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75話 B級ダンジョン迷宮主戦


 朝が来た。


 そしてついに明日は満月の夜となる。

 後は、これからB級ダンジョンの迷宮主(ボスモンスター)を倒して、明日を迎えるのみだ。


 昨日メアリさんに作ってもらった、「メアリの魔結界の杖」(ユニーク杖)はすでにエミリーに渡している。エミリーはその杖の性能の良さにびっくりしていた。特に結界系のスキルレベルが2つも上がることが、かなり助けになるようで喜んでいた。



 そして――俺たちは、今、ボス部屋の前にいる。


 B級ダンジョンの迷宮主は130レベル程度のスチールゴーレムと聞いている。しかし、俺たちは迷宮主のイレギュラーを期待している。緊張と高揚感が高まる。


 ボス部屋の前の水晶に触れる。

 ボス部屋への扉が大きな音を立ててゆっくりと開いていく。


「よし! みんな! いくぞ!」

「「「おお!!」」」

 

 皆で、扉をくぐる。後ろで扉が閉まっていく音がする。


 ガチャン


 ボス部屋の中は、C級ダンジョンのものと比べると更に一回り広い部屋になっていた。


 部屋の周辺には、等間隔で松明が設置されている。松明の灯が揺れ、広間全体を怪しく照らしている。


 部屋の奥の方から、大きな霧に包まれながら、巨大な魔物の姿が徐々に現れてくる。


「スチールゴーレムか!?……」


 魔物の姿が鮮明になりつつある。


「こ、これは――!!」


 俺たちは驚愕のあまり目を見開く。大きい!?



 天から声が聴こえてくる。



≪迷宮主に異例(イレギュラー)が発生しました≫


≪フォレスタの(ぬし)、フォレスタバタフルが、迷宮主として現れました≫


≪フォレスタバタフルのレベルは300≫



 ――繰り返す天からの声



 レベル300! 俺たちは信じられない思いで震撼する。


 松明に照らされた広間の中で、その迷宮主の全貌が明らかになる。


 C級ダンジョンのバタフルとは比べ物にならないくらいの巨大な(ちょう)の魔物だ!

 紫、赤、黄色、緑などに染められた巨大な羽が大きく広げられている。その巨体から発するオーラは凄まじい。


 皆、呆然としてその巨大な蝶を前に立ち尽くしている。 


「皆! 気を付けろ! 陣形だ!」


 皆は、ハッとして、いつもの陣形を取る。

 俺を中央に、ミーアとアリシアさんが左右を固め、前衛とする。モフとリンは俺のすぐ斜め後ろに控えている。

 後衛はエミリーを中心として、ミレア、イナリ、シャンテが集まる。


「皆! 一斉攻撃だ!!」

「「「おお!!」」」


 俺たちの必勝パターンの一斉攻撃をする。


 モフが、光魔法の弱体化の光をフォレスタバタフルにかける。

 シャンテが針を飛ばし、操糸術のマリオネットをかけてその巨大な蝶を縛り付けようとする。

 エミリーとミレアが、風の力を得たユニーク弓で強烈な矢を放つ。

 イナリが、無数の狐火を浮かべ、敵の巨体に一斉に向かわせる。

 ミーアとアリシアさんの脳筋組が、剣を手に突撃する。

 リンも土魔法の強力な岩弾を飛ばしながら、剣を持ち追撃に向かう。


 が、しかし――


「キィイイイイイイイイイイイ!!」


 フォレスタバタフルは鋭い声を上げ、巨大な羽を振動させた。辺りに強い激震が走り、旋風が吹き荒れる。


 ビュウウウウウウウウウウウウ!!


 モフの弱体化の光が、強烈な風の振動に弾かれる音がした。

 シャンテの針と糸も、強い風に飛ばされる。

 エミリーとミレアの矢も、敵の旋風により逸れる。

 イナリの無数の狐火も、吹き飛ばされる。

 ミーアとアリシアさんも、風の力に押し戻されて敵に近づけない。

 リンの土魔法の岩弾も、勢いを失い敵の目前で止まり落ちる。


 ビュウウウウウウウウウウ!!


 更に、敵の羽から煌びやかな鱗粉(りんぷん)が舞い上がり、俺たちに降り注ぐ。


 気が付いたら、皆の動きが止まっていた。


「あ……う……」

「にゃ……にゃ……」

「なっ……」

「くっ…………」


 ミーアとモフが眠りだした。アリシアさんが、痺れたように固まっている。シャンテが幻覚を見ているかのようなうつろな目をしている。イナリの顔色が悪く苦しそうだ。他の後衛の皆も似たようなものだった。リンだけがなんとか必死に体を動かそうとしているが、膝をついて息を切らしている。


 状態異常だ!! 


 催眠。麻痺。幻惑。毒――。


 俺も苦しいが何とか耐えられている感じだ。この中で一番ステータスの「精神」が高いのが俺だからかもしれない。


 これはまずい! 


