21話 7階層・8階層へ
7階層に来た。
7階層はブルーウルフが出る。青い狼の魔物で、鋭い氷のような牙と爪で、素早く力強い攻撃してくるらしい。こちらも危険な魔物だ。
引き続き風魔法での遠距離攻撃から戦闘を開始することにする。
感知スキルを発動させて探すと、所々にいる。一番近い所にいるブルーウルフにそっと近づくと、敵もこちらに気が付いたようだ。
「ワオオオオオオーン!!」
こちらに向かって駆けだして来る。
「ウインドボール!!」
ブルーウルフは、その風の玉を肩口を掠めギリギリ避ける。
俺は横に大きく動き、もう一度ウインドボールを放とうとするが、モフがすでにライトボールを放っていた。
ブルーウルフの頭付近で光の玉が炸裂し、眩しく輝く。
一瞬の衝撃と眩しさにブルーウルフに隙が出来る。俺は素早くウインドボールを放つ。
ズバババババーーン!!
見事頭に命中し、ブルーウルフは消えて行く。
「よし! やったぞ! モフ、ナイスアシストだ!!」
「にゃにゃ~ん」(――どやぁ~)
モフがドヤ顔をしている。
こうして俺たちは連携しながら、ブルーウルフ狩りを再開する。
そして、今度は8体ほど狩ったところで、ユニークアイテムを入手出来た。
早速、ブルーウルフで得たアイテムをすべて、鑑定してみる。
~~~鑑定~~~
ウルフ肉(食材)
・ワイルドな味わいの肉。少々硬い。
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藍狼のマント(レア防具)
・防御力(DR)3
・装備時、精神+5
・耐熱、耐寒効果(小)
‥‥‥‥‥‥‥‥
フロストムーン(ユニーク武器:短剣)
・攻撃力(AR)9
・装備時、筋力+10 敏捷+10
・凍結効果(小)
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「よっしゃああああ!!」
フロストムーン。これはいい武器だ! ホーンソードのAR6から更に上がってAR9だ。しかも装備時、筋力+10に敏捷+10と大幅の上昇だ。しかも、凍結効果までついている。これは切りつけた相手を少しの間、凍らせて動きを鈍くする効果なのだろうか? いずれにしても、今後のメイン武器になるな。
そして、レアアイテムの藍狼のマントもいい感じだ。マントはいずれ欲しいと思ってたところだったので有難い。
俺は、ホーンソードを左手に持ち替え、右手にフロストムーンを握りしめる。三日月のようにやや反り返った刀身は青白く冷たく輝いている。吸い込まれるような美しさだ。
装備した瞬間に更に力が湧いてくるような気がする。
続いて、藍狼のマントを羽織る。暖かい。保温効果もあるらしいので、やはりマントは冒険には必需品だな。それにマントってやっぱりカッコイイよな。
「さて、次は8階層だ!」
8階層の入り口近くまで来ていたので、そのまま入る。
確か、8階層はシルバーベアが出るんだったな。銀色の毛並みを持つ熊の魔物で、鋭い爪と巨体で強烈な攻撃をしてくるらしい。体力もかなりあるとのことなので、持久戦になるかもしれない。
それはそうと、ここのところ魔獣続きだな……。
今まで通り、風魔法での遠距離攻撃から戦闘を開始し、モフにも光魔法でサポートをするよう指示する。
感知スキルを利用し、敵の位置を確認し、そうっと岩陰から様子を見る。
「うわ……思った以上にデカくて強そうだな。よし、奇襲で風魔法連発だ。モフも頼むぞ」
俺は岩陰から静かに躍り出て、シルバーベアに向かってウインドボールを連発する。
「ウインドボール!! ウインドボール!!」
「グルアアアアアア!!」
シルバーベアは俺の放ったウインドボールを受け悲鳴を上げた。
3発ほど体や腕などに命中した。消える様子はないが、それなりにダメージは入っているようだ。更に、モフのライトボールの眩しい輝きで混乱している。俺は、素早く敵に近づいて、フロストムーンで足を斬りつける。
「グルアアア!?」
斬りつけた瞬間冷気が発し、シルバーベアの動きが一瞬止まる。俺はチャンスと見て連続でフロストムーンを振るう。斬りつける度に、氷結効果のおかげか、だんだんと敵の動きが鈍くなってくる。
「よし! ここだ!!」
俺は飛び上がり、シルバーベアの首めがけて全力でフロストムーンを横に振るう。刀身は三日月のような奇麗な円を描いて残像を残す。
「グルアアアアアアアアア!!」
シルバーベアは断末魔の悲鳴を上げて、霧のように消えて行った。
「よし! やったぞ!」
