4話 戦闘スキルじゃないけれど
朝が来た。
俺は昨日のことを思い出しながら、ベッドの上で自分のステータスを見ていた。
この世界では冒険者は自分のレベルや能力などをステータスとして見ることが出来るのだ。
眼前にタブレットのような薄い板が現れステータスを表示している。
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トール 18歳
Lv :4
体力:4
魔力:4
筋力:4
敏捷:4
精神:4
幸運:4
SP:6
ユニークスキル:女神のドロップLv1
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ステータス欄に今まで無かったスキルの項目が表示されていた。
「初めてのスキルだ。やったぞ!! しかもユニークスキルだ!」
俺は、ニヤニヤが止まらなかった。
やっと念願のスキルが手に入ったのだ。
しかもただのスキルではない、ユニークスキルだ。
ユニークスキルは固有スキルとも呼ばれ、強力な効果のあるものが多い。数ある冒険者の中でも、所持している者はほとんどいないとも言われる希少なスキルだ。
しかし、そもそもこの『女神のドロップ』というスキルはなんなのだろう。
どういった効果があるのだろうか?
ステータス欄のスキルの部分を触ってみる。すると、以下の表示が現れた。
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女神のドロップLv1
効果:魔物を倒したときのアイテムドロップ率および質が向上する。
通 常 ドロップ 40%
レ ア ドロップ 10%
ユニークドロップ 1%
(各ドロップ率は別途計算、同時に2~3種類落とす場合もある)
…………………………………………
「え!?」
これを見た瞬間、俺はびっくりした。
なぜなら「ユニークドロップ」という文字があったからだ。
そもそもユニークドロップなど聞いたことがない。
本来、魔物が落とすアイテムは魔物の種類ごとに、通常アイテムとレアアイテムの2種類しかない。
例えばスライムの場合、通常のドロップアイテムは「スライムゼリー」で、レアのドロップアイテムは「スライムロイヤルゼリー」と、決まっているのだ。
ホーンラビットの場合は、通常アイテムは「うさぎ肉」で、レアアイテムは「極上のうさぎ肉」である。
昨日は運よくこのレアアイテムを引いたのだった。
ちなみに、この世界では、概ね通常アイテムは5回に1回(20%)、レアアイテムは100回に1回(1%)の頻度でドロップする。
改めて女神のドロップLv1の効果を見ると通常およびレアドロップ率が明らかに向上している。
さらにユニークドロップ率という項目があるのはびっくりだ。ユニークアイテムという今までに存在しなかったアイテムがドロップするのかもしれない。今はドロップ率は1%となっているが、スキルレベルを上げればもっと上がっていくのではないか。
ステータス欄にあるSPはスキルポイントと呼ばれ、使用することで任意のスキルのレベルを上げることが出来る。
初期レベル1の時に3ポイントついており、その後レベルが1上がる毎に1ポイント増えていく。
ちなみに今の俺はレベル4なので、SPは6ある。
今までは、このステータスやスキルシステム、また、魔物を倒すと魔物は消え魔石やドロップアイテムを落とす、といった現象は当たり前のように思っていた。
しかし前世の記憶を取り戻した今では、この世界は、確かにゲームのような世界だな、と改めて感じる。
あの記憶の中にある不思議な空間で会った女神様は、確かに俺の好きなゲームのような異世界に転生させてくれたんだな。
しかも加護も約束通りちゃんと与えてくれた。その加護がきっと、ユニークスキル『女神のドロップ』なのだろう。
「女神様、ありがとう……」
俺は自然と感謝の言葉が出た。
……まあ、欲を言えばもっと早くこの加護が現れて欲しかったと思わなくもないが、今は感謝の気持ちのほうが遥かに大きい。きっと、記憶を取り戻すことがきっかけで加護のスキルが得られるようになってたのかもしれないな。
それはそうと『女神のドロップ』ってそのまんまのスキル名だな、ネーミングセンスがいまいちだな……。
俺は女神様の顔を思い出しながら、つい苦笑してしまった。
「……そういえば、あの時の女神様って、なんとなくギルド室にある女神像に似てる気がするな」
1年前冒険者になる時に、俺は冒険者ギルドの洗礼室で女神像に祈り、ステータスを得た。
その時の女神像が、なぜだかあの空間で会った女神様に似ているような気がしたのだ。
「う~ん、なにか関係があるのだろうか……」
しばらく考えたが、よくわからない。
まあ、偶然似ていただけかもしれないな。気にすることもないか……。
それはさておき、俺には今までスキルが無く使うことすら出来なかったSPが6ポイントある。
このSPを振ってみるとどうなるか。なんだかワクワクしてくる。
「よし、さっそく振ってみるか」
女神のドロップのレベルの部分を触る。
≪SPを使用してスキルレベルを上げますか?≫
「はい」
≪Lv2に上げるにはSPが2必要です≫
「はい」
そして表示が変化した。
…………………………………………
女神のドロップLv2
効果:魔物を倒したときのアイテムドロップ率および質が向上する。
通 常 ドロップ 60%
レ ア ドロップ 15%
ユニークドロップ 2%
(各ドロップ率は別途計算、同時に2~3種類落とす場合もある)
…………………………………………
「おおおおおお!!」
俺は狂喜した。
各種ドロップ率が向上した。
そしてユニークドロップ率も2%に上がった。
俺は早速、残りのSPを振ることにした。
女神のドロップスキルをLv3にするにはSPが3必要だった。
これで先ほど振った分と合わせてSPを5消費することになり、残りSPは1となった。
――結果。
…………………………………………
女神のドロップLv3
効果:魔物を倒したときのアイテムドロップ率および質が向上する。
通 常 ドロップ 80%
レ ア ドロップ 20%
ユニークドロップ 3%
(各ドロップ率は別途計算、同時に2~3種類落とす場合もある)
…………………………………………
「おおおー! いい感じだな」
魔物を倒すと8割の高確率で通常アイテムを手に入れることが出来る。
さらに約5回に1回の割合でレアアイテムが落ちる。
ユニークアイテムは、33回に1回ほどの確率で入手できることになる。
これはおいしすぎる。
なんだか興奮してきた。いますぐにダンジョンに行って確かめたくてしょうがない。
「お兄ちゃーん、早く起きてー! 朝食出来たよー!」
いつものようにリンの声がリビングから響いてくる。
俺は大急ぎでリンの作った卵入り野菜スープとパンをかきこむように食べ、呆れたような目で俺を見るリンを後にして、家を飛び出した。
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