55話 初めてのレベリング
ミレアとリンの洗礼の儀式が終わった。
二人とも無事ステータスを得て、しかも沢山の初期スキルが与えられた。結果は大変喜ばしいものだった。
その後、賑やかに皆で昼食を取った後、いよいよミレアとリンのレベル上げをすることとなった。
エミリーを先頭に、皆で連れだって魔物の棲む森に向かう。
エミリーによると、魔物の棲む森は、それほどレベルの高い魔物はいなく、ミレアやリン以外のメンバーのレベルでは余裕だそうだ。
ミレアお付きのメイドのメイラさんも、実は戦闘もこなすバトルメイドとのことで問題ないらしい。
メイラさん、バトルメイドだったのか……知らなかった。なんだか興味が湧いて来た。一度メイラさんとそのあたりのことを話してみたいものだ……。
レベル上げに関しては、まずレベル10を目標にする。
というのは、レベルが10にならなければ、パーティーを組めないシステムになっているからだ。レベル10までは自力で魔物を倒してもらうことになる。もちろん他の6人はサポートに入る予定だ。
事前に、ミレアとリンには、安全のため、ユニークアイテムをいくつか装備させている。
エミリーにプレゼントしたユニーク弓は、エミリーの方から一時ミレアに貸し与えている。俺も予備のユニークアイテムや自分の装備している物から、いくつか2人に装備させた。アリシアさんやモフからも協力してもらっている。
――結果。こんな感じになった。
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ミレア 10歳
Lv 1
体力:1+40
魔力:1+45
筋力:1+40
敏捷:1+30
精神:1
幸運:1+5
スキル:弓術Lv2、杖術Lv1、魔力強化Lv1、風魔法Lv2、水魔法Lv1、火魔法Lv1、土魔法Lv3、光魔法Lv1、回復魔法Lv1、結界魔法Lv1、夜目Lv3、感知Lv3
【装備品】
武器(両手):ウェントスウィース
防具(頭) :もふ猫のフード
防具(体) :アルマテトラ
アク(頭) :風のリボン
アク(首) :キャッツアイ
アク(腕) :銀熊の腕輪
アク(腕) :土の腕輪
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リン 15歳
Lv 1
体力:1+50
魔力:1+30
筋力:1+50
敏捷:1+30
精神:1+15
幸運:1+5
スキル:剣術Lv1、体術Lv1、火魔法Lv1、風魔法Lv2、水魔法Lv1、土魔法Lv3、夜目Lv3、感知Lv3
【装備品】
武器(右手):フレイムソード
武器(左手):パラライズファング
防具(頭) :もふ猫のフード
防具(体) :アルマテトラ
アク(頭) :風のリボン
アク(首) :キャッツアイ
アク(腕) :銀熊の腕輪
アク(腕) :土の腕輪
――――――――――――
……レベル1の段階でこれである。
装備ブーストにより、すでに40レベルに匹敵するほどの能力となっている。普通に化け物である。
これに加え、俺たち6人がサポートしながらレベル上げをするのである。もはや反則である。
「うわあー! 凄い力が! お兄ちゃん凄いよ!」
「わわわっ! すごいよ! トール!」
装備した瞬間、一気に能力が上がって、二人ともびっくりしている。
さて、魔物の棲む森で無双しようではないか。
◇
エミリーの先導により、魔物の棲む森に入った。
辺りは薄暗く、少し不気味な感じがする。感知スキルを発動すると所々に魔物の気配がする。
ミレアとリンはもふ猫のフードをかぶっているので、感知スキルが使えるはずだ。すでに二人も魔物の気配を感じている様子だった。
二人は頷き合って、魔物の気配のする方に向かう。俺たちはミレアとリンの周りを囲み団体で行動する。
早速、魔物が現れた。大きなリスのような魔物だ。モフより少し小さいくらいだろうか。
俺は鑑定してみる。
―――鑑定―――
ビッグスクワール Lv15
・リスの魔物
・筋力と敏捷に優れる
――――――――
レベル15か。C級ダンジョンのの5階層辺りくらいの強さだろうか。最初のレベルアップにはちょうどいいかもしれない。
ミレアが弓を放つ。
ビュウウウウウウウウウ
風の力を纏った矢が凄い速さで、敵に向かって飛んで行き、命中する。
「――ギ!!」
悲鳴を上げる間も無く、ビッグスクワールはあっけなく消えて行った。
「わっ! レベルがたくさん上がったみたい!」
