116話 階層主⑥ 土
41階層の階層主――タイタンが現れた。
その体は、まるでアダマンタイトのような硬い岩で覆われているかのようだ。皮膚はやや赤く光沢がある。かなり防御力がありそうだ。
タイタンを見ていると、自然と鑑定機能が発動し、敵のスキルが見えてきた。
―――鑑定―――
タイタン Lv1600
・土魔法Lv12
・無数岩弾
・大岩落とし
・大砂嵐
・大地の怒り
・体力強化
――――――――
スキルも強そうだ。注意しないといけない。
タイタンの属性は土だが、なんの属性の攻撃が効くかいまいちよく分からない。
とりあえず、それぞれ皆の得意の属性攻撃でいくか。皆に任せよう。
俺とミーアは水魔法で攻撃だ。まずは遠距離攻撃からの開始となる。
「よし! 皆! 先手必勝だ! いつもの一斉攻撃だ!」
「「「おう!!」」」
皆が動き出す。
俺は女神の魔剣リヴァイアサンを掲げて、水魔法を全力で使う。俺の魔力は2200を軽く超えている。
「ウォーターノヴァ!」
ミーアも魔剣リヴァイアサンを掲げ、水のスキルを使う。
「ウォーターキャノン!」
凄まじい水の攻撃がタイタンに向かう。
「風竜召喚!」
ミレアが、魔杖グリフォンを掲げ、風魔法を使う。
「火竜召喚!」
イナリが、魔杖イフリートを掲げ、火魔法を使う。火竜召喚は初めて見る技だ。
「ロックランス!」
リンは、土魔法の鋭い岩のヤリをいくつも飛ばす。
「光の刃!」
アリシアさんが、剣技で光の刃を飛ばす。
「百線突き!」
シャンテが、アダマンタイトの糸を、高速で無数に繰り出す。
モフは、無数のライトボールを浮かべ、タイタンの頭付近に集中して向かわせる。
「防御結界!」
エミリーは、いつものように念のために結界を張って防御に専念する。
ドゴゴゴゴゴオオオオオオ――ン!
タイタンに俺たちの凄まじい一斉攻撃が当たる。
グォオオオオオオオオオオオ!!
タイタンが悲鳴を上げる。
しかし、一斉攻撃の煙幕の中から現れたタイタンは、ボロボロになりながらも、目はまだ生きていた。凄い体力だ。
その目は怒りで燃えているように見える。
ウォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ――!!
タイタンが叫ぶと同時に、無数の岩の塊が現れ、すごい勢いでこちらに向かってきた。
危ない!
「「ウインドシールド!」」
「アースウォール!」
「ファイヤーウォール!」
皆が一斉に、防御系魔法を使う。
モフも空間バリアを張る。
バリバリバリ――バキィイイイイイ――ン!
ほとんどの防御魔法が破られ、エミリーの結界が激しく揺れる。凄まじい岩の攻撃だ。
ウォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ――!!
更にタイタンは、両手を上にあげながら天井に向かって吠える。
すると、大部屋の上から巨大な岩が無数に落下してきた。
まずい!
「ウォーターノヴァ!」
俺は広範囲高威力の水魔法を上空に向けて放ち、落下してくる岩の群れを迎え撃つ。
「水のブレスにゃ!」
「ウインドハリケーン!」
ミーアとミレアも加勢してくれる。
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!
落下してくる岩の群れは、水と風の力により、吹き飛ばされる。
しかし、更にタイタンは別の攻撃をしてこようとしている。
タイタンの体から、凄まじい砂嵐が発生し、こちらに向かってきた。
「魔鉱の土壁!」
リンが土魔法の強力な土壁を大きく展開する。
ゴゴゴゴゴ――バリバリバリ――
砂嵐はリンの土壁に衝突する。そして徐々に土壁が削れ壊れていく。
「ウォーターノヴァ!」
「海竜の竜巻にゃ!」
リンの土壁が壊れた瞬間に、俺とミーアで砂嵐の攻撃を迎撃する。
ゴゴゴゴゴゴゴ――ドォオオオオオ――ン!
砂嵐を押し戻し、タイタンの体に俺とミーアの水の力が衝突する。
ウォオオオオオオオオオオオオオオ!
怒り狂ったタイタンが、地面を足踏みし始める。巨大な両足だ。
ドーン! ドーン! ドーン!
地面が盛り上がり、波のように俺たちに押し寄せて来る。
――大地の怒りか!?
パリイイイーン!
エミリーの防御結界の壊れる音がした。
気が付いたら俺たち全員が、宙に放り出されていた。
「うあっ!」
「ぎにゃあああ!」
「痛い!」
「くっ!」
地面に叩きつけられる俺たち。
足元から激しい大地の震動波が伝わってきたのだ。
体中が痛い。
「うっ……せ、世界樹の癒し!」
なんとかミレアが、全体回復魔法をかけてくれる。俺たちは復活する。
しかし、またタイタンは巨大な足で地面を叩きつけるように足踏みを始める。
地面が波打ち、再び土の衝撃波が俺たちに襲い掛かってくる。
「モフ! 地面の上に空間バリアを頼む!」(にゃー!)
