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130ep 閑話4 ポゴタさん夫妻のとある一日


 朝が来た。まだ外が薄暗い時分から私は起き出す。


 よし、今日の売り物のパンをたくさん焼くとするか。


 最近は客も多くなり、以前より格段に繁盛している。嬉しいかぎりだ。


 それに妻のダリアも元気だ。いつものように一緒にパン作りに勤しむ。

 いつもの日常の風景。この何気ない日常が、私の幸せなのだ。


 そして、なんといっても私たち夫婦の間に、子供が出来たことがすごく嬉しい。

 まだダリアのお腹の中にいる双子の子供。

 生まれて来るのが待ちきれないほど楽しみだ!


 トールさんには、とても感謝している。

 あの時、トールさんが私の悩みの相談に乗ってくれなければ、この幸せはなかったことだろう。


 そう、あの日、トールさんからいただいた不思議な薬――エロリィナイト。


――――――――

エロリィナイト(ユニークアイテム:消耗品)

・精力増強剤

・催淫効果(大)

・良い子は使用しちゃダメ絶対

――――――――


 あの薬のおかげで、私はあっち(・・・)の元気を取り戻し、結果、無事子宝に恵まれることができたのだ。


 ……しかし、アレはすごく効いたな。ヤバイくらいだった……。


 もうその薬は使ってしまって持ってないが、また欲しいとちょっと思ってしまう。なんだが癖になりそうで怖いな……。



 私たちの双子の子供たちについて、トールさんや男爵家の方から話があった。

 ダリアのお腹の中にいる双子の子供たちは、古い時代の勇者と聖女の生まれ変わりかもしれないとのことだ。

 私は驚きと共に、この子たちの将来が困難に満ちたものになるのでは、と心配した。

 しかし、同時になにか誇らしさをも感じた。

 願わくば、我が子供たちには、幸せな人生を送って欲しいものだ。




 それはそうと、最近、お客さんとの雑談の中で、そのエロリィナイト(禁断の魔薬)の話題がよくあがるようになった。


 噂によると、あの満月の日の魔物の襲来のときから、その薬が大量にドロップアイテムとして流通し始めたとのことだ。

 しかも、なんでも、私がトールさんに貰った「エロリィナイト」の上位版なども存在するそうだ。

 アレの上位版なんて……。考えただけでも恐ろしいな……。


 効果がより一層強く、刺激を求める若者たちの間で、一時はこっそりと高値で取引されていたらしい。

 まあ、今はだいぶ、消費されて数が減ったとのことだが。


 ただ、その代わりに、最近比較的若い夫婦の間で、子供を授かる人たちが増えてきているとのことだ。 

 うむ……なんとなく分かるような気がするな。あれは、効果てき面なのだ……。


 まあ、ともかく、この街の人口が増えることはよいことなのかもしれない。

 ベビーブームにより、いっそう街も発展していくのかもしれないな。





 今日も私は旦那と一緒に、売り物のパン作りに勤しみます。


 子供を授かってから、世界が輝いて見えるようになりました。毎日がすごく楽しいわ。 


 トールさんとリンちゃんも、定期的に私たちのお店に来てくれています。

 そして、私のお腹の中にいる二人の子供たちをすごく気にかけてくれているのを感じます。

 とてもありがたく、感謝の気持ちで一杯ですわ。


 あ、そうそう、以前リンちゃんから貰った「つわりの薬」とてもよく効きましたわ。

 なんでも、トールさんの知り合いの錬金術師さんに頼んで作ってもらった特別な薬だとか。

 辛かったつわりも、一瞬のうちに消え、あれから爽快な日々を過ごせてますわ。

 そして今は、今後の為に、出産が楽になる薬を作製してくれているとのこと。

 ほんとにトールさんとリンちゃんには感謝ですわ。


 

 そう言えば、今まで毎晩、繰り返し見ていた "あの夢" を全く見なくなりましたわ。


 その夢の内容は、メダルのような首飾りをつけた、二人の男女の夢。

 

 恐らく、お腹の中にいる双子の子供たちが見ていた夢。

 私の子供たちの持つ無意識の記憶。きっと、誰かに伝えたかった記憶。

 その夢――記憶が、私に伝わって、夢となって毎晩現れていました。


 その夢を、先日のある日を境にパッタリと見なくなりました。


 まるで、伝えたかった記憶を、すでに誰かに伝え終えて、使命を果たしたかのように――。


 今では私のお腹の中にいる子供たちは、なんだか安心しているような気がします。

 不思議な感覚です。



「ダリアさーん。お手紙が届いていますよー」


 商業ギルドの配達の方の声が聞こえてきました。


 私にお手紙? 誰からかしら?


 封筒を受け取り、中のお手紙を取り出す私。



 あら! トールさんとリンちゃんからだわ!


 嬉しくなる私。早速読んでみましょう。



『ダリアさん、こんにちは。


 その後、お変わりはないでしょうか。


 こちらは、つい先日、やっとある大事な務めを終えることができました。


 これもひとえにダリアさんのおかげです。


 詳しくは申し上げられないのですが、お腹の中のお子様にお伝えください。


 すべて受け取ったので、後は私たち、トールとリンにお任せください、と。


 そして、ダリアさんには健康で、無事出産を迎えられることを、心よりお祈りしています。


    トール&リン より 』



 ああ! トールさん、リンちゃん! ありがとう!


 私には、なんとなくだけど分かりますわ。


 きっと、私のお腹の中の子供たちは、トールさんとリンちゃんにゆかりのある大切な存在なのでしょう。


 確かに承りましたわ。お腹の中の私の子供たちに伝えますわ。

 


 でも、どうやら、もうすでに伝わっているみたいですわね!

 

 子供たちが、お腹の中で微笑んでいるような気がしますわ!



あっと言う間にお盆も終わり、また週末になりました。

そろそろ秋ですね。季節の移り変わりが早く感じられます。

では、よい週末をお送りください(^^)


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