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122話 A級ダンジョン迷宮主戦 ③


 古代竜アルタインの口から、眩いばかりの黄金の光のブレスが放たれようとしていた。


「まずい! 皆! 残りの魔力で、出来るだけ高レベルの防御スキルを頼む!」


「「「おう!!」」」


 俺の残存魔力量は半分ほどに減っている感覚がある。おそらく皆も同じ状況だと思われる。


 俺は残り半分の魔力のほとんどを使い、高レベル防御魔法を使う。


「水魔法Lv11――アクアスフィア!」


 巨大な円形の水の盾が現れる。


 リンが叫ぶ


「土魔法Lv11――アダマントフェンス!」


 巨大なアダマンタイト製の土壁が前方に立ちふさがる。


 イナリが叫ぶ。


「火魔法Lv11――朱炎(しゅえん)の防壁!」


 ファイアーウォールの更に上位の炎の壁が立ち上がり赤く染まる。


 ミレアが叫ぶ。


「女神の大樹Lv7――大樹の守り!」


 巨大な大樹が地面から現れ、固い枝が渦巻き状の盾を作る。


 シャンテが叫ぶ。


「操糸術Lv11――蜘蛛糸の魔力壁!」


 蜘蛛の糸が更に密になったような魔力糸の壁が広がる。


 アリシアさんが叫ぶ。


「騎士盾術――ホーリーシールド!」


 俺たちの前方に立ちふさがり、巨大な光の盾を出現させる。


 ミーアが叫ぶ。


「海竜の竜巻にゃ!」


 ミーアも、アリシアさんと一緒にパーティーの前方に立ち、盾を左手に構える。

 そして、右手に魔剣リヴァイアサンを持ち、付与スキルを使う。

 強力な水の竜巻ができ、俺たちの周囲を囲む。


 エミリーが叫ぶ。


「防御結界Lv14――イージス!」


 いつもより更に強力な魔力を纏う結界が俺たちを包み込む。


 そして、モフが、エミリーの結界のすぐ外側に空間バリアを張る。


 幾重にも張られた俺たちの防御スキル。


 皆の顔に緊張の色が見える。


 

 そして、ついに古代竜アルタインの口から凄まじい黄金色のブレスが放たれた。



 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ――



 俺たちの幾重にも重なった防御とアルタインの黄金色のブレスが激しく衝突する。

 

 ボス部屋が振動し大きな音を立てて揺れる。



 ドゥウウウウウ――バリバリバリ――

 ガガガガガガガガ――



「みんなあああ! 頑張れ――!!」

「うおおおおおおお!!」

「にゃにゃにゃあああ!!」

「「「おおおお――!!」」」

 


 しかし――俺たちの防御魔法は、一つ一つ、次々に破られて行く!


「「「うああああああ!!」」」



 黄金色のブレスが結界の近くまで達した。


 パリィイイイーーン!


 モフの空間バリアが破れた音がした。



 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ――

 バリバリバリバリバリ――


 エミリーの結界に達した黄金のブレス。


 激しく攻めぎあう、結界とブレス。


 ミーアとアリシアさんが、俺たちの前で盾を構えている。


「あああああああああああああ!!」


 エミリーの悲痛な声が聞こえる。


 パリィイイイイイイイイ――――ン!!


 エミリーの結界が破れた音が辺りに響き渡る。


「にゃにゃにゃああああああ!!」

「はあああああああああああ!!」


 ドウゥウウウウウウウウウウ――ン!!


「「「ぎゃああああああ!!」」」


 激しい熱波と衝撃を感じ、俺たちは大部屋の壁際まで吹き飛ぶ。



「うっ……せ、世界樹の…癒し!」


 ミレアが全体回復スキルを皆にかける。


 なんとか回復し、よろよろと立ち上がる。


「…………」

「…………」


 しかし。ミーアとアリシアさんがうつ伏せのまま地面に倒れ込んだままだ。


 ――ま、まさか!?


 俺の鑑定機能が自然と発動してくる。



―――鑑定―――

ミーア Lv800

・死亡

――――――――  

アリシア Lv800

・死亡

―――――――― 


「「「み、ミーアあああああ!! アリシアさあああーーん!!」」」


 皆の絶叫が聞こえて来る。


「み、ミレア――!! エルフの秘儀を頼む!!」

「ミレア――!! 頼んだわよ!」


「うんっ!!」


 力強く頷き、黄金林檎をかじるミレア。魔力が一瞬で半分ほど回復したはずだ。


 ユニークスキル「女神の大樹」Lv10 

 ――世界樹の光(ユグドラシル)


 そのエルフの秘儀は、世界樹と女神の加護のもと、死者をも生き返らせる究極の秘儀だ。


 しかし、その魔法の詠唱は非常に長い。

 詠唱の言葉(じゅもん)は、神代エルフ語で成され、その言節は31節におよぶ。長大な詠唱呪文だ。

 そして、詠唱省略や破棄は出来ない。

 それゆえに、その間は完全に無防備となる。



 古代竜アルタインは、大技の黄金光のブレスを使った直後のためか、しばらく硬直している。

 ――が、やがてゆっくりと動き始め、再びブレスを吐く準備を始めようとしている。



 普通に考えて、とてもミレアの呪文が完成するまでは、敵も待ってはくれない。


 が、しかし。ミレアのエルフの秘儀は、その弱点をすでに克服している。



 ユニークスキル「女神の大樹」Lv11 

 ――時空詠唱(じくうえいしょう)


――――――――  

時空詠唱

・呪文詠唱時、本人以外の周囲のすべてが、時が止まったかのように動けなくなる

―――――――― 


 

