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【書籍化】あなたたちに捨てられた私は、ようやく幸せになれそうです  作者: gacchi(がっち)


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51.精霊の処罰を受けた者たちの末路(ディオ)

「父上、僕を伯爵家から抜いてください」


「それは認めない」


「どうして!」


「デュノア公爵に止められた。もし、お前が精霊の処罰を受けていたとしても、

 元に戻るような軽い罪であった場合は咎める気はない。

 お前の籍を外すのは簡単だが、真実を知った時にアリアンヌ様が傷つくだろうと」


「アリアンヌ様が……」


そう言われてしまえば、それでも貴族籍を抜いてほしいとは言えない。

優しいアリアンヌ様の心の負担になるくらいなら、

この罪悪感に耐えることくらいどうってことはない。


「それに王家からも話があった。

 精霊の処罰は元に戻るようであれば必要以上に咎める気はないと。

 消えるまでの間、謹慎処分とするそうだ」


「そんなに軽い処分でいいの?」


「おそらく、学園に通う者たちが多いのが理由だろう。

 アリアンヌ様の悪評を信じ、噂を流したとか、

 陰口を言ったとか、その程度なはずだ。

 王家としても、そこまで厳しい処罰にしたくないのは、

 同じようにアリアンヌ様を傷つけないためだと思う」


たしかにマーガレットがお茶会でありもしないことを言ったせいで、

アリアンヌ様はドレスや宝石を買いあさり、

両親の言うことを聞かないわがままな令嬢だと思われていた。


それを信じ、アリアンヌ様に聞こえるように悪口を言う者たちもいたのは覚えている。

あの令嬢たちも今頃は後悔しているだろう。

マーガレットの話を信じ、何の罪もないアリアンヌ様を貶めたのだから。


「お前はその腕のあざが消えるまで私室で謹慎だ。

 それで、いいな?」


「……わかりました」


僕にできることは、心から反省することだ。

どうしてクリステル王女の言いなりになってしまっていたのかはわからないが、

それでもやっていいことと悪いことがある。


それに……ラザールに関しては僕のせいでもある。

アリアンヌ様と婚約解消させるためとはいえ、

ひどい噂が本当だと信じ込ませたのは僕だ。

それが無かったら、ラザールは精霊の処罰を受けなかったと思う。


父上に許可をもらい、ラザールへと長い手紙を書いた。

アリアンヌ様の真実と、どうしてラザールと婚約解消させなくてはいけなかったのか。

万が一にでもカリーヌ叔母上に知られては困るからと、

ラザールには言えなかったことも。


今さら謝罪されたところで許せるわけはないだろうが、

ラザールはもともとは素直で優しい奴だ。

恨むのは僕にすればいい。

アリアンヌ様は何一つ悪くなかったのだとわかれば、

きっと反省してくれると思った。




季節が二つ変わる頃、僕の精霊の処罰は終わった。

最後に一度だけきらりと光って、黒いあざは残らず消えた。


父上からの話だと、学園の学生でも二通りにわかれたらしい。

軽い処罰で済んだ者と、身体にまで黒いあざが巻きついていた者。

軽い処罰の者は僕と同じで腕や手首に巻きついていただけ。

季節が一つか二つ変わるまでに消えて、もう学園に戻れた者もいる。


黒いあざが身体にまで巻き付いて、少しも薄れない者たちは、

調べてみたところ、アリアンヌ様に直接危害を加えようとしていた。


授業から追い出すだけでは物足りなかったのか、

学園からも追放しようとしていたらしい。

たいていは下級貴族で、精霊の力も下級だった。

だからこそ、伯爵令嬢のアリアンヌ様が下級以下だからと

何をしてもいいと思い込んでしまったのかもしれない。


上から物を落とそうとしたり、階段から突き落とそうとしたものまで。

そのすべてが精霊に邪魔され、結果としては何も起きなかった。


だが、精霊は見ていた。

アリアンヌ様にしようとしていたことをすべて知られていたとわかり、

何人かは王宮の騎士に聞かれて素直に白状した。


その者たちは、遠くにある王領の離宮に送られた。

ラザールやカリーヌ叔母上、そしてクリステル王女が住む離宮だ。


三人は顔まで黒いあざがあるため、離宮に幽閉されることになった。

精霊を信仰している平民たちに見られたら、殺されてしまうからだ。


その三人を世話するための侍女、侍従として、

精霊の処罰が消えない下級貴族の学生たちを雇ったらしい。


下級貴族では精霊の処罰を受けた者を生涯匿うのは難しい。

王家に雇われているのであれば安全は保障されるし、

衣食住には困らない。

本人たちは嫌がっても、家族に追い出されるように連れて行かれたという。


黒いあざが消えれば、離宮から出すという約束だったそうだが、

今のところ、誰一人あざは薄れていないと聞いた。


あぁ、違った。ラザールだけは薄れてきているらしい。

僕からの手紙を読んだラザールは、怒ってはいたようだけど、

素直に反省し始めたらしい。


アリアンヌ様が少しも悪くなかったことを知って、

本人に直接謝りたいと言っていたようだが、それは却下された。

アリアンヌ様はもう忘れたい出来事だろうから、

ラザールの謝罪なんていらないだろうし、それが正しいと思う。


夜会に薄黄色のドレスを着させて出席したために、

ラザールとクリステル王女は結婚させられた。

と言っても、顔を見ることすらなく別の部屋で生活している。

カリーヌ叔母上も部屋から出てくることなく、閉じこもっている。


三人とも、お互いの顔を見れば黒いあざが見える。

会いたくないと思うのも無理はない。


もし、ラザールの黒いあざがすべて消える日が来たら、

ラザールだけは離宮から出て王宮に戻ってくることができる。

クリステル王女と結婚したことで、ラザールは王族として残っているからだ。


いつか、ラザールが王都に戻ってくることがあれば、

僕はできるかぎり支えようと思う。


三大公爵家ににらまれ、ファロ家から縁を切られた、

お祖父様の商会がつぶれるのはあっという間だった。

今は、お祖父様とお祖母様は平民として暮らしている。

慎ましく暮らしていれば一生困らないほどの財産は残っているはずだ。


きっと次に会うことがあるとすれば、どちらかの葬儀になると思う。

そのくらい、お祖父様たちのことは遠く感じている。



ただ一つ、気がかりなのはマーガレットのことだ。

マーガレットがどうなったのか、情報は入って来なかった。


伯爵夫人は横領や虐待の罪で牢に入れられたらしい。

うちからの支援金だけじゃなく、王宮から支給された金まで使い込んでいたと聞いて、

どれだけ強欲なんだと呆れてしまった。

消えてしまった伯爵の分まで償わされるのだとしたら、

一生かかっても牢から出ることはないだろう。


まだ学生でもあるから、マーガレットが罪に問われることはない。

だが、マーガレットも全身に精霊の処罰を受けている。

ラザールたちと同じように隔離されているはずだとは思うが、

あのマーガレットが反省するとはとても思えない。


生きているのだろうか、それすらもわからなかった。







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