地面の上に平行にモフの空間バリアが出来る。
「皆! ジャンプだ!」
風のブーツの力で皆でジャンプして、大地の怒りを避ける。
パリィイイイーーン!
モフの空間バリアが壊れ、大地からの衝撃波はなんとか減少する。
着地する俺たち。
あの足踏みからの攻撃は、かなり厄介で脅威だな。
俺は考える。タイタンの動きを封じる必要がある。
モフの「熾天使の光柱」やシャンテの「ツインマリオネット」でいけそうか?
いや、敵はかなりの巨体だ。少し難しそうだ。
俺は更に考える。なんとかタイタンを転ばせることが出来ないかと。
俺の思考を読み取ったのか、モフが光魔法を使ったようだ。
光魔法――ライトバインド
タイタンの右足に光の縄が巻き付けられた。
それを見たシャンテが叫ぶ。
「操糸術――拘束の糸!」
シャンテの手から、アダマンタイトの糸が、螺旋状の束となり放出される。
その糸は、タイタンの右足に絡まり、モフの光の縄と一緒に、更に強く拘束する。
「土魔法――地形変化!」
リンが叫ぶ。
タイタンの左足の下の地面が高く盛り上がっていく。
右足は拘束されているので、タイタンはバランスを崩す。タイタンの体が右側にゆっくりと傾いていく。
ドォオオオオオ――
タイタンが大きな音を立てて倒れた。
「ナイスだ! モフ! シャンテ! リン!」
「ファイアーノヴァ!」
イナリが倒れたタイタンに猛烈な炎攻撃をする。
「火竜召喚!」
俺もイナリに合わせて、魔杖イフリートを握りしめ火魔法を使う。
更にミレアが風魔法で、イナリと俺の炎攻撃を後押しする。
グゥアアアアアアアアアアア!
叫ぶタイタン。タイタンの硬い身体が赤く染まる。
「よし! 今度は水魔法と冷気魔法だ!」
俺とミーアで最大級の水魔法でタイタンを攻撃する。
「ウォーターノヴァ!」
「水のブレスだにゃ!」
他の皆は、今度はフロストリング付与の冷気魔法などで攻撃する。
「「アイスボール! フリーズストーム!」」
「フローズンスラッシュ!」
以前、アダマンタイトゴーレムを倒したときのやり方だ。熱と水(冷気)の急激な温度差で、硬い岩の体が脆くなるのを利用する。
熱したタイタンの体が、急に冷えて水蒸気が激しく立ち上る。
「よし! 剣攻撃だ! 一気に行くぞ!」
タイタンはまだ立ち上がれてない。
俺とミーアが、魔剣リヴァイアサンを持ち突撃する。
リンが魔剣ラーフィンを持ち突撃する。アリシアさんも聖剣ルナレスと盾を持ち突撃する。
「「――鉱破斬!!」」
硬い鉱物系の魔物に対して特効をもつ剣技だ。
――チリン チリン チリン
モフの鈴の音が3度鳴り、俺たちの幸運値は8倍にはね上がる。
「うおおおおお!!」
「にゃにゃにゃにゃあああああ!」
「「ハァアアアアア!!」」
ドバババ――ン! ドバババ――ン!
剣技がすべてクリティカルになる。
グゥアアアアアアアアアアア!
ピシッ――ピキッ――
タイタンの体に亀裂が走る。
更に俺たちの攻撃は続く。
ガキイイイイイイーン!
タイタンの体の一部がひび割れて砕け散る。
グォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!
そして、ついにタイタンの断末魔の悲鳴が、辺り一面に響き渡った。
ボス部屋が激しく揺れる。
徐々に、徐々に、霧のように消えて行くタイタン。
――天から声が聴こえて来る。
≪階層主『タイタン』を討伐しました≫
≪パーティーメンバーのレベルが上がりました≫
≪パーティーメンバーのレベルが上がりました≫
≪パーティーメンバーのレベルが上がりました≫
≪パーティーメンバーのレベルが上がりました≫
・
・
≪パーティーメンバーのレベルが上がりました≫
経験値が体に流れ込んでくる。
――繰り返す天からの声
≪パーティーメンバーのそれぞれに特別ボーナスとしてSPが与えられます≫
≪従魔モフミィの光魔法のレベルが上がりました≫
――ドスン、ドスン
≪タイタンの通常アイテム『ヒヒイロカネ鉱石』をドロップしました≫
――コロン
≪タイタンのレアアイテム『土の紋章』をドロップしました≫
――コロン、コロン
≪タイタンのユニークアイテム『魔剣タイタン』をドロップしました≫
≪タイタンの上位ユニークアイテム『女神の魔剣タイタン』をドロップしました≫
「や、やった、みんな! やったぞ!!」
「にゃにゃにゃ――! やったにゃあああ!!」
「やったのじゃあああ!!」
「「おおお――!」」
「「やった――!」」
こうして俺たちは、階層主タイタンを倒し、勝利の雄たけびを上げるのだった。