表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
35/141

35話 迷宮主戦 決着


 

 ――綱渡りのような戦闘が続く。


 あれから同じような攻防を繰り返し、もうすでに1時間くらい経っただろうか。

 

 なかなか決定打を与えられないどころか、こちらは防戦一方のまま、押され始めている。



 体力も減って来ている。苦しい。


 魔力もマナポーションをその都度飲んでいるが、魔力回復が追いつかない。魔力保有量もあまり残されていない。特にモフは俺ほど魔力が高くないので、かなり減って来ている。


 ポーションもマナポーションも両方ともほぼ尽きかけている。


 今では、俺は、糸を飛ばし牽制することしか出来ない。マリオネットで切れた糸だが、まだ手袋の中には糸が残っている。

 モフは、唯一の素早さを頼りに逃げ回りながら、小さなライトボールで目くらましすることしか出来ない。


 敵も体力が減って来たのか、最初の頃よりかは動きが鈍くなってはいる。

 しかし、俺たちの消耗具合に比べれば、僅かだ。未だその戦闘力は衰えていない。



「もうダメなのか……」


 つい弱音を吐きそうになる。 


 モフが牽制のライトボールを小さく放つ。


 その時、モフのスキルに変化を感じた。もはや俺とモフは、お互いのステータスを感覚で共有できるようになっている。


――――――――

スキル:光魔法Lv2 → Lv3

―――――――


「おお!!」


 モフの光魔法のレベルが3に上がった!

 そして、新しく覚えた魔法の情報を感覚で探る。


――――――――

光魔法Lv3 弱体化の光

・5分間敵のステータスおよびスキル効果を10%減少させる

――――――――


 これを見た時、俺はわずかだが一筋の光が差したように感じた。

 モフの魔力もあまり無い。大技が使えるとしてもあと1、2回ぐらいかもしれない。


 もうこちらには体力も魔力もほとんど残されて無い。最後の攻撃を仕掛ける以外に無い。

 俺は瞬時に考え、決断した。


「モフ!! 弱体化の光だ!!」


 モフはすでに承知とばかりに魔法を放つ。


 眩くまでの強い光が、キングラビットを包む。


 俺は敵に素早く近づいて短剣を振るう。


「ギャアアアアア!!」


 少し出ごたえを感じた。だがまだまだ硬い。


 敵は弱体したとしても10%ほどだ。俺は慎重にかつ素早く動き、敵の攻撃に注意しながら何度も短剣で斬りつける。


 いけるか!? ――そう思った時だった。


 気が付いたら、キングラビットの首が大きく反り返り、その巨大な角が俺を目がけて迫って来ていた。


 俺はキングラビットの脚の攻撃にばかり気を取られていたのだ。

 慌てて避けようと俺も鋭くバックステップするが――


 ――間に合わない。俺は瞬時に悟った。


 その瞬間だった。


 ――――チリン


 鈴の鳴る音が聴こえた。


 キングラビットの角が、俺の顔面スレスレを通過していた。

 角を避けることが出来たのだ。


 鈴の音が鳴った時、キングラビットの角がほんの一瞬だけ止まったような気がした。


 モフの方を見ると、モフが踊っていた。いつもとは違う不思議な踊りだ。


「鈴の音か!!!」


 キングラビットは、虚を突かれたような表情を一瞬見せていたが、すぐに前脚で攻撃してきた。


 俺は攻撃をかいくぐりながら、再び敵にフロストムーンで斬りつける。


 ドバババババババババーン!!


「ギャアアアアアア!!」


 クリティカルヒットが初めて出た感覚があった。


 俺は今まであまり気に留めていなかったモフのスキル、「鈴の音」の情報を素早く探る。


――――――――

鈴の音

・3分間、幸運値を倍に上昇させる

 (パーティーメンバーの基本ステータスが対象)

・1日3回のみ使用可能(重ね掛けにより倍増可能)

・音が鳴った瞬間、一瞬だけ敵の動きを鈍らせる

――――――――


「幸運値が倍!! ――そうか、クリティカルヒットだ!!」


 俺は瞬時に勝利への道筋が見えたような気がした。


 素早く自分のステータスを脳裏に呼び出す。


――――――――

幸運 56+15

――――――――


 28だった幸運が倍になり56となっていた。


 幸運値が高ければクリティカルヒットも出やすくなる。


 俺はマナポーションを飲んで、猛攻をかける。


 しかしまだまだだ。クリティカルはなかなか出ない。


 また、キングラビットの角が俺を襲って来た。


 ――――チリン 


 また鈴の音が鳴った。


 俺は一瞬の敵の硬直のおかげで、なんとか避けることが出来た。


――――――――

幸運 112+15

――――――――

 

 幸運値が更に倍に跳ね上がった。


「ギャアアアアアアアアア!!」


 クリティカルが入った!! いけるか!?


