10話 ホーンソードを使ってみる
朝が来た。
いつものようにステータスを確認する。
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トール 18歳
Lv 10
体力:10
魔力:10
筋力:10
敏捷:10
精神:10
幸運:10
SP:3
ユニークスキル:女神のドロップLv4
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ついにレベルが10になったのだ。うれしい~。
しかし、相変わらず見事に各能力が均一だな。
この一年間ずっとレベルが3だったのもあって、あまり各能力値のもつ意味を考えてなかったが、一応確認しておくのもいいかもしれない。
一年前、ギルドで初級冒険者の講習を受けた際に、ステータスについて教わったことを振り返って見る。
「体力」は、生命力やスタミナを表し、多いほど死ににくく攻撃に耐える力も増え、疲れにくくなる。そういう意味で物理攻撃や魔法攻撃を問わず防御力が高くなるとも言える。
「魔力」は、魔法攻撃力と保有魔力量を表し、高ければ高いほど、魔法による攻撃力が高くなり、魔法を何度も使用出来るようになり、高度な魔法も扱えるようになる。また、魔法以外でもスキルを使用する際に魔力が必要となる場合が多いので、魔法使い以外でも魔力は重要だ。さらに、魔力が高いと敵からの魔法攻撃を軽減する効果もあるので、魔法防御力の向上にもつながる。
「筋力」は、身体の強靭さを表し、運動能力全般の向上に影響する。主に武器や素手での攻撃が上がり、また敵からの物理攻撃を軽減する効果もある。
「敏捷」は、身体操作力を表し、高いことで素早く動けたり、武器などを器用に扱えるようになる。回避や命中率などに影響を与える。
「精神」は、精神的な強さを表し、敵の精神攻撃を軽減もしくは無効化する役割を果たし、高ければ、状態異常などにかかりにくくなる。また、精神が高ければ直観力も上がり敵からの攻撃などに反射的に気づける力も向上する。
「幸運」は、文字通り幸運を表し、行動全般に影響を与える。例えば、攻撃時のクリティカルヒット率の向上や逆に敵からのクリティカルヒットを貰いにくくなるなどが言われている。幸運はなかなか具体的に解りにくい能力値ではあるが、簡単に言えばいろいろな場面でラッキーなことが起こりやすくなるということらしい……。
ざっと、脳内でおさらいをしてみたが、それぞれの能力は微妙にお互いが影響し合っている部分も大きく、どれも重要な要素のように感じる。
まあ、要するにレベルを上げて、全般的に高い数値を目指せばいいのだろう。身も蓋もないことだが……。
――それはそうと、昨日手に入れた「ホーンソード」が気になるな。
ちょっと装備してみるか。俺はホーンソードを右手に握って再びステータスを見てみた。
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トール 18歳
Lv 10
体力:10
魔力:10
筋力:10+5
敏捷:10+5
精神:10
幸運:10
SP:3
ユニークスキル:女神のドロップLv4
【装備品】
武器:ホーンソード
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「おおー、ステータスの横に数値が現れたぞ」
ホーンソードの装備効果として、筋力+5、敏捷+5があるのでそれが反映されたようだ。
軽く部屋の中で素振りとステップをしてみる。
「おおー!! さらに力が漲ってくる感じだ。動きもスピーディーに感じる」
ステータス上昇の効果が明らかに実感できる。
これなら魔法を使わずにホーンラビットを倒せそうだ。
ましてやすでにレベルは10。余裕でいけそうな気がする。
「よし、今日は水の宝玉を使わずにホーンラビットと戦ってみるか!」
◇
ダンジョンにやってきた。
一応念のために、スライムをしばらく倒して「水の宝玉」1つを手に入れる。いざという時に予備は必要だしな。
右手にホーンソードを持ち、2階層に進む。
「お、早速現れたな!」
俺は自分からホーンラビットに向かって行った。
体が軽い。力も漲っている。
突進してくるホーンラビットの動きが遅く感じられた。
素早くかわし、すり抜け際に剣を横に薙ぎ払う。
ザシュ!
「グギャ!!」
ホーンラビットの悲鳴が聞こえ、動きが完全に止まる。
そのまま俺は2撃目の突きをホーンラビットの背後から放つ。
ザシュ!
霧のように消えて行くホーンラビット。
「よっしゃあああ!」
意外にあっけなく倒せた。
改めて自分が強くなった実感が湧いてくる。
ドロップした魔石とうさぎ肉を拾い鞄に入れる。
「よーし、いけるぞ! このままホーンラビットを狩りまくるぞ!」
しばらく、狩っていると、早くも虹色の光が現れ、2度目となる「ホーンソード」をドロップした。
「おおー、これはラッキーだ」
これはもしかして、二刀流がいけるんじゃないか?
ふと思いつき、試しに両手にホーンソードを持って、ステータスを見てみる。
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トール 18歳
Lv 10
体力:10
魔力:10
筋力:10+5
敏捷:10+5
精神:10
幸運:10
SP:3
ユニークスキル:女神のドロップLv4
【装備品】
武器:ホーンソード
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「う~ん、ステータスに変化は無いな」
筋力と敏捷のボーナスがそれぞれ+10されるかと思ったが違ったようだ。
どうやら同じアイテムだと2つ装備しても付与されたボーナスは加算されないようだ。
残念だが、そういう仕様なのだろう。
もしかすると、異なる武器を装備するとそれぞれの武器のボーナスが反映されるかもしれない。これは今後、検証の必要があるな。
まあ、それはそれとして2本目のホーンソードは二刀流として使うのもいいし、慣れないうちは予備として腰に下げておいてもいいだろう。
気を取り直し、さらに10体ほどホーンラビットを狩る。
「う~ん、レベルが上がらないな……」
今日は朝から合計20体ほど狩ったが、レベルが上がる気配がない。
「そうか……ホーンラビットのレベルは5。すでにレベル10の俺にとっては格下なのか」
さて、そろそろ昼時だな。とりあえず食事にしようか。
念のため1階層に戻り、そこでリンの作ってくれた弁当を広げる。
「おお~なかなか豪勢な弁当だな!」
最近は金回りが良くなり、リンに渡す生活費もかなり増えたため、今まで高くてなかなか買えなかった食材も料理に使われるようになった。
「ん~うまい! やっぱりリンの料理は最高だな!」
独り言を言いながら、カラフルに彩られた弁当に舌鼓を打つ。
食事中、なぜかスライムが物欲しそうに俺を遠巻きにじーっと見ている姿は、なんだか微笑ましく感じた。