「皆! 黄金林檎を食べろ! 次の攻撃に備えろ!」

「「「おう!!」」」



 そして、ミレアは詠唱を始める。


 ル・アラス・ミルレリア・ヴィ・ユグドラ

 ――私は 女神と世界樹に 願う


 エ・エルラ・ドゥル・ユグドラ

 ――かつて命は 世界樹と共にあり 

 

 ………………

  ………………


 ユグドラ・イ・アクエ

 ――世界樹は水 


 ユグドラ・イ・ウィリ

 ――世界樹は風 


 ………………

  ………………


 ミレアの全身から、緑色の光が輝いている。

 まるで女神のような、澄んだ声が聞こえてくる。


 辺りは静寂に包まれ、まるで時が止まったかのように

 敵と皆の動きが止まっていた。


 ミレアは更に詠唱を続ける。


 ウィリ・ソルド アクエ・リリム

 ――風はそよぎ 水はせせらぎ 


 ガイリア・ユグ フリア・ヴォルク

 ――大地は揺れ 炎は燃え上がる


 ………………

  ………………


 詠唱が重なるたびに、周りのすべてが、命に満ち溢れてくる。



 シ・ウィリ・イル・フサ ナラサ・エルラ

 ――その風は 息吹となり 命を躍らせる


 シ・アクエ・イル・ジルム ユク・エルラ

 ――その水は 慈しみとなり 命を包む


 ………………

  ………………



 皆の目がミレアに釘付けになっている。


 敵の動きも止まっている。

 古代竜アルタインは、目を見開き、ミレアを驚愕の表情で見つめている。



 エルド・ドゥル・カイアリ

 ――勇気あるものよ 


 ………………

  ………………


 エルドリア・ド・ナリイ

 ――汝自身の内より 


 ルーヴ・ルーシル

 ――光を生み出せ


 エルダ・リオ・アラス・ティ

 ユーベルド・エルラ

 ――汝 再び 愛しき者の生を願うなら


 ドゥル・ユグドラ・ヴィ・ミーラ

 ミルレリア

 ――世界樹と女神の加護のもと 


 リシトゥーラ・シ・アンテーリ

 リィーアリア 

 ――その(いにしえ)言葉(じゅもん)を唱えよ



 レルアータ・エルラ! 

 ――命よ、循環(じゅんかん)せよ!


 ドゥル・ミルレリア・ヴィ

 ユグドラシル! 

 ――女神と世界樹の光と共に! 



 詠唱が成り、ミレアの力強い言葉と共に、世界が眩くばかりの新緑の光に覆われた。


 周囲のすべてが命に満ち溢れ、徐々に、倒れた二人が浮かび上がり、命ある者として舞い戻ってくる。


「「ミーア!!」」

「「アリシアさん!!」」


「にゃああ――!! ありがとにゃああ!!」

「ミレア殿! ありがとう!! 助かったぞっ!」


 元気いっぱいによみがえるミーアとアリシアさん。


「「やったあ!! よかったああ!!」」


 喜ぶ皆。



 しかし、すでにアルタインは再び黄金光のブレスを放ってこようとしている。


「まずい! エミリー! フルマナポーションを飲め!」


「トール!! 分かったわ!! 今度は全力の結界を張るわ!!」


 ――フルマナポーション


 以前、王都に旅立つ前に、ジーナさんとメアリさんから餞別としてもらった特別なマナポーションだ。

 世界樹の枝についていた葉を使い、錬金で作ってもらったもので、一瞬で魔力が全回復する貴重なポーションだ。

 これを10個貰っていて、ここぞというときのために今までずっと温存していたのだ。その1つをエミリーに飲んでもらう。


「みんな! もう一度防御だ!」

「「「おう!!」」」


「アクアスフィア!」

「アダマントフェンス!」

「朱炎の防壁!」

「大樹の守り!」

「蜘蛛糸の魔力壁!」

「ホーリーシールド!」

「海竜の竜巻にゃ!」


 再度俺たちは同様の防御スキルを発動させる。エミリーを除いては――。


 そしてエミリーが叫ぶ。


「防御結界Lv15――守護天使ガーディアンエンジェル!」 


 ほぼ全魔力を消費する、現在のエミリーの最高峰の防御結界スキルだ!


 天から輝く大天使が降りて来て、俺たちの頭上に浮かぶ。

 そして、俺たちの周りに強力なオーラを放つ結界を張る守護天使ガーディアンエンジェル

 圧倒的な防御の力を感じる。


「はああああああああああああ!!」


 魔力を振り絞るエミリー。



 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ――



 古代竜アルタインの黄金色のブレスが、再び俺たちに向かって襲ってくる。


 衝突する俺たちの防御スキルと黄金の光ブレス。


 再び一つ一つ、次々に破られて行く、俺たちの防御。

 そのたびに、少しづつ弱まって行く黄金光のブレス。


 そして、黄金の光のブレスが、エミリーの強力な結界に到達する。


 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ――


 攻めぎあう古代竜の黄金光ブレスとエミリーの防御結界―ガーディアンエンジェル!

 激しく揺れる結界と大部屋!


 そして、徐々に消えて行く黄金光のブレス。

 同時に、エミリーの結界も徐々に消え、守護天使も消えていった。


「や、やったわ!!」


「おおおお! やったぞ! エミリー!」

「にゃあああ! エミリーやったにゃああ!!」

「「やったー!!」」


 黄金光のブレスを、皆の力で防ぎ切ったのだ!


 驚愕の表情で俺たちを見つめる古代竜アルタイン。


「よし! みんな! 全員フルマナポーションを飲むぞ!」


「「「おう!!」」」


 一斉に魔力を全回復する皆。


 さあ! ここからは俺たちの全魔力をかけた、最高峰の攻撃の出番だ!


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