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【書籍化】あなたたちに捨てられた私は、ようやく幸せになれそうです  作者: gacchi(がっち)


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32.学園長の許可

「学生会の仕事、がんばっていたな。お疲れ様」


「見ていたの?」


「控室の窓から講堂内が見えるようになっているんだ。

 四人で協力しているのが見えて、頑張っているなと思っていた」


「ふふ。みんなで頑張ったもの」


四人とも褒められているんだとわかって、胸を張ったら頭をなでられた。

食事中だけれど隣に座っているから、こういうことは多い。


「それにしても、どうして学園長に?」


「もともと、叔父上に頼まれていたんだ」


「王弟殿下に?」


「ほら、来年はクロードが入学するだろう。

 身内がいたらダメってことはないんだが、

 父親がいるのは気まずいだろうからって言われて」


「そういうものかしら」


父親がいたら気まずいというのはよくわからない。

王弟とクロード様は仲が良かったと思う。


「気持ちはわかるよ。学園にいる時くらいは親から離れたいだろうし。

 それで引き受けることにはなっていたんだが、

 アリアが心配だから一年早く引き受けることにしたんだ。

 理由を話したら叔父上も賛成してくれたしね」


「私のためだったの?」


「もちろん。じゃなかったらわざわざ学園長なんてしないよ。

 学園にはラザールたちがいるからな。

 アリアに何をしてくるかわからない。警戒したほうがいいだろう」


「そうよね……いるんだものね」


まだあれからあの三人には会っていない。

ラザール様は王族用の個室で食事をとっているだろうし、

学年が違うから校舎も違う。

このまま会わないでいられたらと思うけれど、どうだろうか。


「それと、来週から隣国の王女が留学してくる。

 ラザールと同じ学年だ。何も無ければいいんだが」


「王女が留学?」


「学年が違いから関わることは少ないだろうけど、

 もし何かあれば学園長室においで」


「学園長室に?リオ兄様、もしかして毎日学園にいるの?

 領地の仕事とか、王族の仕事は大丈夫なの?」


私が公爵家に帰ってきてからそばにいてくれるけど、

本当はすごく忙しいはず。

学園長まで引き受けて大丈夫なのか心配になる。


「少なくともアリアが卒業するまでは毎日行くよ。

 陛下と父上の許可はもらったから大丈夫。

 今までラザールにふりまわされたからね。お詫びなんだと思う」


「じゃあ、リオ兄様と一緒に通えるの?」


「もちろん。帰りもできるかぎり一緒に帰ろう」


「うれしい」


お義父様だけじゃなく、陛下の許可までもらっているなら大丈夫なのかな。

それなら素直にいっしょにいられることを喜んでもいいよね。

何かあればリオ兄様がいると思えば、不安も薄れる。


それから学園内でのことを話し合って、

一緒に馬車で通うけど昼食はA教室のみんなと取ることにした。


リオ兄様がいたらみんな緊張してしまうだろうし、

せっかく四人で食事ができるようになったところだし。

ようやく楽しめるようになった学園生活。

リオ兄様も笑って、昼は学園長室で食べるからと許してくれた。



だが、リオ兄様と登校した初日から問題が発生した。

精霊術の演習授業に出席許可が出たからと、

A教室のみんなと演習場に入った。


なのに、私がいることに気がついた教師からは出て行くようにと言われる。

ジョセフ様が教師に説明をしている間にアリーチェ様は外へ出て行く。

もしかして、リオ兄様に知らせに行った?


「アリアンヌ様の出席は学園長から許可が出ました」


「私はそんな許可は認めない」


「学園長が出したのに、認めないのですか?」


「学園長だからといって、他の学生の授業の邪魔になることは許されない!」


どうしても私の出席を認めたくないのか、教師の声が大きくなっていく。

痩せた長身の男性の教師は、私を嫌っている。

座学の教師はそこまでではなかったのに、

演習の教師は最初から私の出席を拒否している。

下級以下は演習場に近づくなと言われていた。


嫌がられるかなとは思っていたけれど、

ここまで拒否されるとは思わなかった。

よほど私が嫌いなんだ。


顔を赤くし怒鳴り始めたが、ジョセフ様もあきらめない。

言い合いになりかけた時、演習場にリオ兄様が入ってくるのが見えた。


「イガル先生、これはどういうことだ?」


「学園長!」


「私はすべての学生に演習授業を受ける権利があると言っただろう」


「ですが!他の学生の授業の邪魔になります!」


リオ兄様が来ても教師は認める気はないのか、他の学生たちを手で差し示す。

B教室と合同の授業になるので、そこにいたのはB教室の学生たちだ。

B教室の学生たちは私がいるのが嫌なのか、うなずいている者もいる。


そういえば座学の授業もそうだった。

B教室の学生たちから嫌がられて追い出されたっきり。

あれ以降はA教室のみんなと自習していた。


どうしよう。座学だけでなく演習までそうなってしまったら。

私が出なければみんなは授業を受けられるのに。


「実際に邪魔になったのを確認したのか?」


「え?」


「報告では、アリアンヌ・バルテレスは下級以下のため、

 演習授業の出席を認めなかったとあった。

 一度でも授業に出席して、他の学生の邪魔になると確認したのかと聞いている」


「そ、それはしていませんが……しなくても」


「していないのに、どうして言い切れる」


「いえ、ですが」


実際に何か起きたわけではない。

私は最初から授業に出ていないのだから。

それを言われたら困るのか、教師はしどろもどろになり始めた。


「下級以下だろうと、学生には授業を受ける権利がある。

 それを教師の考えだけで拒むというのはどうなんだ?」


「私は学生のことを考えて!」


「それなら学園長の許可を得てからにするべきだったな。

 イガル先生は勝手に判断している」


「そ、それは……」


学園長の許可を得ずに拒否していたのはまずいとわかっているのか、

リオ兄様に反論できずに黙る。

だが、リオ兄様は頭ごなしに私の出席を認めろというつもりはないようだ。

教師へ向かって、にっこりと笑った。


「何もそのことを今問題にするつもりはない。

 他の学生の邪魔になるというのなら、私だって無理に出席させろとは言わない」


「そ、そうですよね……?」


「だが、確認すらしていないのはおかしいだろう。

 今、ここで授業をしてみろ。何か不都合があれば、その時に対応する」

 

「……わかりました。すぐにわかるでしょう」


何か問題が起きたら排除していいと聞こえたのか、

教師は気を取り直したように私たちへと向き直った。


「それでは、まず精霊を呼び出すんだ。

 祈りをささげ、呼び出した精霊の力を貸してもらう」


精霊をここに呼び出す?

精霊の住処があるわけでもないのに、呼んできてくれるのかな。


そう思ったけれど、教師が祈ると精霊が集まってくる。

それを見て、周りの学生たちも祈り始めた。

ちらほらと精霊の光が集まり始まる。


A教室の三人は優秀なのか、たくさんの精霊が集まっているのが見えた。


「アリア、やってごらん。大丈夫だ」


「リオ兄様……わかったわ」



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