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108話 階層主②


 朝が来た。


 皆も集まっている。


 さて、今日は37階層にあるボス部屋へ挑戦することになる。

 更にダンジョンの深層へと向かうのだ。

 

 高揚感が高まる。恐怖と好奇心が同居している感覚だ。

 皆も、武者震いしているようだ。


 

 昨日到達した37階層のボス部屋の前へ、転移する。


「よし、皆! 気を引き締めていこう!」


「「「おう!!」」」


 扉の横にある台座の水晶玉に魔力を少しそそぐ。


 ゴゴゴゴゴゴゴゴ――


 扉が大きな音をたてて開く。

 俺たちは息をのみながら扉をくぐる。

 後ろで、再び大きな音とともに扉が閉まって行く。


 周りを見回すと、そこはドーム型をした洞窟の大広間だった。

 壁や天井は岩で覆われ、地面は泥沼のような土だ。所々に薄赤く光る岩があり、辺りを薄暗く照らしている。


 広間の奥の方に、巨大な魔物の姿が、徐々に現れてくる。 


 そして、その姿が朧気に見えてきた。


「こ、これは――!」

「にゃっ! 大きいにゃ!」

「ぶ、不気味なのじゃ!」

「だ、大蛇か!?」


 俺たちは驚愕する。巨大な蛇のような不気味な魔物だ!



 天から声が聴こえてくる。


≪階層主、ヒュドラが現れました≫


≪ヒュドラのレベルは1000≫


 ――繰り返す天からの声


 階層主――ヒュドラ! レベル1000! 


 俺たちは信じられない思いで呆然となる。


 やがて、薄明りの広間の中で、その階層主の全貌が明らかになる。


 巨大な胴体は、大蛇そのものだ。その胴体から大きな蛇の首がいくつも伸びている。


 そしてその首はなんと九つもあった。九つの頭を持つ蛇の魔物。不気味だ。


 圧倒的で不気味なオーラを放っている。


 それぞれの蛇の頭に、赤く爛々と輝く二対の目。大きく開いた赤い口に鋭い牙。



 SYAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA――!!

 

 九つの蛇の口から、凄まじい声を上げるヒュドラ。

 俺たちは震撼する。



―――鑑定―――

ヒュドラ Lv1000

・九つの頭を持つ蛇の魔物

・猛毒のブレスを放つ

・強力な噛みつき攻撃にも注意

・中央の首に蘇生能力がある

――――――――  


「皆! 猛毒に気を付けろ! 前衛は盾を構えて防御態勢だ! エミリー! エルフの結界を頼む!」


「「おお!!」」

「了解!」


 皆の装備しているヴァイパーストーン(ユニーク首飾り)には、一応、毒耐性(大)が付与されている。しかし、ヒュドラの猛毒にどれだけ耐えられるのかは分からない。

 一旦、結界の中に退避だ。


 エミリーがエルフの結界を張る。


 前衛も含めて、皆が結界にこもる。


「よし! 遠隔で一斉攻撃だ!」


 結界の中から、いつもの一斉攻撃をする。


 イナリの、多数の大狐火。ミレアの風魔法。シャンテの蜘蛛糸の網と紫電。

 モフの無数のライトボール。

 アリシアさんが、騎士剣の光の刃を飛ばす。

 ミーアは、予備のユニーク武器を投擲する。

 

 そして俺は、風魔法レベル10の風竜を召喚して敵に向かわせる。


 敵に炸裂して、炎や光の煙が上がる。


 GYAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA――!!


 敵の叫び声がボス部屋に響き渡る。


「や、やったか?」

「うむ、良く見えないのじゃー」


 一斉攻撃の後の煙や霧が晴れる。


 すると、そこには傷だらけのヒュドラがいた。そしてよく見ると首が2つほど切れて無くなっていた。


「にゃ! やったにゃ!」

「おお、首が減ってるぞっ!」


 一斉攻撃が効いたようだ。



 ――しかし、その時。ヒュドラの中央の首の頭が光った。

 すると、切れて無くなっていた2つの首が、胴体からみるみるうちに生えてきた。


「と、トール! 首が復活してるわ!」

「ほ、ほんとにゃ!」


 更に、胴体の傷も徐々に、治っていく。


 俺は鑑定で出ていたヒュドラの能力に思い当たった。


「皆! 真ん中の首の頭に蘇生能力があるぞ! 狙うのは中央の首だ!」


「「「了解!」」」


 皆が叫んだときだった。

 

 復活したヒュドラのすべての頭の口から、濃い紫色のブレスが放たれた。


 ビュウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウ


「ウインドシールド!」

「アースウォール!」

「ファイヤーウォール!」


 慌てて皆でシールドを張る。


 3種類のシールドによって阻まれるヒュドラのブレス。

 シールドの隙間から、ブレスが入ってくるが、エミリーの結界によって完全に遮られる。


 しかし、ヒュドラが凄い勢いで、突進してきた。


 バリバリバリ――


 シールドが破れ、気が付いたらヒュドラがかなり接近していた。

 そして、9つの蛇の頭が牙をむいて、こちらに向かってこようとしている。


 まずい!

 エルフの結界は、基本的には状態異常を防ぐ結界で、物理攻撃に対しては防御効果はあまり高くない。


「シールドバッシュ!」


 俺はヒュドラの胴体にシールドバッシュの攻撃を入れる。


 一瞬、硬直するヒュドラ。


 更に、ミーアとアリシアさんも、俺に続き、追撃のシールドバッシュを敵の胴体に時間差で入れる。


 しかし、胴体は止まっているが、9つの首はゆっくりと動いていた。


 そのうちの1つの蛇の口が大きく開き、強烈なブレスが放たれようとしていた。


 まずい!