今回はフロストムーンの武器攻撃がかなり有効だったな。特に凍結効果が素晴らしい。そのおかげで、敵から一度も攻撃を受けることなく倒せた。
そういえば、6階層に来てからずっと魔法を使いっぱなしなので、だいぶ保有魔力量が減って来た感覚がある。まあ前世のゲームで言えばMPにあたる魔力量だな。ステータスには現れない数値だが、体の感覚であとどれくらいの魔力(MP)が残っているのかは判るようだ。今のところ感覚ではすでに6割ほどを消費しており残り4割ほどだ。
ずっと魔法にばかり頼ってはいられないな。まあ、この状況で、強力な武器が手に入ったのはラッキーだったな。
「よし、今後は魔法の連発はなるべく控えて、武器攻撃とフットワークで勝負しよう」
こうして俺とモフは再び、シルバーベアを狩り続け、ついにユニークアイテムを手に入れるのだった。
そして、シルバーベアを狩って得たアイテムをすべて、鑑定してみる。
~~~鑑定~~~
ベア肉(食材)
・食べると癖になる味わいのある肉。
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銀熊の毛皮(レア素材)
・丈夫で保温効果が高い
・外套、敷物などの素材として人気
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・銀熊の腕輪(ユニークアクセサリー:腕)
・装備時、体力+15 力+10
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「うわ……これはまた強烈なアクセサリーだな!!」
銀熊の腕輪――。今の俺のレベル帯ではかなりのチート級のアクセサリーだな。シンプルながら能力値の上昇は凄まじい。早速装備してみると、疲れが一気に吹っ飛んだ気がした。体力馬鹿になったが、いい気分だ。筋力もかなり上がるので素晴らしいの一言。
疲れが取れたところで、更に9階層に向かおうと考えたが、保有魔力が残り少なくなってきたので今日はこれでおしまいにする。
6階層へ速足で戻り、転移陣を使ってダンジョンを出て、ギルドへ向かう。今日の狩りの結果も大満足だ。
――冒険者ギルドにて
カラ~ン
モフを肩に乗せて、扉をくぐる。
「おお! トール! 昨日は有難うな! 最高だったぜ!」
「あっ! トールさん! 昨夜はご馳走になりました!」
俺に気づいた冒険者たちが次々に声をかけてくれる。
「いや~、喜んでもらえて俺もうれしいよ」
エメルダさんも俺に気が付いて声をかけてくる。
「トールさん! 昨夜はありがとうございました! 今日もダンジョン帰りですか? また個室で対応しますね!」
二人で個室に入る。モカさんもすぐに駆け付けて入って来て、いつものように買取作業を始める。
「うわ~!! 今日も凄い量ですね! しかも、魔獣のお肉がいっぱい! ボア肉に、ウルフ肉……それにベア肉もありますね!! それにレア素材もたくさん! もう8階層まで進んだのですね! 凄いです!」
「わっ! はわわわわ……!! トールさんすごい!」
今回の買取金額は、ホクホクの103万ギルとなった。
買取りが終わり、一息ついたところでエメルダさんが思い出したように言う。
「そういえば、マスターが、トールさんに話があると言ってました。今からマスター室に来てもらっていいですか?」
ん? 何の話だろう?
俺は了承し、そのままエメルダさんの案内で、ギルドマスターの執務室へ向かった。
「よお、トール。昨晩の奢り、有難うな! 久しぶりに堪能したぜ」
執務室に入ると、ギルドマスターは昨日のように気さくに俺に話かけて来る。そして続けて話を進める。
「それで、トールに話があるってのは、領主のことだ。実は先日の依頼達成の件で、直接領主がお前に礼を言いたいらしい。それで、お前が領主邸に招待されたって訳だ」
「えっ! 領主様が!?」
「おう、領主様直々の招待ってやつだ。トールの都合がよければ、明後日に来て欲しいとのことだが。トール、どうだ?」
う~ん、俺なんかが領主様に招待かぁ……。ちょっと緊張するけど、断るのもなんか悪い気がするというか恐れ多いな……。
「……分かりました。俺なんかで良ければ、その招待をお受けします」
「よし、決まりだな。まあ、今の領主はなんというか……気さくな人だから、あまり心配するな。あ、それからお前の従魔…モフだったか、そいつも一緒に連れて来てくれとのことだ。ということで、先方には俺から連絡しておく。当日の朝、ギルドに来れば案内の馬車が用意してあるとのことだ。まあ気楽に行け、トール」
こうして俺は、明後日、領主邸へ行くことになったのだった。