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【書籍化】あなたたちに捨てられた私は、ようやく幸せになれそうです  作者: gacchi(がっち)


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48.心の弱さ

気がついた時にはデュノア公爵家に戻っていた。

いつの間に馬車に乗せられて連れて帰られていたんだろう。


隣にはいつものようにリオ兄様が寝ている。

まだ夜は明けていないようだ。

服もドレスではなくいつもの夜着に着替えている。

侍女が着替えさせてくれたんだと思うけど。


私が目を覚ましたのがわかったのか、

リオ兄様がゆっくり目を開けた。


「……あ、起きた?声をかけたけど、起きなかったから、

 そのまま連れて帰ってきたんだ」


「……大丈夫」


「まだ眠いんじゃないか?」


「……大丈夫」


「……?アリア、お腹空いている?」


「……大丈夫」


大丈夫、大丈夫だから。気にしないでいい。

リオ兄様の顔色が変わっていくけど、どうしたんだろう。


何も言わずに抱きしめて優しく頭をなでられる。

いつもならリオ兄様に抱きしめられたらすべて解決した気になるのに。

今は、ここではないどこかに心を置いてきた気がする。

ふわふわした感じで、現実味が何もない。


部屋に朝日が差し込んできて、リオ兄様は起きようとする。

一緒に起きようとしたけれど、身体は動かない。

リオ兄様は何も言わずに私を抱き上げる。


リオ兄様が私に食事を食べさせる。

ゆっくりと一口ずつ、口元まで運ばれてくるのを、

ただ噛んで流し込む。味はわからない。


それを三度、繰り返したらまた夜になった。

私を抱きしめたままのリオ兄様が少しだけ困った顔になる。


「アリア……湯あみはできるか?」


「……?リオ兄様と離れるの?」


「俺と一緒なら、入れるか?」


「リオ兄様と一緒なら」


リオ兄様はサリーに私を任せようとしたけれど、

他の誰かにさわられるのは嫌だった。

リオ兄様のそばなら大丈夫。だけど、離れるのは嫌。


リオ兄様はため息をついて、私を運ぶ。

丁寧に服を脱がせて、身体を洗ってくれる。

二人で湯船に入って温まった後、身体をふいて夜着に着替えさせてくれる。


そして、いつものように抱きしめられたまま眠る。

まだ心はふわふわしたままだけど、リオ兄様の腕の中にいれば大丈夫だとわかる。





……リオ兄様が私の腕をあげて、身体を洗ってる。

身体を洗ってる?え?私、裸!?


「ええええ?」


「ん?」


慌てて両腕を抱くように身体を隠すけど、隠せてない。

どういうこと?どうしてリオ兄様に洗われているの?


「り、、リオ兄様?」


「あぁ、戻って来たのか。って、この状態はまずいな」


「リオ兄様も裸!?」


一緒に湯あみをしているんだから当然といえば当然なんだけど、

目の前のリオ兄様も裸だった。

よく抱き上げられているから鍛えているのはわかっていたけれど、

思っていたよりも筋肉のついた身体に、どこを見ていいかわからない。


リオ兄様と視線があったら、リオ兄様の顔がみるみるうちに赤くなっていく。

え?さっきまで平然として私の身体洗ってたのに、今さら?


「…っ!ちょっと待って、誰か呼んで交代するから」


「え?」


リオ兄様は慌てたように浴室から出て行った。

私は泡だらけのまま、どうしていいかわからず混乱したまま。

いったい、何が起きたの?


「アリアンヌ様!」


「ハンナ!サリー!」


バタバタと浴室に駆け込んできたのは侍女のハンナとサリーだった。


「あぁ、ようやくお戻りになりましたか」


「もう大丈夫ですよ。洗い流しましょうね」


「え?ど、どういうこと?」


ざぱぁと身体についていた泡を流され、湯船に入って温まるように言われる。

言われるままにしていると、身体を拭かれ、夜着に着替えさせられた。

なんとなく身体の動きがぎこちない?


部屋に戻ると、リオ兄様は夜着姿で待っていた。

さっき見たリオ兄様の裸を思い出して恥ずかしくなっていると、

抱き上げられて寝台に連れて行かれる。


「アリア、おかえり」


「リオ兄様、私どうしてたの?」


「アリアはあの夜会から十日も心を失った状態だったんだ」


「心を?」


というか、夜会からもう十日も過ぎている?

その間の記憶があまりない……。


「何を聞いてもぼんやりして、大丈夫しか言わなくなった」


「覚えてないわ」


「だろうね。きっと、アリアは限界だったんだ」


「限界?」


「アリアはあんな目にあっても、家族を罰しようとはしてなかった。

 なのに、伯爵は消えて、夫人とマーガレットも精霊の処罰を受けた。

 悲しい、つらい、でもあんなひどい家族にそんな思いを持つのはおかしい。

 きっと心に負担がかかりすぎたんだ」


目の前で暗闇に食べられるようにして消えたお父様。

顔が見えなくなるほど真っ黒になってしまったマーガレット。

気を失ったまま担がれて連れて行かれたお母様。


私に優しかったことなんて一度もない。

だけど、血のつながった家族だった。


「どうしていいかわからなかったの。

 三人にどういう感情をもっていいか、わからなかった。

 きっと心が冷たいんだと」


「違うよ。心が壊れないように、守ろうとしたんだ。

 アリアが優しすぎるから、受け止められるまで心を逃がしたんだと思う」


「……弱かったからだわ。一人では受け止められなくて、

 でも、リオ兄様の手は離せなかったもの」


覚えていないけれど、リオ兄様の手を離せなかったことだけはなんとなくわかる。

だから、あんな……湯あみまで手伝わせて。


「……アリア、熱がある?顔が真っ赤だ」


「だ、だって。リオ兄様と湯あみするなんて」


「あぁ、なるべく見ないようにしてたんだけど、

 アリアの心が戻って来てからは無理だと思った」


「無理?」


それは嫌なのに我慢してたってこと?

そうよね。使用人でもないのに、私の身体を洗うなんて。


「心が無い時は、アリアだけどアリアじゃない感じがして、

 小さい頃にアリアの身体を洗ってあげたのを思い出したよ」


「それって、二歳とか三歳とかの時よね」


「うん、なんか懐かしいとか思って意外と平気だったんだけど、

 アリアの心が戻ったのがわかったらもうダメだった。

 しかも裸を隠そうとして真っ赤になってるし……

 あんなの見たらもうダメだろう」


よくわからないけれど、リオ兄様にひどいことしちゃったんだ。


「ごめんなさい。リオ兄様。

 私がもっとしっかりしていたらこんなことにならなかったのに」


「そうじゃないよ。つらい時こそ、俺の出番だって言っただろう。

 あんな状態でも俺だけはそばに置いてくれた。

 俺の手からなら食事もとれたし、一緒にいれば眠ってくれた。

 だから、迷惑なんかじゃない」


「……リオ兄様」


「だけど、アリアの心が戻って来ても、俺はそばにいるよ。

 アリア、おかえり。また何かあったとしても俺は離れない。

 だから、安心して泣いていいんだ」


「うん……」


どんな感情でもきっとリオ兄様なら受け止めてくれる。

嫌な子だと自分で思ってしまっても、後悔しても、

リオ兄様なら大丈夫だって笑ってくれる。


それがうれしくて、涙がこぼれるのに笑ってしまう。


「ありがとう、リオ兄様。大好きよ」


「俺もだよ、アリア」


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