114話 階層主⑤ 火
朝が来た。
昨日は39階層の階層主、リヴァイアサンを倒した。
ドロップアイテムの詳細を確認する。
~~~鑑定~~~
リヴァイアサンの鱗(素材)
・希少素材
・武器防具、錬金など様々な用途に有効
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水の紋章(レアアクセサリー:胸)
・装備時、全能力値+30
・水の威力+15%
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魔剣リヴァイアサン(ユニーク武器:剣)
・攻撃力(AR)30
・装備時、全能力値+60
・剣術Lv+2
・水魔法Lv+3
・水の威力+30%
・付与スキル
水撃砲
水のブレス
海竜の竜巻
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女神の魔剣リヴァイアサン(ユニーク武器:剣)
(同上)
・空間ソケット《3》
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リヴァイアサンの魔石(全能力値+40、水耐性向上)
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魔剣リヴァイアサンの性能が強烈すぎる。水魔法のレベルがなんと3も上がり、威力も3割増しだ。攻撃力(AR)もついに破格の30に達した。
また、能力値上昇も素晴らしく、付与スキルが3つもついている。それぞれが、リヴァイアサンの持っていたスキルのようだ。これは凄すぎる。
今回、魔剣リヴァイアサンは、ミーアに渡すことにした。ミーアは大喜びだ。
遠距離攻撃の手段に乏しかったミーアだが、この剣の付与スキルにより遠距離の水の攻撃が出来るようになる。今後の攻撃の幅が広がり、更にミーアが強くなった。いいことだ。
ミーアの標準武器が、魔剣ラーフィンから魔剣リヴァイアサンに変更になったことにより、魔剣ラーフィンは、リンに持ってもらうことになった。
パーティーメンバーの基礎レベル+10%の効果があるので、誰かが持っている必要がある。それに、魔剣ラーフィンは高性能だ。リンも大喜びだ。
アリシアさんは聖騎士ゆえに魔剣を装備できないので、本人はちょっと残念そうにしていた。そのうちいい聖剣でも出ればアリシアさんに渡したいものだ。
俺の剣も、「女神の魔剣リヴァイアサン」に変更した。やはり効果が素晴らしすぎるのだ。
俺はSPを使い水魔法のレベルを一気に8まで上げた。現在装備中のスマラカタル(ユニーク指輪)に4属性魔法Lv+1が付与されているので、これで俺の水魔法のレベルは12となった。今後、風魔法に加え、水魔法も俺の主力の魔法となる。
レアアイテムの「水の紋章」(胸ブローチ)は、俺がもらうことにした。これで更に水魔法の威力が増すことになる。いい感じだ。
元々俺が付けていた「兎王の勲章」(胸ブローチ)は、代わりにシャンテに装備してもらうことにした。うさぎの絵柄が付いている勲章は、なんとなくシャンテに似合っていた。シャンテも気に入ったようで喜んでいた。
これで現在、胸のアクセサリー(ブローチ)を付けていないメンバーは、ミーアとイナリとモフになる。今後何かいい胸アクセサリーが出ることを期待しよう。
また、リヴァイアサンの魔石も高性能だ。当然この魔石も女神装備のソケットに入れた。
さて、今日は40階層にあるボス部屋へ挑むことになる。
昨日、リヴァイアサンを倒した後に、湖を迂回してボス部屋の先に出来た扉をくぐると、以前と同じように魔物の出ない洞窟になっていた。そのまま進むと、またボス部屋の扉に行き当たったのだった。
一体A級ダンジョンは何階層まであるのだろうか……。ダリアさんが夢に見た祭壇のある部屋。そこにたどり着くことを目指して俺たちは進む。
皆が集まり次第、40階層のボス部屋の前に転移する。
「よし、皆! 気を引き締めていこう!」
「「「おう!!」」」
ここのところほぼ同じパターンで階層主戦が続いている。
風のグリフォンの後に、水のリヴァイアサンが現れた。
今度は、なんとなく、火属性か土属性の階層主が現れるような気がする。
俺は、事前に魔力が上がる魔石を中心に、ソケットに入れ変えた。
レベルが上がり、更に装備も充実したため、俺の魔力値は1800を軽く超えている。凄まじい魔力だ。
最近、やや危ない展開が続いている。今度こそ、先手必勝で、一気に魔法攻撃で倒すつもりだ。
扉の横にある台座の水晶玉に魔力を少しそそぐ。
ゴゴゴゴゴゴゴゴ――
扉が大きな音をたてて開く。
俺たちは息をのみながら扉をくぐる。
後ろで、再び大きな音とともに扉が閉まって行く。
中は、再びドーム型の巨大な広間になっていた。
広間の周りに篝火がたくさんあり、怪しげに揺らめいている。
広間の中央に霧のようなものが立ち込めてくる。
――そして、その霧は次第に、巨大な魔物の姿となって現れてきた。
「こ、これは――!」
「にゃっ! 真っ赤だにゃ!」
「炎の魔人なのじゃ!」
「あ、熱いぞ!」
真っ赤に燃える大きな人型の魔物が現れた。宙に浮いている。
天から声が聴こえてくる。
≪階層主、イフリートが現れました≫
≪イフリートのレベルは1400≫
――繰り返す天からの声
階層主――イフリート! レベル1400!
