70話 女神のドロップスキル レベル8
朝が来た。
昨日は、レベルがついに80になり、女神のドロップスキルのレベル8が解放された。
その後、すぐにでもスキル上げをして確認したかったのだが、リンがスキル振りについていろいろと相談してきたため、結局確認出来ずじまいだった。
リンもあれから、キングキャット戦や昨日の17階層までの高レベルの魔物狩りで、かなりレベルアップした。俺のレベルにだんだん近づき、今は70に達している。
キングキャット戦でのボーナスSPを含めると、かなりのSPが溜まっており、何に振ればいいか、決めかねていたのだった。また、新たに習得可能スキルが増えたようで、嬉しい悩みだったようだ。
とりあえず、剣術と土魔法をレベル3まで上げて、様子見とすることを提案した。
まだ封印が解かれてない見えないスキルがあるためでもある。なんだか希少なスキルのような気がするので、SPは温存しておいた方がいいと思ったのだった。
土魔法を勧めた理由は、リンが家庭菜園スキルを持っており、土いじりをするのに都合がいいと思ったからだ。また、炎系のスキルはイナリが得意とし、水魔法は俺がすでにレベルを3まで上げている。そして、風魔法はやはりエミリーとミレアが得意としている。4属性魔法においてはお互いがなるべく被らないようにしたほうが、いいと思ったからでもある。
ユニークアクセサリーの「土の腕輪」に土魔法Lv3が付与されているが、いずれ土魔法のレベルを上げるためには自前で習得する必要がある。
昨日入手したスマラカタル(ユニーク指輪)を装備しているため、リンの土魔法のレベルは4となっている。この「4属性魔法Lv+1」の効果はあくまでも自前のスキルにプラスされるのである。
ちなみに、俺の水魔法もその指輪のおかげでレベル4となり、新しい派生スキル、ウォーターサイクロンを使えるようになっている。
それはともかく、さて、いよいよ女神のドロップスキルを8に上げよう。
俺はドキドキしながら、女神のドロップのレベルの部分を触る。
≪SPを使用してスキルレベルを上げますか?≫
「はい」
≪Lv8に上げるにはSPが30必要です≫
お、かなりSPを必要とするな。俺の今のSP残量は38だ。
使用すると残りSPがかなり少なくなるが、ここは思い切って振るべきだろう。
「はい」
そして表示が変化した。
…………………………
女神のドロップLv8
効果:魔物を倒したときのアイテムドロップ率および質が向上する。
通 常 ドロップ 160%
レ ア ドロップ 45%
ユニークドロップ 15%
追加効果:――(省略)
追加スキル:祝福のドロップ
追加ドロップアイテム
『女神のユニークアイテム』
・既存のユニークアイテムの上位版
・装備品には、空間ソケットが付いている
・ソケットに魔石を入れることにより追加効果が得られる(魔石の種類により効果が違ってくる。取り外し付け替え可能)
・装備出来ないものに関しては、質が向上する(素材で作られた装備品にはソケットが付く)
・上記装備品は、全て「女神のドロップ」スキル所持者のみ装備できる
・ドロップ確率は1%(ただし、初回のみ15%。迷宮主、固有種に対しては100%)
…………………………
「――なっ! これは……!?」
俺は新しく追加された『女神のユニークアイテム』という言葉に驚いた。
そして、昂る気持ちのまま、ゆっくりとその説明を読んで、理解する。
「おおお!! これはすごい!!」
俺は興奮する。
この『女神のユニークアイテム』は今まで得たユニークアイテムの上位版らしい。そして装備品に関しては、空間ソケット(穴)なるものが付いていて、魔石を入れることによって更に付加効果を与えることができるらしい。
そしてどうやらこれは「女神のドロップ」スキルを持つ俺だけが装備できるとのことだ。
おお、俺だけの特権か! なんだかちょっと嬉しくなる。
最近ユニークアイテムを提供することで、皆が強くなりすぎて、頼もしく思える反面、なんだか自分が生産者職みたいになった気分がしていたのだ。
俺の目標の一つは、俺自身が最強の冒険者になることである。
この女神のドロップLv8の効果は、俺自身、最強の冒険者になる可能性を秘めている気がする。
装備頼みではあるが、これで更に格上の魔物を倒しやすくなるな。レベル上げが加速度的に進んでいきそうだ。
俺は早くダンジョンに行って、この女神のユニークアイテムを入手したくてたまらなくなった。
「お兄ちゃーん、朝食できたよー。早くギルドに行かないと。冒険者たちが待ってるよー」
リンの声が聞こえて来た。
◇
ギルドでの朝のお勤めが終わり次第、皆でダンジョンに転移する。
昨日、攻略途中だった17階層から開始する。敵はダークサキュバスだ。
ユニークアイテムであるアニムスイナレスを全員分集めるため、引き続きダークサキュバス狩りを開始する。
開始して2度目のユニークアイテムを落とした瞬間だった――。天から声が聞こえて来る。