 慌ててバックステップで、エミリーの結界内に逃げる俺たち。


 ビュウウウウウウウウウウウウウウ


「にゃ…………」

「くっ…………」


 しかし、ミーアとアリシアさんの動きが少し遅かった。


 結界に入る前に、ブレスに巻き込まれる2人。


 盾である程度防いでいるように見えたが、完全ではないようだ。


 みるみるうちに体が紫色に染まっていく、ミーアとアリシアさん。


「皆! 解毒魔法だ!」


「「おう!!」」


 一斉に皆で、ミーアとアリシアさんに解毒魔法をかける。


 俺も解毒魔法をかけながら、エメラルドポーションを2人にかける。


「う……く、くるしい……」

「にゃ……きつい……にゃ……」


 なんとか動けているようだが、まだ苦しそうだ。


 まずい! 物凄い猛毒だ。


 九つの蛇の頭が牙をむき、一斉にこちらに迫ってくる。


 モフが空間操作で、エルフの結界の周りに、透明な空間の壁を作った。

 更に、シャンテが、大きな蜘蛛糸の網を張って、結界を守る。


 蛇の牙の攻撃は、とりあえずは、空間の壁と蜘蛛糸の網によって防がれた。


 ミレアが叫ぶ。


「――世界樹の癒し!」


 ミーアとアリシアさんに眩しく光る霧が降り注ぐ。


 徐々に顔色が良くなっていく2人。


「にゃ……にゃんとか、回復したにゃ……」 

「ふぅ……楽になった。ありがとう、ミレア殿」


 さすがミレアのユニークスキルだ。世界樹の加護を持つスキルはすごい効果だ。



 バリイイイイイ――ン! 

 パキィイイイン!


 モフの空間の壁が破れる音がし、シャンテの網の糸も切れる。


 9つの蛇の頭がこちらを向いていた。そして、一斉に牙を向き、エルフの結界に迫ってくる。


 まずい!


 俺は瞬時に思い出す。自分が付けているユニークアクセサリーだ。

――――――――――――

女神の三つ首の髪飾り(ユニークアクセサリー:頭)

・装備時、全能力値+50

・攻撃力(AR)+5

・防御力(DR)+5

・付与スキル:地獄の咆哮

☆ソケット効果(ケルベロスの魔石)

 全能力値+30、AR+2

――――――――――――


 三つ首の髪飾りの付与スキル。


 ――地獄の咆哮だ!


 俺はそのスキルを使う。


 ウォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ――!!


 凄まじい咆哮の振動波がヒュドラに襲いかかる。


 GYAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA――!!  


 ヒュドラのすべての首が、後方にのけぞってスタンする。


「皆、今だ! 全力の一斉攻撃だ!!」


「「「おう!!」」」


 イナリが叫ぶ。

「火魔法Lv10――煉獄火炎!」


 リンが叫ぶ

「土魔法Lv10――魔鉱の土石流!」


 シャンテが叫ぶ

「操糸術Lv10――百線突き!」


 アリシアさんが叫ぶ

「騎士剣術Lv10――聖光の飛刃!」


 ミーアが叫ぶ。

「追撃の咆哮をいくにゃ! ――地獄の咆哮!」


 ウォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ――!!


 更にヒュドラがのけぞり、スタンする。


 ミレアも、高位の風魔法を使い、攻撃している。

 モフも無数のライトボールを敵の首に当てている。



 すべての攻撃がヒュドラに炸裂する。


 GYAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA――!!   


 

 爆炎、土石、光と煙の霧で周りが見えなくなる。


 そして、徐々に霧がはれた後に、ボロボロになったヒュドラがいた。

 すでに8つの首が無くなっており、中央の首だけがかろうじて残されていた。


「――転移!」


 俺は魔剣ラーフィンを握りしめ、その残された首の真横に転移する。


「――スラッシュ!」


 魔剣に剣技の力が乗り、ヒュドラの最後の首を刈る。


 首が宙に舞う。


 ガガガガガガガガガガ――


 ヒュドラの胴体が、断末魔の様相を帯び、激しく痙攣する。


 階層部屋が大きな音を立てて激しく揺れる。


 

 そして、徐々に、徐々に、霧のように消えて行くヒュドラ。



 ――天から声が聴こえてくる。


≪階層主『ヒュドラ』を討伐しました≫


≪パーティーメンバーのレベルが上がりました≫

≪パーティーメンバーのレベルが上がりました≫

≪パーティーメンバーのレベルが上がりました≫

≪パーティーメンバーのレベルが上がりました≫

    ・

    ・

≪パーティーメンバーのレベルが上がりました≫


 ――繰り返す天からの声


 経験値が体に流れ込んでくるのを感じる。


≪パーティーメンバーのそれぞれに習得可能スキルが解放されました≫


≪パーティーメンバーのそれぞれに特別ボーナスとしてSPが与えられます≫



 ――コロン、コロン


≪ヒュドラの通常アイテム『ヒュドラの鱗』をドロップしました≫ 



 ――コロン


≪ヒュドラのレアアイテム『ヒュドラの牙』をドロップしました≫ 



 ――コロン、コロン


≪ヒュドラのユニークアイテム『九首の耳飾り』をドロップしました≫ 

≪ヒュドラの上位ユニークアイテム『女神の九首の耳飾り』をドロップしました≫ 



「や、やった、みんな! やったぞ!!」


「にゃにゃにゃ――! やったにゃあああ!!」

「やったのじゃあああ!!」

「「おおお――!」」

「「やった――!」」



 こうして俺たちは勝利の雄たけびを上げるのだった。 


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