 俺は瞬時に判断する。まずはエミリーを治すことだ! 俺はエメラルドポーションを素早くエミリーに振りかける。エメラルドポーションは、各種状態異常を治す優れもののポーションだ。


「トール……」


 エミリーがなんとか立ち直る。


「エミリー! 急いで結界を張ってくれ!! 敵の状態異常攻撃だ!」


 エミリーはハッとした顔をして、すぐさま結界呪文を唱える。

 皆の周囲に結界が張られる。


 俺は急いで皆にエメラルドポーションをかけて回る。


「にゃ……にゃ!」

「と、トールさん!?」

「くっ! ころで、やっと体が動くようになったか……」

「わ、わらわは、苦しかったのじゃ……」


 皆が立ち直ってきた。危ないところだった。


 俺は考える。とりあえず敵の状態異常攻撃は封じた。後はあの風の力を抑え込まないといけない。


 俺は二刀流の剣を収め、杖と扇に持ち替えた。

‥‥‥‥‥‥‥‥

女神のマギカレイマス(魔力の枝)(ユニーク武器:杖)

・攻撃力(AR)4

・装備時、魔力+25

・炎および闇の攻撃効果+10%

☆魔力+20

‥‥‥‥‥‥‥‥

女神の火炎孔雀の扇(ユニーク武器:扇)

・攻撃力(AR)6

・装備時、魔力+15

・火魔法Lv+1

・火炎系の攻撃効果上昇+20%

☆魔力+20

‥‥‥‥‥‥‥‥

 魔力を上げる装備だ。すでにそれぞれの武器の2つのソケットには、リッチの魔石(魔力+10)を入れてある。これで前より魔力がかなりあがるはずだ。


 ――水魔法Lv4(ウォーターサイクロン)


 俺はフォレストバタフルに向かって水魔法を放つ。


 敵の強烈な風と俺のウォーターサイクロンが衝突する。そして、徐々に、俺の水の力が敵の風の力を押しやって行く。


「今だ!! 皆! もう一度一斉攻撃だ!」


「「「おお!!」」」


 モフが光魔法の弱体化の光を、フォレスタバタフルにかける。今度は罹ったようだ。敵のレベルが270程に下がったはずだ。

 シャンテが操糸術のマリオネットをかけ、敵を縛り付ける。

 ミレアが風の力を得たユニーク弓で強烈な矢を放つ。

 イナリが再び、無数の狐火を浮かべ、敵の巨体に一斉に着弾させる。

 ミーアとアリシアさんの脳筋組が、剣を手に連撃する。

 リンも土魔法の強力な岩弾を敵に当てながら、剣を持ち追撃する。


 エミリーは結界魔法を張り続けている。

 俺はそのまま水魔法で敵の風の力を抑え込んでいる。


 皆の攻撃が敵に炸裂するが、まだまだだ。


 モフが伝家の宝刀を抜いた。


 ――チリン ――チリン ――チリン


 スキル「鈴の音」を3回鳴らす。

――――――――

鈴の音

・3分間、幸運値を倍に上昇させる

 (パーティーメンバーの基本ステータスが対象)

・1日3回のみ使用可能(重ね掛けにより倍増可能)

・音が鳴った瞬間、一瞬だけ敵の動きを鈍らせる

―――――――― 


 皆の基本幸運値が8倍に跳ね上がったはずだ。  


「キィイイイイイイイイ!!」


 フォレスタバタフルが悲鳴を上げる。


 ミーア、アリシアさん、リンの剣撃がすべてクリティカルヒットとなる。


「うにゃにゃにゃにゃあああ!!」

「ハァアアアアアア!!」

「エイッ! エイッ!」


 ドバババババババーーン!!

 ドバババババババーーン!!


「キュイイイイイイイイイイイイイイイイーー!」


 そして、ついにフォレスタバタフルは最後の叫びを上げた。


 ボス部屋が大きな音を立てて揺れる。


 巨大な霧となって徐々に消えて行くフォレスタバタフル。



 ――天から声が聴こえて来る。


≪フォレスタの主、フォレスタバタフルが倒されました≫


≪パーティーメンバーのレベルが上がりました≫

≪パーティーメンバーのレベルが上がりました≫

≪パーティーメンバーのレベルが上がりました≫

≪パーティーメンバーのレベルが上がりました≫

≪パーティーメンバーのレベルが上がりました≫

     ・

     ・

≪パーティーメンバーのレベルが上がりました≫



 ――繰り返す天からの声



≪パーティーメンバーのそれぞれに習得可能スキルが解放されました≫


≪パーティーメンバーのそれぞれに特別ボーナスとしてSPが与えられます≫


≪従魔、モフミィコマンドがライトモフミィに進化しました≫



 ――バタン、バタン。


≪フォレスタバタフルの通常アイテム『森林蝶の羽:特大』をドロップしました≫ 



 ――コロン。


≪フォレスタバタフルのレアアイテム『森林蝶のブローチ』をドロップしました≫ 



 ――フワッ、フワッ。


≪フォレスタバタフルのユニークアイテム『森林蝶のリボン』をドロップしました≫ 

≪フォレスタバタフルの上位ユニークアイテム『女神の森林蝶のリボン』をドロップしました≫ 



「や、やった、やったぞ! みんな!!」


「にゃにゃにゃにゃああああ~~!!」

「うおおおおおおお!!」

「やったわね!――か、体が熱いわ!」


 膨大な経験値が俺たちに流れ込んでくる。



「ミ―― ル―― レ―― ……」


 ミレアが自分の手のひらを見つめながら、自分自身に驚いたような顔をして、うわごとのようになにか呟いている。


 エミリーがハッとした表情でミレアを見つめる。


「み、ミレア……あなた、もしかして……!?」



 ミレアはいつものミレアだが、ほんの少しだけ雰囲気が変わったような気がした。


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