≪女神のアニムスイナレスを落としました≫
「おおお!! やった!」
俺はつい興奮して叫んでしまった。
これが女神のユニークアイテム――ユニークアイテムの上位版か。見た目は普通のアニムスイナレスと変わらないが、神々しい輝きを放っている気がする。
既存のユニークアイテム名の頭に "女神の" という修辞詞が付くようだ。
「にゃ? トール、どうしたのかにゃ?」
「ああ、このアイテムは俺しか装備出来ない物なので、俺が貰うことにするな」
俺は皆に、ユニークアイテムの中でも、俺にしか装備出来ない特殊な物もドロップすることを簡単に伝える。
「へえー、良く分からないけれど、そういうアイテムもあるのね……」
俺はミーアに、「女神のアニムスイナレス」を付けられるかどうか、試してもらうことにした。
「にゃにゃ!? 耳に付けられないにゃ! 不思議な魔力が邪魔をするにゃ!」
今度は俺がそのイヤリングを付けてみると、普通に付けられた。
やはり、女神のドロップスキルを持つ俺にしか装備出来ないようだ。
「不思議だにゃ~」
俺はこのアイテムを鑑定してみる。
~~~鑑定~~~
女神のアニムスイナレス(ユニークアクセサリー:耳)
・装備時、精神+25
・付与スキル:魅了Lv1
・魅力が上がる
・空間ソケット《1》
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おお! 確かに空間ソケットが付いてる。《1》とあるのは魔石を一つ入れることが出来るという意味だろうか。
他の性能は普通のアニムスイナレスと変わらないみたいだな。
何か魔石を入れて試してみたい欲求にかられるが、とりあえず後にしよう。皆のユニークアイテム集めとレベリングが先だ。
引き続き皆で、ダークサキュバス狩りを再開し、アニムスイナレスを全員分、入手するのであった。
次は18階層だ。
ここでも人型の魔物が現れた。美しい女性の姿に蝶のような羽が生えている。
―――鑑定―――
ダークシルフ Lv85
・風と闇の妖精
・風魔法、闇魔法で攻撃してくる
・敏捷と精神が高め
・弱点:物理攻撃
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敵のレベルが更に上がって来る。
なかなか素早く風と闇の魔法が少々厄介だったが、いつも通り皆で一斉攻撃をして、狩りまくる。
ユニークアイテムを入手した時点で、ドロップアイテムをまとめて鑑定する。
~~~鑑定~~~
風の羽(素材)
・風の力が込められた羽
・錬金素材として用いられる
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風の足輪(レアアクセサリー:足輪)
・装備時、敏捷+8
‥‥‥‥‥‥‥‥
闇風のフード(ユニーク防具:頭)
・防御力(DR)7
・装備時、魔力+10、敏捷+10、精神+10
・付与スキル:感知Lv4
・闇、風の魔法に対する耐性(中)
・魔法全般に対する耐性(小)
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「おおお! これはまた素晴らしいユニークアイテムだな!」
頭のユニーク防具は初めてだな。能力値の上昇も素晴らしい。感知スキルも付いているので、今まで装備していた
「もふ猫のフード」(レアアイテム)のほぼ上位互換といったところか。幸運+5は無くなるが、これはぜひ皆全員で更新すべきだろう。
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もふ猫のフード(レア防具:頭)
・防御力(DR)3
・装備時、幸運+5
・付与スキル 感知Lv3
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また、レアアクセサリーの「風の足輪」も何気に敏捷が上がるのでいい感じだ。足輪のアクセサリーは初めて見るな。これも皆に装備してもらうことにしよう。
再び、皆で引き続きダークシフル狩りをし、「闇風のフード」を全員分入手した。
その過程で「女神の闇風のフード」もいち早く入手出来たのだった。
鑑定してみる。
~~~鑑定~~~
女神の闇風のフード(ユニーク防具:頭)
・防御力(DR)7
・装備時、魔力+10、敏捷+10、精神+10
・付与スキル:感知Lv4
・闇、風の魔法に対する耐性(中)
・魔法全般に対する耐性(小)
・空間ソケット《2》
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おおお!! 今度はソケットが2つ付いてる! 素晴らしい!
なんとなくだが、アクセサリーは1つで、武器や防具は2つくらいついてそうな気がする。まあこれは今後入手していくにつれ判ってくることだろう。
俺は先々のことを考えながら、自然と心が浮き浮きしてくるのだった。