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6話 再び2階層へ

 朝が来た。


 昨日は興奮で寝付けなかった。


 手元にある「水の宝玉」を見つめる。


「これを使えば、ホーンラビットを倒せるのではないか」


 前回は奇跡的に偶然倒せただけで、どう考えても短剣だけではまず倒せないだろう。


 俺は考えた。


 魔法はまだあと9回使える。

 2階層に入って入り口付近でホーンラビットが現れるのを待ち、距離を取って魔法で戦う。

 万が一魔法が効かないようならすぐに1階層に逃げ込めばいい。


 リンからは止められているけど、俺は冒険者だ。ここで冒険しなければいつまでも最弱のままだ。


 それに俺には小さいころからの夢があった。

 強い冒険者になって、前人未到と言われるダンジョンや秘境を制覇する。そしてまだ見ぬ広い世界を冒険し、いろいろな素晴らしいものを見たり体験したりしたかった。


 そのワクワク感が再び蘇ってきた。


「よし! 行ってみるか」


 俺は早速、朝早くからダンジョンに向かった。




 ダンジョンの2階層への入り口に来た。


 そのまま2階層へと入り、出入口を背にしばらく様子を見た。

魔物の現れる気配はまだしない。慎重を期して深入りしないようにしなければいけない。



 しばらくすると、視界の遠くの方で何かが動いた気がした。


「来たか!」


 1匹のホーンラビットが俺に気づいたのか、角を小きざみに振りながら近づいてきた。


 よし、もう少し近づいたらやるか


 左手に宝玉を握りしめ、手を前にかざして待ち構える。

 念のため右手にはいつもの短剣を握りしめている。


 ホーンラビットが急に俺を目がけて突進を始めた。


 ほどよい間合いに入った。


「ウォーターボール!」


 俺は気合を入れてホーンラビットへ向けて魔法を放つ。


 バシューーーン!!


 命中したが、消える気配はないので、倒せなかったようだ。


 しかし魔法によるショックで、完全にホーンラビットの突進は止まっていた。


「グルルルル…………」


 よく見ると明らかに弱っており、瀕死の状態のようだ。


 このまま追撃の魔法を放てばおそらく葬ることができるだろう。


 しかし、俺は短剣を右手に瀕死のホーンラビットに向かっていった。


 ザシュ!


 ホーンラビットの首に短剣を突きさす。


 瞬間、ホーンラビットは霧のように消えて行った。


 コロン。ポトッ。


 そして、うさぎ肉を落とした。


「やったあああああ!!」


 水魔法のおかげで割と簡単に倒すことができた。


 俺はガッツポーズをして、ついはしゃぎ過ぎて喜びの踊りを踊っていたのだった。



 やはりこの「水の宝玉」はすごい!

 一撃ではぎりぎり倒れなかったようだが、こうして安全に倒せたのもこの魔法のおかげだ。

 こうなったら、この方法でもっとホーンラビットを狩り続けてレベルアップしていこう。




 こうして俺はこの日、合計7体のホーンラビットを倒し、レベルが4から6に上がり気分良くダンジョンを後にした。


 手元の水の宝玉を見ると、以前10個ほどあった蒼い斑点が2つになっていた。

 この斑点は魔法の残り使用回数を表すのだろうか?


 一応、鑑定で確認すると…

 『水の宝玉(2/10)』

 となっていた。



――本日の収穫――――

ホーンラビットの魔石 7個

うさぎ肉 5個

極上のうさぎ肉 1個

―――――――――――



 ――冒険者ギルドにて


 カラ~ン

 

ギルドの扉をくぐり、売却用の受付に来た。


 早速、エメルダさんから声がかかる。


「あ、トールさん、こんにちは~」


「こんにちは、エメルダさん」



 さすがに今日の買取は誤魔化せないだろう。


 エメルダさんは、俺が万年レベルの上がらない最弱冒険者だと知っている。

 納品はいつもスライムの物ばかりだし。


 魔石もそうだが、いきなりこれだけのうさぎ肉を納品したらびっくりするに違いない。


 俺はエメルダさんにだけ、スキルのことを話すことに決めた。


 ただし、ユニークアイテムドロップ、については、とりあえず隠すことにした。このスキルの全貌が周りに知れ渡ったらいろいろと面倒なことになる気がしたからだ。


 エメルダさんを信用していないわけではないが、秘密はどこからもれるかわからない。



「エメルダさん、ちょっとちょっと」


 俺は手招きして内緒話をしたそうな素振りをみせる。


 なんとなく事情を察してくれたエメルダさん。


「あ、トールさん、買取りの件ですね、今日は別室で対応しますのでこちらへ来てください~」


 周りにいる他の冒険者に不審を持たれないよう普段通り振る舞い、個室を案内される。


 さすがエメルダさん、出来る女性だ。気配りもすばらしい。


 ギルドの個室に通され、お互いテーブルをはさんでソファに座る。


「さて、どうされたのですか、トールさん」


 ちょっと期待のこもったキラキラした目で俺を見てくるエメルダさん。


「はい、実はいつも通り買取のお願いに来たのですが、今回はちょっといつもと素材が違うのです。それで、エメルダさんに疑問を持たれる前に、あらかじめ説明しておこうと思って……」


「なるほど。そうだったのですね~。 ……それで、素材とは?」


「これです」


 俺はホーンラビットの魔石7個と5個のうさぎ肉、1個の極上のうさぎ肉をテーブルの上に取り出した。


「こ、これは!」


 びっくりするエメルダさん。


「し、失礼ながら申し上げますが、たしかトールさんは未スキルでレベル3でしたよね」


「はい。つい最近まではそうでした。実は先日、偶然レベルが上がりスキルを得まして、2階層で狩りをすることが出来るようになりました」


「えっ! そ、そうだったのですか! それはおめでとうございます! 良かったですねトールさん」


 純粋に喜んでくれるエメルダさん。


 ふぅ~ひとまずは安心。


「はい、それでスキルなんですが、どうもドロップ率を上げるスキルみたいで、レベルが上がったおかげもあり、なんとか2階層のホーンラビットを倒せるようになりました。まあ、苦戦はしましたが。ははは……」


俺は事実を少し隠し、話をする。嘘は言ってないよな?……


「なるほど、そういうことだったのですね~。 昨日の納品量の多さも納得いきました」


「はい」


「でも、かなり大変だったんじゃないですか。戦闘用のスキルではないようですし、レベルが上がったとは言え強敵です。すごいですね。――きっと、トールさんはレベル以上に技術的な努力もされてきたのでしょう。でも、あまり無理はしないでくださいね」


「はい、心配していただきありがとうございます」


 ふぅ~なんとか誤魔化せたようだ。

 エメルダさん、性格が良いからいろいろと好意的な目で人を見てくれるな。

 ちょっと誤魔化した説明になってしまい少し罪悪感を持ってしまったが。……エメルダさん、悪い人に騙されなければいいけどな……。



 そして、本日の買取金額はなんと約4万ギルとなった。俺は今日もほくほく顔でギルドを後にした。

 

 一応帰りに武具店に寄り、新しい皮の鎧を購入した。破れたままだとまずいしね。


 もちろん、今日もリンへのお土産に、少し高級な食材を買って帰った。

(やはり俺はシスコンなのか……)


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