33話 迷宮主戦 ①
朝が来た。
今日はいよいよ12階層――最下層の迷宮主に挑戦する日だ。
胸が高鳴る。
となりのベッドにはすでにモフが起きていて、なにやら良く分からない準備体操みたいなものをやっている。
ステータスを開いてみる。
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トール 18歳
Lv 28
体力:28+31
魔力:28+30
筋力:28+30
敏捷:28+35
精神:28+15
幸運:28+15
SP:1
スキル:夜目Lv3、感知Lv3、風魔法Lv2、火魔法Lv2、闇魔法Lv2、回復魔法Lv2、蹴術Lv2、操糸術Lv3、レクイエム
ユニークスキル:女神のドロップLv6
【装備品】
武器(右手):フロストムーン
武器(左手):ホーンソード
防具(頭) :もふ猫のフード
防具(全身):藍狼のマント
防具(肩) :緑光のショルダーガード
防具(体) :クリムゾンレザー
防具(服) :シャンテの冒険服
防具(腰) :ゴブリンの腰巻
防具(足) :バトルブーツ
アク(頭) :風のリボン
アク(首) :キャッツアイ
アク(腕) :銀熊の腕輪
アク(指) :黒炎の指輪
アク(指) :コラプトゲンマ
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ついにここまで来た。
ついこの前まで、スキル無しのレベル3で装備も貧弱だった俺だった。1年間ずっと最弱冒険者だった俺が、今では信じられないほどの成長具合だ。
感慨深いものを感じる。
結局レベルが20を超えても転職はしなかったが、すぐに決めることもないだろう。能力値はオールマイティーの方が、ある意味いろいろなことに対応出来ていいのかもしれない。転職すれば、職業に見合ったスキルが得られる可能性が高いが、俺の場合は、転職しなくてもユニーク装備の付与スキルがあるので、転職は当面は保留でいいだろう。
続けてモフのステータスを見る。随分久しぶりだ。
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モフ (モフミィ種)
Lv 25
体力:20+10
魔力:30
筋力:15+10
敏捷:50+15
精神:20
幸運:30
スキル:夜目Lv3、感知Lv3、空間魔法Lv2、光魔法Lv2、冷気の霧、鈴の音
装備品:白猫の鈴(アクセサリー:首)
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「おお! 気づかないうちにかなり成長しているな!」
まあ、ずっと俺と一緒に戦って来たのだ。当然のことなのかもしれない。
最初の頃はレベルが1だった光魔法と空間魔法のレベルが、それぞれ2に上がっている。俺と違ってSPが無いモフは、スキルを多用することで、スキルレベルが上がるようになってるのかもしれないな。光魔法はよく使ってたし、空間魔法はドロップ品を常時回収させていたしな。
さて、昨日の帰りに、大量のポーションやマナポーションを買い込んでいる。モフにも分けて持たせている。準備は万端だ。
よし、行こう、迷宮主の元へ。
◇
12階層――最下層へやって来た。
今回の戦いは長期戦となることが予想される。なぜなら敵はアイアンゴーレムなのだ。話に聞いている通り硬くて体力が非常に高いらしい。また、筋力もあるので油断できない相手だ。
ただ、アイアンゴーレムのレベルは35程らしいので、落ち着いて戦えば、今の俺たちなら問題はないはずだ。
また、ボス戦はこちらの魔力消費も多くなることが予想される。したがって魔力を切らさずに戦うことが肝要だ。その為、マナポーションは多めに準備している。
もちろんポーションの方も大量に準備している。
モフとの連携も、事前に打ち合わせして、いろいろな場面において対応出来るように準備してきたつもりだ。モフと俺は普段からテレパシーのようなもので意思疎通しているのだ。
最下層の一番奥にある通称ボス部屋まで、出てくるホワイトキャットを、魔法を使わずに倒しながら進む。
やがて、最奥に大きな扉が見えて来た。これが、ボス部屋への扉なのだろう。
扉のすぐ右脇に人の腰くらいの高さの台座がある。この台座の上に大きめの赤い水晶玉が置かれている。
ここに手を乗せて少しだけ魔力をそそぐと、このボス部屋への扉が開くのだ。
「よし、いよいよ戦うぞ。モフ、準備はいいか!?」
「にゃーん!」(――コクリ)
俺は台座の水晶玉に手を置き、魔力を少しそそぐ。
すると、扉は大きな音を立ててゆっくりと開いていった。
深呼吸をして、扉をくぐる。
扉を潜り抜けると、後ろで扉が閉まっていく音がした。
ガチャン
これでもう後戻りはできない。
ボス部屋の中は大広間になっていた。かなりの広さだ。
部屋の周辺には、等間隔で松明が設置されている。
松明の灯が揺れ、広間全体を怪しく照らしている。
部屋の奥の方に、巨大な魔物の姿が徐々に現れてくる。
「アイアンゴーレムか!?……」
次第に、魔物の姿が鮮明になって来た。
「――っつ!! こ、これは――!!」
俺は驚愕のあまり目を見開くことになった。
昨日のギルドマスターの言葉が思い起こされてくる。
天から声が聴こえてくる。
≪迷宮主に異例が発生しました≫
≪迷宮主、キングラビットが現れました≫
≪キングラビットのレベルは70≫
――繰り返す天からの声
俺は信じられない思いで震撼する。
やがて、松明に照らされた広間の中で、その迷宮主の全貌が明らかになった。