48話 12階層~14階層
12階層にたどり着いた。近くには転移陣がある。
休憩と食事を済ませた後、早速12階層の魔物を探す。
どうやらまた人型の魔物が現れたようだ。
黒い鎧に黒のフード付きマントを身にまとっている。顔の部分は暗く目だけが赤く光っている。不気味だ。
片手にはそれぞれ黒光りする剣を持っている。二刀流の剣士だ。更に大きな黒い大剣を背に納刀している。
素早く鑑定する。
―――鑑定―――
暗黒の騎士 Lv55
・剣技に優れている
・黒炎を纏って攻防に力が乗る
・全般的に能力が高い
・弱点:光魔法
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「暗黒の騎士、レベル55か。一気に上がって来たな。経験値が美味しそうだ」
剣技と黒炎に注意しないといけないな。
しかし、弱点は光魔法だ。モフに任せて見るか。俺はモフに合図を送る。
「にゃー」
モフが早速ライトスプレッドを放った。扇状に広がる光の光線だ。避けるのは難しいだろう。
「ウオオオオオオオ!!」
モフの攻撃を浴びて敵は苦しそうに叫ぶが、なんとか耐えたようで、モフに攻撃してきた。
剣速が凄い。モフは振られる剣を、持ち前の素早さで華麗に避ける。と同時に敵のもう片方の剣も振られる。
モフは、猫爪で剣を受け止める。
ガキイイイイイイーン! ブワッ!
受け止めた瞬間に剣から黒炎が舞う。モフは一瞬びっくりしたようだったが、素早く距離を取る。
すると、敵は左右の剣を投擲してきた。モフは反射的に飛んで避ける。更に暗黒の騎士は背中に納刀した大剣を抜き、力強く踏み込んで来る。
モフは光魔法の「光の壁」を前面に展開する。
パリイイイイーン!
光の壁が壊れると同時に、敵も衝撃を受けたのか少し後ろにはじき飛ばされる。
その隙にすでにモフのライトボールが放たれていた。ライトボールが敵の頭部に命中する。
「ウオオオオオオオオオオ!!」
暗黒の騎士は、悲鳴を上げて消えて行った。
「おお、結構強いな! さすが暗黒の騎士」
俺は敵ながら賞賛を送る。
相手がモフでなければ、かなり強いと思う。今の冒険者でこの敵に勝てるのはそうそういないような気がする。
そういえば、エメルダさんが12階層以降は難易度が高いようなことを言っていたな。
だが、俺たちなら大丈夫だ。モフの光魔法を中心に攻撃し、俺も少しサポートしながら戦おう。
こうして、暗黒の騎士を、モフと俺で狩りまくるのだった。
8体ほど倒した時点でユニークアイテムを落としたので、まとめて鑑定する。
~~~鑑定~~~
黒剣(武器:剣)
・攻撃力(AR)6
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黒鋼剣(武器:剣)
・攻撃力(AR)8
・装備時、体力+3、筋力+3、敏捷+3
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フラマニゲルス(ユニーク武器:大剣)
・攻撃力(AR)15
・装備時、体力+10、筋力+15、敏捷+10、
・追加攻撃、黒炎(中)
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「おお、ついに大剣のユニークが出たな!」
さすが大剣だけあってARは15と高い。ついにミスリルの剣と並んだ。装備時の能力上昇もいい。追加攻撃の黒炎も凄そうだ。
黒い大きな大剣は、黒炎のオーラを纏い刀身が怪しく光っている。
よし、この大剣はガイにプレゼントしよう。こういう大剣は好きそうだしな。大剣好きのガイなら喜ぶはずだ。
黒炎の効果もあるので4~6階層の植物階層での戦いにも相性がいいだろう。
一応念のため自分用にもう1本確保するために再び暗黒の騎士と戦う。今度は2体ほど倒したところで出たので運が良かった。
「さて、次は13階層だ!」
13階層に入ると、ダンジョン内が草原のように、かなり広くなっていた。
よく見ると、辺り一面が麦畑になっていた。
「なんだろう? ここは……」
気が付くと、麦穂と思われていたものが、ざわざわと動き始めた。その麦穂は人の体くらいの大きさの一塊となっており、無数の塊がダンジョン中に密集していた。
「やばい! 数が多すぎる!」
俺は焦りながらも素早く鑑定する。
―――鑑定―――
ムーギー Lv50
・麦の魔物
・硬い麦の粒を放ってくる
・粒に麻痺効果(小)
・集団で行動する
・弱点:火・炎
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「麦の魔物か! 囲まれるとやばいぞ!」
数十体のムーギーが一斉に襲ってくる。無数の麦の粒が一斉に飛んで来た。
モフが光の壁を張る。
俺はすぐさま水魔法の水膜を自分とモフに掛ける。
無数の麦の粒は光の壁や水膜に遮られて跳ね返る。
「危なかった! よし! 焼き払うぞ!」
俺はすぐさま判断する。
左右の手に持ったユニーク短剣を2本とも空間魔法にしまい、フレイムソードを2本取り出して二刀流装備する。あれからアスカにプレゼントするためにフレイムソードは2本確保しておいたのだ。
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フレイムソード(ユニーク武器:剣)
・攻撃力(AR)13
・装備時、体力+10、筋力+10、敏捷+10、魔力+10
・攻撃時、追加火炎攻撃(中)
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魔力が上がり、追加火炎攻撃が出来る。この状況で最適な武器だ。
「よし! 麦狩りの時間だ! ウオオオオオオオオ!!」
