119話 人造ゴーレム作り
ダンジョンオアシスの温泉から帰って来た。
引き続き、俺とシャンテはアイテム整理をする。
「あと、こんな物もありましたよ~。珍しいアイテムですねぇ~」
更に、アイテムを取り出し作業台に並べるシャンテ。
~~~鑑定~~~
【闇の錬金術師のユニークアイテム】
アルケミストスター(アクセサリー:指輪)
・装備時、魔力+30、幸運値+50
・錬金術Lv+2
・錬金時、クリティカルが出やすい
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【ダークスミスのユニークアイテム】
闇鍛冶師の金槌(魔道具:鍛冶用金槌)
・装備時、体力+30、筋力+30、敏捷+40、幸運+40
・鍛冶スキルLv+1
・鍛冶時、クリティカルが出やすい
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【アンデッドゴーレムのユニークアイテム】
不死の心臓(魔道具:部品)
・ゴーレムの生命力の源
・人造ゴーレムの製作に必須
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「おおお! これも凄い!!」
生産職の人にとって、きっと喉から手が出るほど欲しがるに違いないアイテムだ。素晴らしい性能だ!
俺は考える。
「アルケミストスター」は、フォレスタの街の魔法具屋にいるメアリさんにプレゼントしたいものだ。
そして、錬金術のレベルが上がることにより、メアリさんにもっとすごいアイテムの作製依頼をしたい。
特に、これからの戦いにおいて、やはりエミリーの結界の力が重要になると思う。俺たちの守りの要はエミリーだ。
以前、エミリー用の結界の杖を作ってもらったが、もう一つ何か結界魔法のレベルが上がる装備を作って貰いたいものだ。
そして、エミリーに加えてミレアも重要だ。俺たちのパーティーの中でもミレアは特別な存在だ。世界樹の癒しなどで皆を一気に回復出来るのは心強い。
また、あまり考えたくはないが、万が一誰かが死亡した場合、ミレアのエルフの秘儀――ユニークスキル「女神の大樹」(世界樹の光)で生き返らせることも出来るのだ。
エミリーとミレアが崩れなければ、俺たちは安心して戦うことが出来る。
メアリさんやジーナさんに相談して、錬金術でエミリーとミレア用に有効な装備やアイテムを作ってもらうとするか。
闇鍛冶師の金槌も、鍛冶師にとって、すばらしい魔道具だと思う。
そう言えば、以前A級ダンジョンのサイクロプスから入手したユニークアイテムの「ヘパイトスの鍛冶腕輪」も素晴らしい性能の腕輪だったな。
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ヘパイトスの鍛冶腕輪(ユニークアクセサリー:腕)
・装備時、体力+10、筋力+10
・鍛冶スキルLv+2
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この2つを合わせると、鍛冶スキルのレベルが一気に3も上がる。より有効なアイテム製作ができるのではないかと思う。
俺たちのメンバーは鍛冶は出来ないが、信頼できる鍛冶師に装備させて、何か高性能な装備や物を作ってもらうという手もあるな。素材も希少で珍しい物がいろいろとあるしな……。
フォレスタの街の鍛冶師、バッカスさんのことが頭に浮かぶ。俺たちの知り合いで、頼れそうな鍛冶師だ。
俺が考え込んでいると、シャンテが話かけてくる。
「トールさん、この『不死の心臓』は私のおじい様に見せたいのです~。確かおじい様は人造ゴーレムの製作にも興味があるのですよ~」
人造ゴーレム? なんだかよくわからないがおもしろそうだ。それにちょうど「ヒヒイロカネ鉱石」についても彼に見せてみたいと思っていた。
「おう、分かった、シャンテー。じゃあこれからパスカルさんのところに行ってみるかー」
こうして、俺とシャンテはパスカルさんの別邸に行くことにした。敷地内にあるのですぐだ。
リンとアリシアさんが暇そうだったので、声をかけて4人で連れだって行く。
◇
パスカルさんの別邸内の作業場に入る。
「おじい様~。おはようございます~。今日はおじい様に見せたいものがあるので来ましたよぉ~」
パスカルさんは相変わらず作業に熱中しているようだったが、シャンテの声に反応する。
「……おおっ? シャンテか! それに皆も。……見せたいものじゃと!?」
少し興味を惹かれた様子のパスカルさん。
「はい、おじい様。これですよ~」
シャンテが「不死の心臓」を取り出してパスカルさんに渡す。
「んん~? これは……」
パスカルさんはその物体をじっと見つめる。
