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64話 祝福のドロップと拠点作り


 一夜明けて、俺は朝早くに冒険者ギルドに向かった。


 昨日の会議の後すぐに、エミリー、ミーア、イナリと一緒にB級ダンジョン14階層に潜りウッドゴーレムを狩りまくった。クランハウスを5つ入手して、すでに避難所に設置してきてある。当面はこれで(しの)いでもらうことにする。



 冒険者ギルドに着くと、ギルドの建物内は冒険者で溢れかえっていた。

 ギルドマスターのギードさんが、冒険者たちに声を掛けてくれていたようだ。


 俺がギルド内に入ると、皆が一斉に俺の方を振り向く。


「おお! 来たな、トール! 話は聞いたぞ!」

「ドロップアイテムを上げる魔法をかけてくれるそうじゃねえか!」

「山ほど物資を持って来てやるぞ! 腕が鳴るぜ!」

「私たちも協力するわ! 頼んだわよ! トール!」


 冒険者たちから次々に声が上がる。


 冒険者たちの中にガイたちのパーティーも見える。朝が苦手なガイとアスカだがちゃんと起きられたようだ。いつもは3人パーティーだが、今回はもう一人白いローブの女性が加わっていた。



「あっ! と、トールさん! お、お疲れ様です! パーティー編成と各パーティーの狩場が概ね決まりました。順番に、その……ドロップを増やす魔法? を掛けていただけると助かります」


 エメルダさんが息切れをしながら言う。モカさんも額に汗を流しながら、いろいろと手配をしてくれている。


「エメルダさん、モカさん、お疲れ様です。では、早速順番に『祝福のドロップ』を掛けていきますね」


 俺は、4人パーティーを組んだ冒険者ごとに、順次、祝福のドロップスキルをかけていく。

 スキルをかけたパーティーに祝福の光が降りそそぐ。

 これでドロップ率向上の効果が現れるはずだ。


「スキル効果は12時間ほど続くので時間は十分ありますよー」


 こうして、祝福のドロップを受けたパーティーは、次々と自分たちの割り当てられた狩場を目指してダンジョンに向かっていった。


「じゃ、トール! 行ってくるぜ! 俺たちの担当はB級の6階層だ。ドロップ魔法、ありがとな!」


 最後になったパーティーのガイが、俺に声を掛けて仲間と一緒にダンジョンに向かう。


 そうか、ガイたちはもう6階層も余裕ってところか。

 魔力量がだいぶ減ったので、マナポーションを飲みながら一息つく。


 6階層と言えば、「リンゴール」のところか。物資は、林檎と弓の素材になるリンゴールの枝だ。林檎もそうだが、特に弓の素材は重要だな。


 俺は何気に計算してみる。


 林檎は、巨大な林檎が10個くらいの(ふさ)となって鈴なりの状態で落ちる。リンゴールの枝も割と大きい枝だったので、1つの枝で弓が2本分くらいは作れそうな気がする。1日頑張って100体倒せば林檎の(ふさ)が150房と弓の素材40個か。巨大林檎1500個と弓が80本になる。悪くない数字だな。

 弓は10日で800本出来ることになる。弓の弦の素材も同様にB級4階層の「トゲナスビー」から取れるので、最終的に千本(張り)くらいの完成した弓が作れそうだ。なかなかの数だ。

 まあ、鍛冶ギルドの人たちには頑張って作ってもらわないといけないが……。

 

 矢の方も1日100体、B級の10階層に出現する「風の弓士」を狩れば、「強矢」30×150で4500本、「風の矢」は20×40で800本を、理論上得られるな。

 10日もあればそれぞれ45000本と8000本になる。最終的には6万本と1万本くらいいきそうだ。凄まじい数だな。

 千人の弓隊を組織して外壁の上から強力な矢を放つ。いいかもしれない。


 まあ、こういう細かい計算は男爵家や商業ギルドの偉い人たちにやってもらえばいいか。


 それはそうと、籠城戦をするのに、全体的に指揮を取る人が必要だと思うのだが、誰がやるんだろう。男爵家の騎士たちにそういう軍師的な役割の人っているのだろうか。リドルフ騎士団長は、なんとなく脳筋なタイプのように思える。副騎士団長のアリシアさんも同様の印象だな。


