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【書籍化】あなたたちに捨てられた私は、ようやく幸せになれそうです  作者: gacchi(がっち)


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20.何も知らない(ラザール)

「え?今日は王宮に帰るの?めずらしいな」


「帰るわけじゃない。兄上に呼ばれているんだ。終わったら戻ってくる」


「いいけどさぁ。王宮にいなくていいのかよ。そろそろまずいんじゃないか?」


「大丈夫だよ。母上だって何も言わないんだし」


いつものようにファロ家に帰ろうとしたら、王宮から学園に連絡が来ていた。

ジスラン兄上が呼んでいるから王太子の執務室に顔を出せと。

兄だと言っても、むこうは王妃から生まれた第一王子だし、

俺とは年に数回の公式行事の時に顔を合わせる程度。

それが王太子の執務室まで来いと言うのはどういうことだ。


ディオの言うとおり、何かまずいことでもしただろうか。

思いつくとしたら婚約者のアリアンヌのことだ。

あいつなら何をしてもいいと思って課題などを押しつけている。

最近では昼休憩に食事を運ばせたりもしているが、あいつは素直に従っている。


わがままでどうしようもない女だと聞いていたが、意外とおとなしい。

それだけ婚約解消されて平民になるのが嫌なんだろうけど。


母上だってあいつのことは好きにしていいって言ってた。

だから、悪いことをしているとは思っていない。

だが、最近は俺たちがあいつに課題をやらせていることが有名になりすぎた。

一部の教師が俺から課題を受け取る時にため息をついていたりする。

もしかして、学園から王家に連絡が行ったのかもしれない。


その時はあいつが自ら言い出してやってると言っておこう。

婚約解消したくないから必死なんだと言えば兄上も理解してくれるだろう。



久しぶりの王宮。後宮までは行く気がない。

本宮にある王太子の執務室の前にいる近衛騎士が、

俺の顔を見て中に連絡をする。


「入ってくれ」


奥からジスラン兄上の声がした。

王太子の執務室に入るのは初めてだ。

そこでは兄上の側近たちも机を並べて仕事をしていた。


……あの男はいないんだな。


「どうかしたか?」


「いえ、なんでもありません」


つい、デュノア公爵家のリオネルを探してしまった。

小さい頃の兄上の隣にはいつもリオネルがいた気がする。

側近としてここにいるのかと思ったけれど、違うのか。


こうして兄上をすぐ近くで見るのは久しぶりだ。

背中まである金髪を後ろで一つに結んでいるが、

キラキラした光をまとっているように見えるのは気のせいじゃない。


金髪緑目の兄上はこの国の王子としてふさわしい容姿、

そして精霊に愛されている上級でもある。


同じ王子でも俺とは全く違う。

兄上が悪いわけじゃないし、嫌いでもないんだけど、

どうしてもそばにいると自分が異物なような気がして落ち着かない。


母上ですら見たくないから短く切れといった赤茶色の髪。

優れているものは何一つない、王子になんて見えない俺。

どうしてこんなにも違うのかな。


「さて、呼び出して悪かったな。

 実はお前に頼みたいことがあったんだ」


「頼みですか?」


兄上から頼まれることなんて初めてだ。

兄上はなんだってできるし、側近もこんなにいる。

俺なんかに何を頼むっていうんだろう。


そう思ったけれど、聞いたみたら兄上や側近ではできないことだった。


「来年度、アーネル国から第三王女が留学してくる。

 ラザールと同じ歳だから、お前と同じ学年になると思う。

 その学年には高位貴族の令嬢がいない。だから、お前に世話役を頼みたい」


「俺が世話役ですか?」


「ああ。本当は令嬢に頼みたいのだが、いないのでは仕方ない。

 お前には婚約者がいるし、一緒にファロ家の令息と婚約者もいるのだろう。

 だから問題ないと判断した」


今、王族で学園にいるのは俺だけ。だから、俺に頼むのか。

そのことは納得したけれど、隣国からの留学生。しかも王女。

何をしにくるんだろう。そう思って素直に兄上に聞く。


「隣国の王女がどうして留学してくるんですか?」


「クリステル王女と言うんだが、金髪だということで、

 精霊術が使えるかどうか確認したいそうだ」


「金色?他国なのにですか?」


金色は精霊王の色で、この国の王家の色。

アーネル国は水色がかった銀色が王家の色だったはず。


「何代も前に、この国の王女がアーネル国に嫁いだことがある。

 この国の血をアーネル国の王家が受け継いだら、

 アーネル国も精霊王の加護を受けられるんじゃないかと考えたようだ。

 結果としては無駄だったが、そのおかげでまれに精霊に愛される者が産まれる」


「その王女がそうだと?」


「金髪だし、美しい容姿をしているというし、可能性は高いな。

 この国に来て精霊教会に行ってみなければ確認はできないが。

 もし精霊に愛されているのであれば、この国に嫁ぐつもりなのかもしれない」


精霊に愛されている美しい王女……誰に嫁ぐのだろう。

ジスラン兄上はもうすでに妃がいる。

隣国の王女を第二妃にするのは失礼だろうし。


もしかして俺が候補になるのかとにやけそうになった時、

それに気がついたかのように兄上にくぎを刺される。


「三大公爵家か侯爵家の中でちょうどいい令息がいればいいんだが。

 ラザールに婚約者がいなければ候補にあげたが、もうすでに婚約者がいるしな。

 そういえば、お前は領主になる勉強をちゃんとしているんだろうな?」


「領主になる勉強?なぜ、そんなことを?」


いったい何のことだ?

なぜ王子である俺が領主の勉強なんてしなくちゃいけないんだ。

それは貴族の家を継ぐ者がやることだよな?


「何を言っている。もしかして、わかっていないのか?

 お前は学園を卒業したら婚約者と結婚するんだろう?

 婚約者は伯爵令嬢だったよな?

 だから、お前は伯爵家相当の王領を賜って、伯爵家を作ることになる」


「は?」


伯爵家を作るってどういうことだ?




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