「――なっ! こ、これは!? ゴーレムの心臓ではないか! ど、どこでこれを手に入れた!?」
血相を変えるパスカルさん。随分興奮しているようだが、その目には喜悦の色が見える。
「あ~、A級ダンジョンのとある部屋でアンデッドゴーレムが落としたものなのです~」
「な、なんと! そうじゃったか……こ、これを使えば……夢にまで見た人造ゴーレムの製作が可能になるかもしれない……!」
なんだが良く分からないが、パスカルさんはとても嬉しそうだ。
俺はついでにヒヒイロカネ鉱石をアイテムボックスから取り出して、パスカルさんに見せる。
巨大な鉱石を、部屋の中央の大きな作業台に置く。
「……なっ! こ、これは!? ヒヒイロカネの鉱石ではないか!」
更に驚き、興奮するパスカルさんだった。
パスカルさんの話によると、硬い鉱物で人工的にゴーレムの体を作り、この「不死の心臓」をはめ込むと、自由に動けるゴーレムが出来るとのことだった。
そして、シャンテの持つレアスキル「ゴーレム操り」で、人造ゴーレムを糸で自由に操り動かすことが出来るそうだ。条件としては、そのゴーレムの材質と同じ糸でなければ操れないが、シャンテはすでに様様な素材から糸を作ることが出来るので問題ない。
人造ゴーレムは、主に都市を魔物の大軍などから守るために、ぜひとも作りたかったとのことだった。
巨大な人造ゴーレムをたくさん作るためには、多くの鉱石が必要になる。また、上質の鉱石であればあるほど、強い人造ゴーレムができるとのこと。
王都の裁縫ギルドには人材も多く、シャンテと同じく、レアスキル「ゴーレム操り」を持っている人も結構いるとのことだ。裁縫ギルドの精悦メンバーで、何体もの人造ゴーレムを操り、都市を守る。素晴らしい構想だ。さすがパスカルさんだ。
民を守るにはやはり軍事力が必要だ。フォレスタの街や王都も、先日魔物の集団に襲われた。
また次の襲来に備えることは大事だと思う。
俺は思い出す。4年半ほど前に偶然耳にした両親の言葉。魔王の再来が近づいている兆しがあることを――。
魔王が攻めて来るのなら、魔物の大軍を引き連れて来るだろう。圧倒的な数は暴力だ。
その魔物の数に対抗できるように、事前にいろいろと準備が必要だな。
俺たちは、パスカルさんに協力することにした。
在庫のミスリルやアダマンタイトの鉱石を、出来るだけたくさん取り出し、パスカルさんに預けることにしたのだ。
パスカルさんは、アダマンタイトの鉱石を見て、驚きと共に、大変喜んでくれた。
人造ゴーレムについて、パスカルさんが言うには、ゴーレムの体の大部分はミスリル鉱石で作り、表面はより上質なアダマンタイトなどの鉱石で固める。そして、最終的にはヒヒイロカネ鉱石を高純度に加工したものを、コーティングすれば、かなり硬く丈夫な人造ゴーレムが出来るとのことだ。
だが、パスカルさんは思案気な顔つきをしている。
「う~ん、ヒヒイロカネの鉱石は、さすがにわしじゃ加工出来ないのじゃ……。誰か高レベルの鍛冶師でもいればいいのじゃが……」
残念そうに言うパスカルさん。
俺は考える。なるほど……そういうことならば、バッカスさんにヒヒイロカネ鉱石の加工を頼むとするか。
ちょうどいいことに、鍛冶師のレベルを上げる装備と魔道具ならこちらにある。
よし! 決めた! バッカスさんのところに行って、この鍛冶師専用のユニークアイテムをプレゼントする代わりに人造ゴーレムの製作に協力してもらおう! きっとバッカスさんならこの提案に喜んで飛びつくに違いない。
「パスカルさん、信頼できる鍛冶師に心当たりがありますので、加工についてはお任せください」
「おお! そうか! トールさん、それは助かる! よろしく頼むのじゃ!」
人造ゴーレムが完成するには、かなり時間がかかりそうだ。気長に待つことにしよう。出来上がるのが楽しみだ。
「おお、そうじゃ! 話は変わるが、先日の銀の魔鉱石とミスリルのインゴットのおかげで、スマーフォの性能が上がったのじゃ! 今はまだ、試作品の段階だが、飛躍的に通話距離が伸びたのじゃ! これを持っていくといい。新作スマーフォ7台じゃ。まだ王家の許可が下りてなく一般に販売することは出来ないが、知り合いにあげる分には問題ない。ぜひ活用してみてくだされ」
「おお! 新作スマーフォですか! ありがとうございます!」
「パスカルさん! ありがとうございます! お兄ちゃん、やったね!」
「な、なんと、新作スマーフォをいただけるのか……パスカル殿、かたじけない!」
「いやいや、こうしていろいろと貴重な鉱石を提供してくれてるし、人造ゴーレム作りに協力してくださっているのじゃ。こちらの方こそ有難いのじゃ」
こうして俺たちは、人造ゴーレムの開発に協力することにしたのだった。