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78話 満月の夜 ② 3つの門


 俺たちはゴーダさんより、東門の辺りに強力な魔物が現れたという話を受け、すぐさまそこへ転移した。


 すると、東門の近くの外壁の一部が壊され穴が空いていた。そしてその穴から巨大な人型の魔物が次々に領都内に入って来ている。


―――鑑定―――

ハイオーク Lv90+10

・オークの上位種

・体力と筋力に優れる

・全般的に能力が高い

・弱点:やや火に弱い

―――――――― 


 すでに十数体ほど侵入しており、領都内の避難所の方へ向かっていた。 


「まずい! 避難所が危ない!」


 俺は避難所に向かう魔物たちを追おうとしたが、外壁の方を見ると、穴を魔物が更に広げようとしていた。外壁の外では、魔物たちが今にも侵入しようと待ち構えてひしめき合っているのが見える。

 騎士団や冒険者たちが必死に敵の侵入を押しとどめようとしているが、敵のほうが圧倒的に数が多い。かなり厳しそうだ。


 どうする!? パーティーを二手に別れるか?


 そう思った瞬間だった。今度は東門が軋み、今にも壊れそうになっている。更にその先に見える外壁の一部が崩れ去った。


 まずい! どんどん外壁が崩れてきている!


 壊れた外壁の間から、ひときわ強力な魔物の気配を感じる。その人型の魔物が外壁を通り抜け入って来た。



―――鑑定―――

オークジェネラル Lv250

・オークの上位種

・オークおよびハイオークを統率する

・全般的に能力が非常に高い

・弱点:特に無し

―――――――― 


 レベル250! これを早く倒さなければどんどん壁が壊される!


「皆! これ以上魔物の侵入を許すな! 手分けして壁を守るぞ!」


「分かったわ!」

「了解にゃ!」

「ここはなんとしても防ぐぞ!」


 避難所に向かって行った魔物たちの方も気になる。どうする!?


 一瞬考え込んでいると、誰かの大声が聞こえて来た。


「おーい! トール! 大丈夫かー!」

「トール! メイラさんの指示で来たわ――ってこれまずいんじゃない!?」

「と、トールさん……わわっ!」


 ガイたちのパーティーだ。


 俺は瞬時に判断する。ちょうどいい時にやって来た。


「ガイ! ここは俺たちがなんとかするからすぐに避難所へ向かってくれ! ハイオークが避難所に向かっている!」


 ガイたちはびっくりしたようだったが、すぐに行動に移す。


「分かった! トール! 避難所の方は俺らに任せろ! そっちのヤバそうなのは俺らには無理だ。トール頼むぜ!」


 ガイたちのパーティーは避難所の方へ走っていった。


 ガイたちは、先日一緒に行ったパワーレベリングで、B級ダンジョンの最下層までたどり着いている。ここ領都の冒険者の中では、すでにトップクラスの実力を持っている。レベル90や100くらいのハイオークなら余裕を持って倒せるはずだ。


 よし! まずは目の前にいるオークジェネラルを倒そう。魔法を使うと周りの味方を巻き込む恐れがあるので、俺は剣で戦うことにする。


 ――剣術Lv4(派生スキル:スラッシュ)


 俺は高くジャンプして、聖剣アウローラでオークジェネラルの首を一閃する。強力な剣技、スラッシュの一撃が聖剣に乗る。


「ギャアアアアアアアアアアアアア!!」


 オークジェネラルの断末魔の悲鳴が聞こえ、大きな霧となって消えて行く。


 今の俺の実質的なレベルは400に近い。これくらいのレベルの相手なら問題ない。


 敵の大軍は、すでに俺たちのパーティーメンバーがそれぞれ防いでいる。


 シャンテが、外壁の穴を蜘蛛の巣のように糸で塞いでいる。その手にはユニーク糸「マリオネーラ」が光っている。

 エミリーとミレアも、結界魔法を壊れた外壁に張り、これ以上敵が入ってこないよう防いでいる。

 ミーアとアリシアさんは、すでに壁を越えて入って来た魔物を、凄まじい剣裁きで倒しまくっている。

 リンは得意の土魔法を使用して、壊れた外壁を硬い土で次々に修復していっている。


 

