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74話 街を見回る


 朝が来た。


 今日はダンジョン攻略は休みとしている。最後の迷宮主を倒す前の一休憩だ。


 俺は思う。出来れば迷宮主のイレギュラーが起こって欲しいものだな。

 ギルドの情報では、B級ダンジョンの迷宮主(ボスモンスター)は、レベル130のスチール(鋼の)ゴーレムとのことだった。普通に行けば簡単に倒せる相手だ。これではつまらない。

 今後「高位魔族」などとの戦いを見据えて、ぜひイレギュラー迷宮主で最後のレベルアップをしたいと思う。


 さて、昨日新たに入手した魔石を確認するか。


~~~鑑定(ソケット効果)~~~

・リッチの魔石(魔力+10)

・ホワイトスパイダーの魔石(体力+5、筋力+5、敏捷+5)

・ハイオーガの魔石(体力+6、筋力+8) 

・守護者の魔石(全能力値+3、光耐性:微)

~~~~~~~~~~~~~~~~ 


 前回の高レベル魔石の効果と比べてみる 


~~~鑑定(ソケット効果)~~~

・オーガの魔石(体力+5、筋力+7)

・エメラルドスライムの魔石(魔力+8、4属性魔法Lv3)

・ダークサキュバスの魔石(精神+12、魅了Lv1) 

・ダークシルフの魔石(魔力+5、敏捷+5、精神+5)

・火炎孔雀の魔石(魔力+8、炎効果+2%)

・フェンリルの魔石(全能力値+3)

~~~~~~~~~~~~~~~~ 


 なるほど、さほど差はないが、微妙に効果が上がってる感じだな。

 現在、全般的に能力の上がる「フェンリルの魔石」を主に装備ソケットに入れているが、光耐性が少し付く「守護者の魔石」に変えてもいいだろう。 


 今度は軽くステータスを見てみる。


――――――――――――

トール 18歳

Lv 120

体力:120+168

魔力:120+178

筋力:120+163

敏捷:120+151

精神:120+168

幸運:120+123

――――――――――――


 装備の変更は、片手のユニーク短剣を聖剣アウローラに変更し、ソケットが1つ増えたくらいだ。

 こうして見ると実質レベルは300弱くらいか。かなり強くなったと思う。 


 俺は迷宮主のイレギュラーを期待しながら、今日一日をどう過ごすか考える。

  

 そういえば、先日ジーナさんところの魔法具屋で依頼したエミリー用の杖があったな。あれから10日程経ったので出来上がっているかもしれないな。

 メアリさんに世界樹の枝を素材として錬金術で製作をお願いした魔法使い用の杖だ。ちゃんと無事に作れたのだろうか。少し期待と不安でドキドキする。



 朝食後、俺は転移を使用して、ジーナさんところの魔法具屋に行った。


「ジーナさん。おはようございますー」


「おや、トールさん。ちょうどいい時に来たねぇ。例の杖、出来上がっていますよ」


 ちょうどメアリさんがカウンター奥から出て来た。手に杖を大事そうに抱えて持っている。

 

「トールさん、出来ましたよ! 多分ですが、上手くいったと思いますよ!」


「おお! そうですか! メアリさんありがとうございます」 


 メアリさんは杖を手渡してきた。


 その杖は見るからに神々しく不思議な力が込められている感じがする。世界樹の枝と満月花の花びらなどの希少な素材で錬金したものなのだ。

 俺は早速鑑定してみる。


~~~鑑定~~~


メアリの魔結界の杖(ユニーク武器:杖)

・世界樹の枝で錬金された杖

・攻撃力(AR)10

・装備時、魔力+70

・結界系の魔法Lv+2

・魔力回復(中)


~~~~~~~~ 


「おおおお!! 素晴らしい!」


 これは想像以上に凄い出来だ。俺は杖の製作を依頼した時に、メアリさんに魔力上昇と出来れば結界系の魔法レベルが上がる杖を求めた。

 その期待にメアリさんは十分――いやそれ以上の成果を出してくれたのだ。

 魔力が70も、そして結界系の魔法レベルが2つも上がるのだ。メアリさんの錬金は素晴らしい!


「メアリさん、素晴らしい出来です! メアリさんの錬金の才能に惚れました……俺のパートナーになってくれませんか!!」


 俺はメアリさんの手を両手でがっしりと握り、そう言った。


「えっ! わ、私と、け、け、結婚ですかっ! ……トールさん、ま、まだ私たち知り合って間もないし、そんなっ……で、でも……」


 メアリさんは顔を赤くして、俯きながら言う。


 ……ん? この反応は……? 


 何か既視感を感じる。


 俺は先ほど自分が言った言葉をもう一度頭の中で反芻する。――あ、またやってしまった。俺、パートナーって言ったかー。


 メアリさんの想像している意味じゃなくて、冒険者と生産者の間のビジネス的なパートナーというつもりだったのだ。俺が希少な錬金素材を取って来て、それをメアリさんに錬金してもらうという、信頼できる生産者として、今後懇意にしていきたいという意味合いだ。


 そういえば、シャンテとのときもそんなやり取りがあったな。まだ俺は過去の過ちから学んでいないな……。


「メアリさん。すいません。誤解を招く言い方をしてしまいました」


 こうして俺は、一から説明する。



「そ、そうだったのですね。トールさん、びっくりしちゃいましたよ~。ま、まあ、別にそれはそれでも……」


「ひっひっ、トールさんや。メアリを(めと)ってもらっても全くかまわないよ。これで希少な素材がウハウハ――いや、なんでもないよ……。まあ、ともかく大歓迎だよ、ひゃっひゃっひゃっ」