ミレアが驚いて目を丸くしている。
レベル1の状態でレベル15の敵を倒したので一気に上がったはずだ。いい感じだ。
更に感知しながらミレアとリンは敵を探す。
また、ビッグスクワールがいた。
今度はリンが剣を両手に駆けだす。
敵はびっくりしているように見える。
リンは敵に急接近し、右手のフレイムソードで斬りつける。
ビッグスクワールは避けることも出来ず、そのままリンに斬られて消えて行った。
「うわっ! 凄いよ!」
やはり、リンもレベルが一気に上がったようで、変化の感覚にびっくりしているようだ。
こうしてミレアとリンは張り切りながら、敵を見つけては交互に倒していった。
どうやらサポートは必要ないみたいだな。皆も安心しているようだ。そのままミレアとリンについていく。
たまにスライムや犬のような魔物が出てきたが、どれも今のミレアとリンには敵わない。どんどん倒していく二人。
しばらくするとエミリーが言った。
「もうそろそろレベル10になったんじゃないかしら」
ミレアとリンは俺たちにステータスのレベルを見せてきた。
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ミレア Lv11
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リン Lv11
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「よし! 二人ともレベル10を超えたみたいだな。さっそくパーティーを組もう」
パーティーを組めば両方に経験値が入るのでお得だ。4人までなら経験値はほぼ減ることはないので、とりあえず、ミレア、リン、エミリー、俺の4人でパーティーを組んだ。
パーティーの組み方は簡単だ。パーティーリーダーとなる人がそれぞれ相手にステータスを通じて申請する。それを相手が承認すれば、システム上のパーティーとなる。今回のリーダーは俺だ。
これでこの4人の誰が敵を倒しても、全員に経験値が入る。
俺は考える。せっかくなので一気にレベリングを加速していきたいな。もう少し強い魔物と戦いたいものだ。
エミリーに尋ねてみる。
「エミリー、この辺りでもっと強い魔物が出るところはないのか?」
「う~ん、そうね……。この辺りだと『滝裏の洞窟』かしら。そこは1階層だけのダンジョンみたいになってて、迷宮主しかいないわ。迷宮主はレベル50の大蛇よ。ただし、一度倒すと次に復活するまでの期間が長いのよね……。毎回、満月の日に復活するの。えーっと、今は月ってどうなってたのかしら……」
イナリが答える
「今の月は満月から10日ほど経っておるのぅ。もう4~5日すると新月になるのじゃ~」
「う~ん、10日かあ……。その間に誰かが倒してなければ、まだいると思うわ」
「まあ、行ってみれば分かるか。エミリー、案内してくれないか」
「そうね。そう遠くないし、とりあえず行ってみようかしら」
エミリーの先導のもと、滝裏の洞窟がある場所に来た。
そこは、森の中で少し開けた場所になっていて、前方は大きな崖になっていた。
その崖の上から川が流れてきて滝となっていた。滝つぼから水しぶきが上がって、水面には霧がかかっている。その滝つぼの裏に洞窟があるらしい。
エミリーは滝つぼの崖側に周る。
「ここから滝の裏側に行けるわ」
崖の淵に沿って、細い岩の足場が洞窟の入り口の方まで続いている。
俺たちは滝つぼに落ちないよう、ゆっくりと崖に沿って歩いて行く。
「にゃあ~! 水しぶきが凄いにゃ~! 怖いにゃ~」
「ミーア、くっつき過ぎなのじゃ~。危ないのじゃ~」
「み、皆、押すんじゃないぞ、絶対に押すんじゃないぞ!」
前世で観た古いお笑いトリオのようなことを言いながら、恐る恐る渡っている。
なんとか皆無事に滝の裏の洞窟に入ることが出来た。
洞窟の中はかなり薄暗そうだったが、皆、キャッツアイを首に下げている。夜目が効くので、視界は保たれている。
少しばかり洞窟の中を奥へ進むと、先の方に開けた場所が見える。どうやらそこで洞窟は行き止まりらしい。
その開けた場所の中央に、大きな蛇がとぐろを巻いていた。水色の体に淡い黄色の光を放っている。幻想的な感じのする蛇だ。
「わ、わっ、大きな蛇!」
「不思議な蛇だにゃ~」
「これは、水蛇みたいなのじゃ~」
こうして俺たちは、滝裏の洞窟の主に遭遇したのだった。