鬼のような人型の魔物。その体は真っ赤な炎に包まれて燃え上がっている。
爛々と光る金色の目。圧倒的な炎のオーラを放っている。
―――鑑定―――
イフリート Lv1400
・炎の魔人
・強い炎の力をまとっている
・強力な火魔法、炎の力の攻撃をしてくる
・魔力が高い。
――――――――
ウォオオオオオオオオオオオオオオオオオ――!!
凄まじい声を上げるイフリート。
俺は瞬時に判断する。イフリートは完全に火属性の魔物だ。
水の攻撃が効くはずだ。冷気魔法も有効そうだ。ミレアは風魔法の威力が突出してるので風魔法でもいいかもしれない。
「皆! 敵の属性は火だ。俺とミーアが水の攻撃をする。その後に続いてくれ! 全力で一気にけりをつけるぞ!」
「「「おう!!」」」
皆が動き出す。
敵は宙に浮いているので、遠距離攻撃だ。
俺は女神の魔剣リヴァイアサンを掲げて、水魔法を全力で使う。こちらの魔力は1800を軽く超えている。
「水魔法Lv12――ウォーターノヴァ!」
ミーアも魔剣リヴァイアサンを掲げ、水のスキルを使う。
「海竜の竜巻! 水のブレス!」
凄まじい水の攻撃がイフリートに向かう。
俺とミーアの水の攻撃の後に、皆の攻撃が続く。
「風竜召喚!」
ミレアが、魔杖グリフォンを掲げ、風魔法を使う。
「アイスボール! フリーズストーム!」
イナリは、冷気魔法を使ったようだ。いい判断だ。
「フローズンスラッシュ!」
アリシアさんは、氷の刃が飛び出す騎士剣術を使ったようだ。初めて見る技だ。
「氷結の網糸!」
シャンテは、氷の力が付与されている網糸の攻撃をしかけたようだ。これも初めてみる操糸術の技だ。イフリートに対しては有効な攻撃だと思われる。さすがシャンテだ。
「ロックランス!」
リンは、鋭い岩のヤリを飛ばしている。高レベルの土魔法だろうか。当たれば痛そうだ。
「氷の結界!」
エミリーは、念のために結界を張っている。この結界は初めて見るな。炎の攻撃に対して有効そうだ。
ビュウウウウウウウウウウ
モフが、スキル「冷気の霧」を使う。久しぶりに見る大技だ。
ゴオオオオオオオオオオオオオオオオ――
俺たちの攻撃に対して、イフリートは凄まじい炎の攻撃をしてきた。
しかし、俺とミーアの全力の水の攻撃が、敵の炎をかき消す。
ボゥウウウウウウウウウ――ン!
激しい水蒸気が舞い上がり、水の攻撃がイフリートに衝突する。
更に、皆の攻撃が一斉に、追撃となって敵に炸裂する。すさまじい攻撃だ。
ウォオオオオオオオオオオオオオ!!
イフリートの苦痛の叫び声が聞こえる。
「水竜召喚!」
「ウォーターキャノン!」
更に俺とミーアが水魔法で追撃する。
巨大な水竜が水のブレスを吐きながらイフリートに衝突する。
ミーアの持つ魔剣リヴァイアサンから飛び出した水撃砲がイフリートの胸を貫く。
ウォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!
そして、イフリートの断末魔の悲鳴が、辺り一面に響き渡った。
俺たちの先手必勝の怒涛の攻撃により、徐々に霧のように消えて行くイフリート。
――天から声が聴こえて来る。
≪階層主『イフリート』を討伐しました≫
≪パーティーメンバーのレベルが上がりました≫
≪パーティーメンバーのレベルが上がりました≫
≪パーティーメンバーのレベルが上がりました≫
≪パーティーメンバーのレベルが上がりました≫
・
・
≪パーティーメンバーのレベルが上がりました≫
経験値が体に流れ込んでくる。
――繰り返す天からの声
≪パーティーメンバーのそれぞれに特別ボーナスとしてSPが与えられます≫
――コロン、コロン
≪イフリートの通常アイテム『イフリートの炎輪』をドロップしました≫
――コロン
≪イフリートのレアアイテム『火の紋章』をドロップしました≫
――コロン
≪イフリートのユニークアイテム『魔杖イフリート』をドロップしました≫
≪イフリートの上位ユニークアイテム『女神の魔杖イフリート』をドロップしました≫
「や、やった、みんな! やったぞ!!」
「にゃにゃにゃ――! やったにゃあああ!!」
「やったのじゃあああ!!」
「「おおお――!」」
「「やった――!」」
こうして俺たちは、階層主イフリートを倒し、勝利の雄たけびを上げるのだった。