 ジーナさんは怪しげに笑い、メアリさんはまだ顔が赤くなって俯いている。

 

 ふむ。メアリさんは美人で人柄も良さそうだし、この話、悪くはないかもなっ! ぐふふ。


 ん~でもなー、俺にはエメルダさんとか気になる人もいるしなー。彼女は優しいし胸の谷間もいいし。

 それにシャンテとかも、楽しくて気立てがいいので気になるしなー。あと、エミリーも賢くて奇麗だし。ミーアやイナリも可愛いくて、耳や尻尾とかもふもふしたいし。

 そうそう、アリシアさんの騎士然とした凛々しい感じと美形も捨てがたいな。彼女に「くっころ」とか言わせたら悶えてしまいそうだな!

 

 おっと、また変な妄想をしてしまったな。浮気と妄想はここまでにしよう。俺はキリリと緩んだ顔を引き締める。



「それでは、メアリさん、素晴らしい杖をありがとうございました!」


 俺は錬金の作製金額として、相場が良く分からなかったので、とりあえず200万ギルを提示したら、二人ともびっくりしていた。


「おお! トールさんや、実に太っ腹だねぇ。……やっぱりメアリを娶ってくれると有難いんだけどねぇ」

「トールさん、こんなにたくさんのお金……ほ、本当にいいのですか?」


「もちろんですよ。こんな素晴らしい杖を作っていただいたのですから。これでも少ないくらいかもしれませんねー」


 まあ、俺の女神のドロップの力があれば、金策には困らないしな。



 俺は、驚嘆の表情を浮かべている二人に再度お礼を述べて、魔法具屋を後にした。


 

 その後、俺は街の中をモフと一緒に転移しながら見回ってみる。モフの空間魔法レベルを上げるため、転移はなるべくモフにお願いしてる。


 避難民のいる場所に行くと、いつものように商業ギルドの馬車がたくさん止まっており、食料や生活物資などを、避難民に配っているのが見える。炊き出しの煙も上がっている。避難所の仮設住宅の建設もだいぶ進み、避難民たちの生活も安定してきたようだ。


 ああそうだ。そういえば、先日新たに入手した「パンの製造魔具」とかがあったな。これも一応渡しておくか。

 俺は商業ギルドの人たちがいるところに歩いて行く。


「あ、トールさんじゃないですか!」

「トールさーん、こんにちは!」


 声をかけられたので振り返って見ると、パン屋のポゴダさんと彼の妻のダリアさんだった。


「あっ、ポゴタさんにダリアさん、久しぶりです。ポゴタさん、その後どうですか?」


 俺はついダリアさんの前で、ポゴタさんに変なことを聞いてしまった。


「あー、もちろん。順調ですよ! これもトールさんのおかげです!」

「もう、あなたったら、何を言ってるのよ……トールさんの前で。おほほほ……」


 うん。仲良くやってそうで何よりだな。


「あ、そうそう。ミートサンドがまだあるので、トールさん、これ持って行ってくださいね」


 ダリアさんからミートサンドをたくさんいただく。どうやら避難所で皆に配っていた残り物らしい。


「ありがとうございます、ダリアさん。やっぱりダリアさんたちの作るミートサンドは最高ですよ! うちの妹もそう言ってますよ」


「そう!? それは嬉しいわ! また今度差し入れするわね!」


 俺は「パンの製造魔具」とムーギーの魔石を、ポゴタさん夫婦に渡しておくことにした。使い方等を教えたら、二人ともびっくりしていた。


 これでいざという時にパンの大量生産ができるだろう。まあ、でもやっぱり夫妻の手作りパンにはかなわないけどね。


 こうしてポゴタさん夫妻と別れた俺は、商業ギルドの人に、残りの「パンの製造魔具」等を渡し、ついでに「クランハウス」を幾つか追加で建てた。

 

 よし、避難所の方はこんな感じでいいだろう。



 今度はギルドへ飛ぶ。ガイたちの陣中見舞いに行こうと思う。

 エメルダさんにガイたちの今のダンジョンの担当階層を聞くと、どうやらすでに14階層まで進んでいるらしい。丸太や魔力木材のところだな。だいぶ彼らも強くなったと思う。

 よし、せっかくなので、彼らに下層階まで行ってもらうとするか。街を守るためでもあるが、魔物の一斉攻撃まで日数はあまりない。俺の信頼のおける同期たちのパーティーだ。生き残るためにもレベル上げを一気に進めておいたほうがいいと思う。


 14階層に転移すると、ガイたちが狩りをしているのを見つける。


「よお! ガイ! これから皆でパワーレベリングをしないか?」


「ぬおっ! と、トール!? お前一体どこから湧いて来たんだ!?」

「と、トール! びっくりしたわ!」

「トールさんっ! あわわわ……」


 驚いている彼らを尻目に、俺は説明をし、5人のパーティを組む。


 ガイたち3人に新たに加わった女性は、フローラさんという回復術師とのことだ。優しそうで直感的に信頼がおける人物だと思った。

 そして、ユニークアイテムの予備を取り出し、それぞれ4人に適したものを幾つかプレゼントして、装備してもらう。その中には有効なアクセサリーなども含まれている。メイとフローラさんには、リッチのドロップアイテムであるユニーク杖などを贈った。


「よし! みんな、いくぞ!」


 こうして俺たち5人とモフのパーティーは圧倒的力を持って、一気にB級ダンジョンの下層階へと突撃していくのだった。


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