうさぎ肉:特級(食材)

・脳がとろけそうになるほど美味。

・一口食べるとレベルが10上がる(1回のみ)

・焼かなくても刺身でもいけるよっ!

‥‥‥‥‥‥‥‥

ラーフィンの毛皮(レア素材)

・闇の力が籠った最高級の毛皮

・防具、服、マント類などに有効

‥‥‥‥‥‥‥‥

魔剣ラーフィン(ユニーク武器:剣)

・攻撃力(AR)22

・装備時、全能力値+30

・剣術Lv+2

・闇の衣の力を纏う

・装備時、パーティーメンバーの全能力値+10%(基本能力値が対象)

‥‥‥‥‥‥‥‥

女神の魔剣ラーフィン(ユニーク武器:剣)

(同上)

・空間ソケット《3》

‥‥‥‥‥‥‥‥

ラーフィンの魔石

・ソケット効果(全能力値+20)

~~~~~~~~


「おおお!! すごい!」


 魔剣ラーフィン! さすがネームドモンスターレベル450のユニークアイテムだ。凄まじいARと効果だ。

 俺が突然叫んでしまったせいか、皆が興味津々の様子だ。


「と、トール殿、その剣からは物凄い力を感じるぞっ!」


 アリシアさんが興奮している。俺はアリシアさんに魔剣を渡してみた。


「――くっ! これは!」


 アリシアさんは何かに弾かれたように、その魔剣を落としてしまった。


「と、トール殿、これは魔剣ではないか!……残念ながら私には扱えないようだ……」


 リドルフ騎士団長が言う。


「我々の職業は『聖騎士』なのだ。聖剣は扱えても魔剣は扱えないのだ」


 なるほど、アリシアさんとリドルフさんの職業は「聖騎士」だったのか。そういえば俺とリンはまだ転職してなかったな。恐らくミレアもまだだろう。


「にゃ! トール、ちょっとその剣を貸してみるにゃ~」


 今度はミーアに渡してみる。


「にゃにゃにゃー!! 凄い力が湧いてくるにゃー!!」


 どうやらミーアは装備できるらしい。ミーアが魔剣ラーフィンを装備した瞬間、俺の能力値も上がった気がした。これが「装備時、パーティーメンバーの全能力値+10%」の効果だろう。素晴らしい魔剣だ。

 その後、俺も「女神の魔剣ラーフィン」を装備して、その能力が重複するか、皆にレベルを確認してもらったが、どうやら重複はしないようだった。

 とりあえず魔剣ラーフィンはミーアに持ってもらうことにした。


 俺は、自分用の「女神の魔剣ラーフィン」を持ち、空間ソケットに「ラーフィンの魔石」を入れる。この魔石も破格の能力値上昇だ。更に力が湧いてくる。そして、さすが魔剣だ。空間ソケットが3つもついている。俺は残りの2つにも「守護者の魔石」(全能力+3)を入れる。

 そして、ラーフィンと戦った時に入れ替えたリッチの魔石も、すべて元の状態に戻すことにした。

 自分のステータスを確認してみる。


――――――――――――

トール 18歳

Lv 360

体力:360+226+36 →622

魔力:360+268+36 →664

筋力:360+225+36 →621

敏捷:360+181+36 →577

精神:360+293+36 →689

幸運:360+218+36 →614


装備武器

(右手):女神の魔剣ラーフィン

(左手):女神の聖剣アウローラ

――――――――――――


 おお! ついに実質レベルは600台に達したか。

 おそらく皆も、俺よりは低くなるが、実質レベルは400台後半から500くらいはいっているのではないかと思われる。

 

 今回のレベルアップで、SPもだいぶ貯まった。俺は魔剣ラーフィンの剣術Lv+2を生かすため、剣術スキルをとりあえず3から5に上げてみた。聖剣の方にもLv+1の効果があるので、剣術レベルは8となった。いい感じだ。


 皆も、SPがかなり貯まっているので、各自思い思いに考えながらSPを振っていた。

 


「トールさんー! こんばんわー!」


 ふと女性の声がするので振り向くと、パン屋のダリアさんだった。手に大きな籠を持っている。その籠の中にはたくさんのミートサンドが入っている。


「トールさん、ミートサンドが焼けましたよ~。こちら皆さんでどうぞ~」


「おお、ダリアさん! ありがとうございます! いつ見ても美味しそうですね~」


 そういえば、ずっと戦っていたのでお腹が減ったな。皆もお腹が空いていたのか身を乗り出して目を輝かせた。ミーアとイナリは、涎を垂らしている。


「おいしいにゃ~! ありがとうにゃ~」

「これはうまいミートサンドなのじゃ~」

「ほんと! すごくおいしいよ!」


 育ち盛りの食欲はすごいな。

 あっという間に無くなったミートサンド。皆は満足そうにしていた。


 俺は空を眺める。満月が奇麗な夜だ。広場に集まっている冒険者たちも酒や食べ物を手に賑やかに笑っている。



 しかし――その時だった。ギルドの建物の屋根の上に凄まじい()を感じた。


 満月を背に一人の長身の男が立っていた。

 その顔は薄黒く目は真っ赤に燃えている。頭には2本の角のようなものが生えている。


 俺は直感した。今回の魔物の軍勢を率いていた者だ! 物凄いオーラを感じる。背筋がぞくぞくとしてくる。


 エミリーとミレアも反射的にギルドの屋根の方を見る。


「と、トール!! 魔族よ!! ついに来たわ!!」


 驚愕の表情で叫ぶエミリー。

 リドルフ騎士団長が大声を張り上げる。


「皆! 決して建物から出るな!! 広場にいる者は、今すぐ逃げるかこちらに来い!!」


 広場にいた人々は一瞬呆けていたが、すぐに尋常ではないことに気づき、慌ててクランハウスに逃げ込んだり、こちらに向かって来たりする。


 エミリーが魔族と言ったその男は薄気味悪い笑いを浮かべて、俺たちの方を見ながら、ふわりと空中に浮いて言った。


「貴様らが私のかわいい魔物たちを葬ってくれたのかな? それにラーフィンの姿まで見えないじゃないか。ハッハッハッ!! まあ、いいだろう。どのみち貴様らには死が待っている。私が自ら貴様たちを葬ってあげようではないか。クックックッ」


「皆! 円陣を組め! ここにいる人たちを守るのだ!」


 リドルフ騎士団長が、周りにいた騎士たちに命令を発する。


 たまたまこの場に居合わせた女性や子供たちもいる。騎士団たちが円陣を組んで一般人を守ろうとする。俺たちのパーティーも円陣の先頭に加わり、その不気味な男と対峙する。


 俺はその男を鑑定する。――しかし見えない! 


 すかさず俺は鑑定レベルを3から5に上げる。




―――鑑定―――

『ニバラス』 死霊術師

 Lv800

種族:高位魔族

スキル

・闇魔法:Lv8

・死霊魔法:Lv9

・闇の衣:Lv5

・魔石招集

・屍蘇生術

・魔眼

―――――――― 


 死霊術師! レベル800!


 俺は震撼する。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