 おっと、ついいろいろと考え込んでしまったな。



「トールさん、ありがとうございました!」

「トールさん、お疲れさまでしたっ!」


 エメルダさんとモカさんから声がかかる。


「いえいえ、エメルダさんとモカさんもお疲れさまでした。……あ、そうそう、明日からはもっと冒険者が増えて物資も沢山運ばれてくると思いますよ」


 二人の顔が、青ざめてきた。


 しまった、余計なことを言ってしまったか……。まあでもどのみち明日以降、身に染みて分かってくることだろうし。

 エメルダさんたち、いろいろと気苦労が多そうだな。できる女性ほど、仕事も振られて消耗してくるものなのかもしれない。俺は前世でブラック企業で働いていたときのことを思い出す。


 よし、あれをプレゼントしよう。

 エルフの里に行く前に、予備の為にいくつか集めていたユニークアイテムだ。シンプルながら使い勝手のよいアクセサリーだ。

 以前二人と雑談してるときに聞いたが、エメルダさんとモカさんはステータスを持っているとのことなので、有効だろう。


――――――――――――


銀熊(シルバーベア)の腕輪(ユニークアクセサリー:腕)

・装備時、体力+15 力+10 


――――――――――――


 俺はこのユニーク腕輪を2つ取り出す。


「エメルダさん、モカさん、この腕輪をプレゼントします。体力と力が上がるのできっと役立つと思いますよ」


「いいんですか!? トールさん、ありがとうございます! 嬉しいです……」

「わあっ! ありがとうございますっ! トールさん!」


 二人は腕輪を左手首に嵌める。


「わっ! こ、これはっ! 凄い力が溢れて来ます! 疲れも吹き飛ぶような感覚です!」

「わわっ! すごいですっ! 体に力が湧いてきますっ!」


「ちなみに俺も付けてますよ。なかなか重宝してますね」


「トールさん! これで明日からバリバリ働けそうです! 本当にありがとうございます!」


 エメルダさんたちは顔を上気させて喜ぶ。 

 

「それから、ギルドの表の広場にクランハウスを建てますね」


「クランハウス……ですか?」


「はい、ギルドの建物だけだと手狭になるかもしれませんので。……そうですね、見てもらった方が早いと思います」


 俺は二人と一緒に、扉を開けて外に出る。


 ギルドの建物の前は、噴水のある広場になっている。わりと広い場所だ。


 俺は、ギルドの建物の近くの空いている場所に行き周囲を確かめる。このあたりで大丈夫だろう。


 手元に残っているクランハウスの箱を使用する。箱はゆっくりと宙に浮き、光始める。

 そしてみるみるうちに、大きな邸宅が目の前に出現した。


「ええっ!? 大きな家が一瞬で!?」

「わわっ!? す、すごい! びっくりですっ!」


 行き交う人々も、突然湧いて出て来た豪邸にびっくりしている。


「それでは、中に入ってみましょう」


 三人でクランハウスの中に入る。



「と、トールさん! これは凄いですよ!」

「わぁ……部屋も奇麗。それにベッドも寝心地が良さそうですねっ!」


 更に食堂や大浴場などを案内したら、二人とも喜びの声を上げていた。


 三人でしばらく、家の中を見て回る。


 クランハウスの玄関口、最初のシャンデリアがある大広間に戻ると、片隅に大きめの扉があるのに気付いた。


 そういえば、ここはまだ開けたことがなかったな。なんの部屋だろうか。


 俺はその扉を開けて中を見てみると、まずまずの広さの部屋があった。部屋の中央に腰位の高さの大きな金属製の箱が置いてあった。なんの箱だろう?


 近づいて見ると、箱の上部が開いており何かを入れることが出来るようだ。そして、箱のすぐ隣りにステータス画面のような板が、見やすい位置に立っている。そのステータス画面の部分に触れると、「現在の在庫状況」という文字が見え「空っぽ」との表示が出ていた。


 いろいろと確認してみると、どうやら設置式のアイテムボックスらしい。


 ほほーう。これは便利だ。これから集まって来る物資を保管し管理するのにうってつけの装置だ。


 もともと「クランハウス」は、複数の冒険者パーティーの集団が拠点として使う家なので、取得したアイテムを保管し管理する機能がついているのも頷ける。


 俺はエメルダさんとモカさんにこの設置式のアイテムボックスについて説明すると、二人とも再び喜びの表情に変わる。


「これは便利ですね! 集まって来る物資をここに入れれば、管理も楽になりますね!」

「素晴らしいですね! 本当に便利ですっ!」 


 物資が集まる拠点としてもかなり役立つことが判って、一安心だ。これで二人の負担もかなり減ることだろう。


「まあ、しばらく忙しくなりそうですし、エメルダさんとモカさんも、ここの個室で休んだり、大浴場でくつろいだりして、息抜きしながら頑張ってくださいね」



 こうして、重要な拠点である冒険者ギルドの施設が充実するのだった。


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