 その瞬間キングラビットは気が付いたのだろう。鈴の音を出すモフに向かって猛烈に突進した。


「モフ!!」


 驚愕の表情で立ち止まっているモフに、俺は、素早く糸を飛ばしモフを絡めて、強くこちらに引っ張る。


 キングラビットの角が、モフのいた位置で空振りする。


 糸に引っ張られ、モフは踊りながらこちらに飛んでくる。



 ――――チリン 



 3回目の鈴の音が鳴った。


――――――――

幸運 224+15

――――――――


 更に幸運値が倍に跳ね上がる。


「モフ!! でかしたぞ!!」


 俺は最後のマナポーションをモフに飲ませ、これからの重要な指示を出す。

 すでにモフの魔力も付きかけていた。この指示が、モフの最後の大技になるだろう。



「キュウウウウウウウウウウウ!!」


 キングラビットは、怒り狂いながら咆哮を上げ、再び襲って来た。


 俺はモフを斜め上空に投げる。


「モフ!! 頼むぞ!!」


 ――冷気の(ブレス)


 モフの最後の大技だ。



 ビュウウウウウウウウウウウウウウウウウ!!!



 冷気の(ブレス)がキングラビットを襲う。


 キングラビットの動きが冷気で鈍くなる。


「マリオネット!!」


 俺も最後の大技を掛ける。もう魔力は残ってない。


 キングラビットの四股と角に糸が絡まり、宙に舞う。


 弱体化の光。冷気の霧。絡みつくマリオネット。200を優に超える幸運値。



 俺は最後の猛攻を仕掛けた。


 吊り下げられたキングラビットの首の後ろを狙って、フロストムーンとホーンソードを交互に振るう。


 そして――すべてがクリティカルヒットとなった。



「ギャアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」



 糸で吊り下げられ、弱体化と冷気で、身動きが取れないキングラビット。

 必死の形相で大暴れする。


 糸が切れる前にやらねばならない!!


「ウオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!」


 俺は力の限り短剣を高速で振るう。


 振るった短剣はすべてクリティカルになる。


 最初の鈴の音が鳴ってから、そろそろ3分になろうとしている。


 俺は更に力を込めて短剣を振るう。


「お前の肉をよこせええええええええええええええ!!」


 気が付けば俺は無意識に叫んでいた。


 パキイイイイイイイイイーン!!


 左手のホーンソードがキングラビットの首の奥に突き刺さり、ホーンソードは砕け散り、マリオネットの糸が切れる。



「ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!」



 この瞬間、ついにキングラビットは断末魔の叫びを上げた。


 ボス部屋が大きな音を立てて揺れる。


 巨大な霧となって徐々に消えて行くキングラビット。



 ――天から声が聴こえて来る。



≪迷宮主、キングラビットを討伐しました≫


≪レベルが上がりました≫

≪レベルが上がりました≫

≪レベルが上がりました≫

≪レベルが上がりました≫   

≪レベルが上がりました≫

≪レベルが上がりました≫

     ・

     ・

≪レベルが上がりました≫



 ――繰り返す天からの声



≪習得可能スキルが解放されました≫


≪特別ボーナスとしてSPが42与えられます≫


≪従魔、モフミィがモフミィコマンドに進化しました≫



 ――ドスン、ドスン。


≪キングラビットの通常アイテム『極上のうさぎ肉:特大』をドロップしました≫ 



 ――ドン。


≪キングラビットのレアアイテム『ビックホーン』をドロップしました≫ 



 ――コロン


≪キングラビットのユニークアイテム『兎王(キングラビット)の勲章』をドロップしました≫ 



「や、やった、やったぞ!! うおおおおおおおおおおおおおお!!」


「にゃにゃにゃにゃああああ~~ん!!」



 俺たちは勝利の雄たけびを上げるのだった。

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