表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

3/61

3.突然の別れ

二人で執務室へ向かうと、誰かが言い合いしているのが聞こえた。


「そんな急な話は認めないぞ!」


「兄上に認められなくてもこちらはかまわない!」


「ずっとアリアを放置していたくせに何を言いだすんだ!」


「いいから早くアリアンヌを出してくれ。すぐに連れて帰る!」


伯父様とお父様の声だった。

私を連れて帰る?今までずっと私を避けていたのに、どうして。


先週あった私の九歳の誕生会でも、お父様とお母様、

そして妹のマーガレットが来ていたがすぐに帰ってしまった。

毎年そうだ。

マーガレットが帰りたいと言えばおおそうかと言って帰ってしまう。

お祝いの言葉すらまともにもらったことはない。


なぜ伯父様が私の誕生会を開いてくれるのかというと、

伯爵家では私の誕生会を開いてくれないからだ。

マーガレットの誕生会は開かれているらしいけど、私は招待されていない。

そのことでも伯父様とお父様が喧嘩をしたのは知っている。


いつもいつもマーガレットだけが大事にされて、私は会ってもくれない。

きっとお父様とお母様にとってはマーガレットだけが子どもなんだ。

そうあきらめていたのに、どうして連れて帰るだなんて。


「出さないというなら勝手に探させてもらう!」


「あ、ジョスラン。待つんだ!話は終わっていない!」


逃げなきゃと思った時には遅かった。

執務室のドアが荒々しく開いて、中からお父様が出てくる。

廊下で立ち止まったままだった私とお兄様を見ると、お父様がニヤリと笑った。


「ああ、アリアンヌ。そこにいたのか」


「お父様、今日はどうしたのですか?」


「お前を迎えに来たんだ」


「どうして」


マーガレットが生まれてからずっと伯爵家ではなく公爵家で暮らしてきた。

今さら帰ったところで私の部屋もあるわけがない。


「お前の婚約が決まったんだ。喜べ、第二王子だ」


「え?」


「先週の誕生会で見初められたらしい。良かったな」


私の婚約者が決まった?どうして。私はリオ兄様と婚約するのに。

呆然としていたら、リオ兄様が私を隠すように前に出る。


「叔父上、アリアは俺と婚約します。

 その話はお断りしてください」


「何を言っているんだ、リオネル。

 お前は公爵家の嫡男ならわがままが通ると思っているんじゃないよな?

 伯爵家の令嬢に過ぎないアリアンヌが、王家から、

 王子から婚約を申し込まれて断れると思っているのか?

 もうすでに婚約は結ばれてしまっているんだ」


もうすでに婚約は結ばれてしまっている?

私には何も聞かずに決めてしまったというの?


「そんな勝手に!」


「勝手も何も、アリアンヌは俺の娘だ。

 婚約相手を決めるのは親の仕事だろう」


「今までずっと放置していたじゃないか!」


リオ兄様に強く非難されてお父様は一瞬怖気づいたように見えたが、

ふんっと鼻を鳴らしてリオ兄様の肩を押した。


「だから、家に連れて帰るんだ。これで文句は無いだろう。

 兄上だってずっとアリアンヌを娘として扱えと言っていたではないか。

 アリアンヌ、今日からは伯爵家に戻れ。

 お前はバルテレス伯爵家の長女としての務めを果たせ」


「……家に帰りたくありません」


「お前の意見などどうでもいい。さぁ、帰るぞ」


「嫌です!」


「アリア!」


お父様に腕をつかまれて、引きずられるようにして連れて行かれる。

私を助けようとしたリオ兄様は伯父様に止められていた。


「父上!どうして止めるのですか!」


「アリアがバルテレス伯爵家の娘だというのは変えようがない。

 そして、もうすでに第二王子と婚約を結んでしまったというのなら……。

 お前は手を出してはいけないんだ」


「嫌です!俺はアリアを!」


「わかっている!お前たちの気持ちはわかっている……」


「そんな!アリア!」


遠くからリオ兄様が私を呼ぶ声が続いている。

それにはおかまいなしでお父様は馬車へと私を放り込んだ。

無理やり押し込まれたせいで肩や腕をぶつけてズキズキと痛む。


速度を上げたのか、あっという間に公爵家の屋敷は見えなくなる。

お父様はどれだけお願いしても馬車から下ろしてはくれなかった。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