121話 A級ダンジョン迷宮主戦 ②
古代竜『アルタイン』が現れた。
「皆! いつもの一斉攻撃だ! エミリー! 結界を頼む!」
「「「おう!!」」」
皆が一斉に動き始める。
タイタン戦で皆の基礎レベルは100上がり、今は800になっている。実質レベルはユニーク装備で上乗せされているが、それでも1200くらいだろう。俺は装備の魔石効果が大きいので、実質レベルは1700くらいだ。
敵のレベルは2400。圧倒的な差がある。
こちらは人数が多いが、それでも状況はかなり厳しい。
俺は、女神の魔剣リヴァイアサンと女神の魔剣タイタンを手に、ニ刀流の構えをとる。
女神装備の魔石構成はバランス型にしているので、現在の俺の魔力値は1900くらいだ。
俺は考える。水魔法を中心に攻撃をするか。
敵のレベルは2400。厳しい数値差だが、魔剣リヴァイアサンと「水の紋章」装備の "水の威力補正" が高いのでなんとかいけるか!?
皆も、俺と同じように、それぞれ得意魔法の属性補正が高い装備を身に着けているので、レベル差がある割には攻撃が通るか!?
俺は高レベルの水魔法を使う。
「ウォーターノヴァ!」
ミーアも魔剣リヴァイアサンを掲げ、水のスキルを使う。
「ウォーターキャノン!」
凄まじい水の攻撃がアルタインに向かう。
「風竜召喚!」
ミレアが、魔杖グリフォンを掲げ、風魔法を使う。
「火竜召喚!」
イナリが、魔杖イフリートを掲げ、火魔法を使う。
「アダマントランス!」
リンは、魔剣タイタンを掲げ、土魔法の鋭いアダマンタイトのヤリをいくつも飛ばす。
「光の刃!」
アリシアさんが、剣技で光の刃を飛ばす。
「百線突き!」
シャンテが、アダマンタイトの糸を、高速で無数に繰り出す。
モフは、無数のライトボールを浮かべ、アルタインの頭付近に集中して向かわせる。
タイタン戦で使った初手の攻撃スキルだ。
「防御結界!」
エミリーは、いつものように結界を張って防御に専念する。
ドゴゴゴゴゴオオオオオオ――ン!
アルタインに俺たちの凄まじい一斉攻撃が当たる。
グォオオオ!
アルタインが悲鳴を上げる。
しかし、一斉攻撃の煙幕の中から現れたアルタインは、余裕の表情を見せている。
古代竜アルタインが、俺たちの心に語りかけてくる。
――どうした お前たちの力はそんなものか
――では 今度はこちらからいくぞ
敵は大きな口を開ける。口の中に光が見える。
まずい! 竜のブレスだ!
「ウインドシールド!」
「アースシールド!」
「ファイアーウォール!」
皆で防御系の魔法を使い、モフが空間バリアを張る。
エミリーが更に結界に力を籠める。
ゴォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ――!!
凄まじい竜のブレスが俺たちに向かって襲ってくる。
バリバリバリバリ パリィイ――ン!
ドオオオオオオオオ――ン!
「うわああああ――!!」
「にゃあああああ――!!」
「きゃあああ――!!」
「「いたあああ!!」」
気が付いたら、すべての防御とエミリーの結界が破壊され、俺たちは大部屋の端まで吹き飛ばされていた。
「…せ、世界樹の癒し!」
ミレアがなんとか皆を一斉に回復させる。
「ぼ、防御結界!」
再び結界を張るエミリー。
強い! しかもレベル差がありすぎる。なんとか敵を弱体化しないといけない。
俺は以前、C級ダンジョンのイレギュラー迷宮主「キングラビット」を相手に、モフと二人で戦ったときのことを思い出す。
あの時はレベルが倍近くある敵と戦った。決して倒せない相手ではないはずだ。
「モフ! 弱体化の光だ!」
モフが踊り出す。
弱体化の光がアルタインを包む。
――しかし。
パリィイイイーーン
弱体化の光は弾かれる。
くっ! やはり無理か。圧倒的な敵のオーラに弾かれたようだ。
よし、作戦変更だ。俺は事前に考えていた作戦を取る。
俺たちは、戦いの前にある作戦を皆で共有している。そしてそれぞれのメンバーのスキルも把握している。
「よし! 皆! 弱体化作戦だ!」
「「「おう!」」」
モフがライトボールを無数に浮かべて、敵の頭に向かわせる。
「ブラックアウト!」
無数のライトボールが敵の頭部に炸裂し、闇魔法の霧が敵の目の周囲を暗く覆う。
「――転移!」
ミーアとアリシアさんを率いて、隙ができたアルタインの頭上に転移する。
「これを喰らうにゃ!! 腐食の槍!!」
「ハアアアアア!! 呪いの骨大剣!!」
「くらえ! 呪いの勾玉!!」
俺たちは敵に、呪いの武器やアイテムを投げつける。
「――武器操り! 呪縛の牙!」
シャンテも糸で括り付けた呪いの短剣を操り、敵の硬い鱗の隙間を狙って器用に攻撃をする。
――――――――
呪いの骨大剣(武器:大剣)
・攻撃力(AR)19
・装備時、全能力値+30(幸運値除く)
・攻撃時、敵に呪い付与(大)
‥‥‥‥‥‥‥‥
腐食の槍(武器:槍)
・攻撃力(AR)19
・装備時、体力+50、筋力+50
・攻撃時、敵に呪い付与(大)
‥‥‥‥‥‥‥‥
呪いの勾玉(消耗品)
・投げつけると強力な呪いがかかる
・能力値減少、各種耐性低下、視界不良、呪毒、呪縛、回復阻止効果等
‥‥‥‥‥‥‥‥
呪縛の牙(武器:短剣)
・攻撃力(AR)14
・装備時、体力+20、筋力+20、敏捷+40
・攻撃時、敵に呪縛付与(大)
――――――――
GYAAAAAAAAAAAAAA!!