俺は次から次へと襲い来るムーギーたちを、左右のフレイムソードで斬りまくる。
ついでにファイアーボールを周囲に連発する。
燃え上がるムーギーの集団。
「ムギイイイイイイイイイイイ!!」
次から次へと奇妙な叫び声を上げて消えて行くムーギーたち。
モフも光魔法を広範囲に使って支援してくれた。
こうして敵の集団を殲滅した結果、大量の魔石やアイテムが周囲に転がっていた。
~~~鑑定~~~
小麦(食材)
・パンの原料になる
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金色の小麦(レア食材)
・美味
・最高のパンの原料になる
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パンの製造魔具(ユニーク魔道具)
・小麦を入れると美味しいパンが出来る
・製造にはムーギーの魔石が必要
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あたり一面、小麦が入った大きな麻袋などが転がっている。ユニークアイテムを見る。
「こ、これは……。パン作りに特化したようなドロップアイテムだな」
乱獲したせいで、パンの製造魔具(ユニーク魔道具)が4つも手に入った。パン屋でも開けるんじゃないか……。
そうだ、ポゴタさんに1つプレゼントしようか。……しかし、ムーギーの魔石が必要となると、そう頻繁には使えないかもしれないな。
まあ、ポゴタさんの手作りパンは美味しいし、今は特に必要ないだろう。
とりあえずすべて回収する。念のためムーギーの魔石は売却しないで保管しておこうかな。何かの役に立つときもあるかもしれない。
「さて、14階層に行こう!」
どんどん進んで行く。
14階層に入る。草原から一転して今まで通りの洞窟のダンジョンに変わる。しかしここも広々とした階層だ。高さもかなりある。
探索してると、またゴーレムのような巨体な魔物が現れた。
前回のクレイゴーレムに似ているが、大きさは二回りも大きい。かなりの巨体だ。
体の色は茶色で樹木の年輪のようなものが刻まれている。歩くたびに地面が揺れている。
鑑定してみる。
―――鑑定―――
ウッドゴーレム Lv60
・魔力を帯びた樹木でできたゴーレム
・体力、筋力、魔力が高い
・回復力(中)
・尖った木の杭を飛ばして来る
・弱点:やや火に弱い
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「レベル60かあー。高いな。それにかなりの巨体で強そうだ」
う~ん、弱点はやや火に弱いか。樹木で出来ているが魔力を帯びているので「やや弱い」ということだろうか。
まあ、基本火攻めで行こう。
動きは鈍そうで体が大きいので、ファイアーボールを連発してみる。
「ファイヤーボール!!」
ウッドゴーレムの巨体にいくつもの火の玉が当たる。
「ウオオオオオオーン!!」
腹の底に響くような叫び声を上げて、敵はこちらを振り向く。
ビュン ビュン ビュン
幾つもの木の杭が勢いよく飛んで来た。
俺たちは避ける。木の杭は地面に深々と刺さり、岩を砕く。かなりの破壊力だ。
だが、これくらいなら避けられる。
モフが敵に光魔法の弱体化の光をかけた。
俺は更にファイヤーボールを連発する。
「ウオオオオオオーン!!」
かなり効いているようだ。
しかし、ウッドゴーレムの体に薄い緑色の霧のようなものが現れる。どうやら回復しているようだ。
俺はフレイムソードを持ち、何度も敵に斬りかかる。
巨体の一部がだんだんと炎と斬撃ではがれていく。
「バッシュ!」
剣技を使う。強力なスキルが炎の斬撃に乗る。
「ウオオオオオオオオオーン!!」
敵は燃え尽き、叫び声を上げて消えて行った。
「ふぅ、結構敵は体力があったな」
少し時間がかかったが問題なく倒せた。
こうして引き続きウッドゴーレムを倒し続け、虹色の光が出た。どうやらユニークアイテムを落としたようだ。
巨大なドロップアイテムが辺りにたくさん散らばっている。
まとめてドロップアイテムを鑑定する。
~~~鑑定~~~
丸太(素材)
・主に建築用の木材に使用される
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魔力木材(レア素材)
・魔力の込められた木材
・最高級の建築用木材
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クランハウスの箱(ユニーク魔道具)
・使用すると大人数が居住出来る家が一瞬で出来上がる
・立派な家、住み心地がとても良い
・再度元の箱に戻すことも可能
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「おおお!! クランハウスの箱! これは素晴らしい!」
なんか豪邸が簡単に手に入ったようで嬉しいやらびっくりやら。俺は興奮する。
形状は、手のひらに乗るくらいの小さな箱だ。これが大きな家に変わるなんて信じられないくらいだ。再度元の箱に戻すことも可能ということは、いつでも元の箱に戻して移動できるということだろうか。本当にびっくりである。
まあ、自宅があるから今すぐに使う必要はないが、興味がそそられる。王都あたりに土地を買って、別荘がわりにするのもいいかな。まあ、後でじっくり使い道を考えてみよう。
それにしても、大きな丸太や上質の木材が散らばっている。重そうだ。そもそもこれをドロップさせた冒険者は持って帰れるのだろうか……。俺はそんなことを考えながら、すべて空間魔法を使い収納する。
「さて、今日はここまでにするか」
俺とモフは感知スキルを使い、駆け足で敵を避けながら12階層まで戻り、転移陣に乗って1階層に戻って行った。