 そして、すべての壊れた外壁が修復し、門も硬い土で補強し、壁を越えて入った敵を殲滅した。


「「おお、すごい!!」」

「そこのフードマントのパーティーの人たち! 助かったぞ。ありがとな!」


 俺たちのメンバーは全員、闇色のフードに深い青のマント姿だ。俺たちは手を振って応える。



 俺の持っているスマーフォが鳴ったので、繋いでみる。


『トールか!? ガイだ。避難所の方は無事だ。敵は全部俺たちで片づけたぞ!』


 嬉しい報告がガイから上がって来た。俺はホッとする。やはりガイたちのメンバーは頼もしいな。



 ガイとの通信を切った途端にまた、スマーフォが鳴りだした。再び繋ぐ。


『トール君! 今度は南門だ! ヤバそうなボス級の敵がいる! すぐに向かってくれないか!』


 ゴーダさんから連絡が入った。


 俺たちはすぐに南門に飛ぶ。


「――なっ! これは……!」


 南門を守る人達が、皆、虚ろな状態になって武器を手放していた。戦闘能力を完全に失っている状態のようだ。


 門が軋み今にも壊れそうになっている。そして多くの魔物が外壁に取り付き、乗り越えようとしていた。


 外壁の上に立っているのは、女性のような人型の魔物――月に照らされたその姿は怪しく、強烈なオーラを感じる。



―――鑑定―――

サキュバスクイーン Lv270

・サキュバスの上位種

・すべての魔物を統率する

・魅了、幻惑などの精神攻撃に長けている。

・弱点:特に無し

―――――――― 


 レベル270!


「まずい! 状態異常だ! エメラルドポーションを皆にかけてくれ! クイーンは俺が倒す!」


 俺はサキュバスクイーンに向かって剣を構え高くジャンプする。


 サキュバスクイーンは俺に向かって魅了魔法をかけて来たようだ。なんだかフラフラと(とりこ)にされそうな気分になってきた。


「おおおおおおおお!!」


 俺はその気分をなんとか精神力で跳ね返す。


「スラッシュ!」


 クイーンの首を刎ねる。

 サキュバスクイーンは霧となって消えて行った。


 エミリーたちが、エメラルドポーションで状態異常にかかっている人たちを次々に治していく。

 リンが土魔法で、壊れかけている南門を硬い土で固めて補強する。

 俺は外壁の上から風魔法を放ち、外壁に取りついている魔物を一掃する。

 

 こうして俺たちは戦況をくつがえし、防衛を立て直すのだった。


 

 一息ついたと同時に再び鳴るスマーフォ。


『トール君! 今度は北門に強そうなボスが現れたようだ! 北門に向かってくれ!』


 ふぅー。次から次にやって来るな。敵側の執念を感じる。


「皆! 次は北門だ! ――転移!」



 北門に着くと、目の前で外壁が壊れた。


 外壁を守っていた騎士団や冒険者たちは、防衛が厳しいと感じたのかすでに外壁から降り、離れた位置で身構えている。


 人型の魔物が次々に壊れた外壁を超えて侵入して来る。

  

―――鑑定―――

ハイオーガ Lv110+15

・体力と筋力に特に優れる

・攻撃力は特に高い

・弱点:特になし

・体は硬く物理攻撃は効きにくい。

―――――――― 


 ハイオーガの群れだ! これは騎士団や冒険者たちの手には負えない魔物の群れだ。


 更に群れの中に、図抜けて大きいオーガがいた。凄い力を感じる。

 


―――鑑定―――

オーガジェネラル Lv290

・オーガの上位種

・オーガおよびハイオーガを統率する

・全般的に能力が非常に高い

・弱点:特に無し

―――――――― 

 

 レベル290!


「皆! でかい奴は俺が倒す! 他は任せるぞ!」


「分かったわ!」

「了解にゃ!」

「殲滅するぞっ!」

 

 俺は聖剣を構え、オーガジェネラルの真上に転移する。


「おりゃああああ!! ――スラッシュ!」


 上段からジェネラルの頭に剣を力いっぱい振り下ろす。剣技の力が乗る。


「ウォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!」


 オーガジェネラルは大きな叫び声を上げ、巨大な霧となって消えて行った。


 皆の方を見る。


 ミーアの剣撃とミレアとエミリーの風魔法が見える。そして侵入してきたハイオーガはほぼ消滅されようとしていた。


 しかし、壊れた外壁の隙間から、更に次々と入ってこようとするハイオーガの群れ。 


 アリシアさんがなにか剣技を使おうとしている。


「騎士剣術! ソニックブーム!!」


 聖剣アウローラを大上段に振りかぶるアリシアさん。


 その剣先から白銀の光の刃が飛び出し、一直線に遠くまで放たれる。

 壊れた外壁の隙間から、その向こうの魔物の大軍を巻き込む光の刃。


「「ウォオオオオオオオオオオオ!!」」


 光の刃の道筋にいたハイオーガの大軍が消滅する。


 すかさず、シャンテが、壊れた外壁の部分に蜘蛛の網を張り、敵の侵入を阻む。

 そして、リンがその間に土魔法を使い、壊れた外壁を強固な土で修復していく。


「「おおお!! すごい!!」」


 周囲の騎士団や冒険者たちから歓声が上がる。


「やったわ!」

「撃退したぞっ!」

「壁は修理したよ!」


「みんな、良くやった!」


 ふぅー、危なかったな。俺は一安心する。 


 

 そして再びスマーフォが鳴った。ゴーダさんからだ。


『と、トール君……は、早く、こっちへ…戻ってきて……くれないか……』


 スマーフォ越しで聞くゴーダさんの声が震えていた。


 俺は何か嫌な予感がした。


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