アルタインの悲鳴が聞こえる。
「よし! 今だ! 一斉攻撃だ!」
皆が動き出し、後衛の遠隔攻撃が始まる。
アルタインは呪いに罹り苦しそうに見える。
「にゃにゃにゃあああ!!」
「いけえええーー!!」
着地した俺たち前衛の攻撃も次々に当たる。
――しかし。
GUAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA――!!
凄まじい竜の咆哮が辺りに響き渡る。
「にゃああああ!!」
「ぐはっ!!」
「うおおお!!」
ミーアとアリシアさんと俺は吹き飛ばされる。
気づいたら、一番前方に出ていたミーアに向かって、竜の爪が襲い掛かっているのが一瞬見える。
「にゃ!? 盾にゃ!!」
ミーアが竜の爪を反射的に盾で防ごうとする。
「ぎにゃああああああああ!!」
ミーアの左腕が盾と一緒に吹き飛んだのが見えた。
「「「み、ミーアあああああ!!」」」
皆の顔が青ざめる。
「女神の大樹Lv8――エリクシル!」
ミレアが叫ぶ
すると、ミーアの失った左腕がみるみるうちに生えてきた!
「にゃあー! 左手が生えてきたにゃー! ありがとうにゃ!!」
ミーアは一旦後方へ飛び、結界内に逃れる。
GUAAAAAAAAAAAAAAA――!!
今度はアリシアさんに竜の爪が向かっていた。アリシアさんも反射的に盾で防ごうとする。
「ぐはっ!!」
一瞬でアリシアさんの左腕が、盾と一緒に吹き飛んでいた。
「「「あ、アリシアさあああーーん!!」」」
皆の顔が再び青ざめる。
モフがアリシアさんの近くに転移するのが見えた。
と同時に、アリシアさんの失った左腕のあたりに光が輝く。
――――――――
スキル:回復の光
――――――――
アリシアさんの失った左腕がみるみるうちに生えてくる。
‥‥‥‥‥‥‥‥
九首の耳飾り(ユニークアクセサリー:耳)
・装備時、全能力値+30
・付与スキル:猛毒ブレス
・付与スキル:回復の光
・自然回復(大)
‥‥‥‥‥‥‥‥
モフが装備していたヒュドラのユニーク耳飾りの付与スキル効果だ!
「あ、ありがとう! モフ殿!!」
アリシアさんは一旦後方に逃げ、エミリーの結界内に入る。
更にモフは転移し、アルタインの真横にいた。
――――――――
スキル:猛毒ブレス
――――――――
モフが敵に猛毒ブレスを放ったのが見えた。
アルタインの体が紫色に染まり始める。
GUAAAAAAA――!!
苦しそうに叫ぶアルタイン。
「ナイスだ!! モフ!!」
俺は叫ぶと同時に、敵の背後に転移する。
「石化毒のブレス!!」
アルタインの体に、石化毒のブレスが当たり、灰色に染まり始める。
コカトリスのユニーク首飾りの付与スキルだ!
‥‥‥‥‥‥‥‥
女神のヴァイパーストーン(ユニークアクセサリー:首飾り)
・装備時、魔力+15、精神+50
・付与スキル:石化毒のブレス
・毒耐性(大)
・石化耐性(大)
☆魔力+30
‥‥‥‥‥‥‥‥
アルタインの体の動きが鈍った気がした。
すぐさま転移して、一旦皆のもとに戻る。
「よし! 皆! 敵はかなり弱体化したはず! 一斉攻撃を続けるぞ!」
「「「おう!」」」
再びエミリーの結界の中から、遠距離攻撃を開始する皆。
GYAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!
アルタインに次々に攻撃が炸裂する。
「まだまだだ! 魔力を振り絞れ! 追撃の手を緩めるな!!」
「「「おう!!」」」
凄まじい一斉攻撃が続く。
皆はマナポーションを飲みながら、魔力を振り絞る。
俺は女神装備を魔力が上がる魔石に交換し始める。魔力を上げてとどめだ!
――しかし。
古代竜アルタインの全身から凄まじいオーラが立ち込める
GUAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA――!!
光輝くアルタイン!
徐々に、毒や石化に染まった身体の色が元通りになっていくのが見える。
信じられない思いで呆然となる皆。
俺の目はアルタインに釘付けとなる。
―――鑑定――
『アルタイン』 固有種
Lv2400 →2200
種族:古代竜(聖竜)
属性:光
スキル
・黄金光のブレス
・光のブレス
・竜の咆哮
・竜の爪
・光の回復
耐性
・物理耐性(大)→(中)
・魔法耐性(大)→(中)
・状態異常耐性(大)→(中)
―――――――
光の回復か!? 毒と石化が解かれたようだ。
しかし、良く見るとレベルと各種耐性が少し落ちている!
呪いが少しは効いているようだ!
だが、敵のスキル「黄金光のブレス」――これはやばそうな気がする。
俺がそう感じた瞬間に、アルタインが更に体を大きく震わせ始めた。
そして――竜の口を大きく開ける。
その口の中に黄金色の光が見える。そして徐々に大きくなってくる。
まずい! 非常にまずい気配がひしひしと伝わってくる。
黄金色の光からは、凄まじい破壊力を感じる。
皆も驚愕の表情で目を見開いている。
全身を大きく震わせるアルタイン。
その古竜の口から、眩いばかりの黄金の光のブレスが、放たれようとしていた。