ゴブリン退治
「ジョンさん!」
「若女将、如何されますか?」
当初の作戦だと地形を利用して私が結界を張る。そして逃げるゴブリンをナンシーが全て斬る。
でも現実は甘くないのょね。
先ずは地形。障害物となる物が殆んど無いのでゴブリンの逃げ道を絞る事は出来そうないのよね。
次にゴブリンが意外と強そう! ナンシーが負ける事は万が一にも無いと思うけども、逃げ道を絞れない以上は取り逃しもあるでしょうね。
「若女将、御命令下されば何時でも参らせて頂きます!」
「そうね。ゴブリンのこの予想外の強さは気になるけど、その謎の解明はまた今度にしましょ。優先すべきはジョンさんの救出よ!」
「畏まりました!」
「作戦を立て直しましょ」
これからゴブリンの群れを相手にするけど、多少強くても所詮はゴブリン。むしろ厄介なのはジョンさんに私達を見られない様に救出する事よね。
私の聖女の能力とか、ナンシーの強さとかを知られる訳にはいかない!
「やはりジョン様の背後で全てを終わらせるべきてすね」
「そうね。絶対にジョンさんの視界に入らないでね」
「畏まりました。私が1人で斬り込んで参ります。若女将は物陰でお待ち下さい」
「そうさせてもらうわ。私は防御は出来ても攻撃は出来ないから」
せめて足手まといにはならない様にしなくちゃ。
「では参ります!」
○▲△
ナンシーが剣を抜いてゴブリンの集落へと突っ込んで行く!
勿論ジョンさんからは見えない角度から。
だからジョンさんは分からない筈だ。自分が縛り付けられている木の後ろで次から次へとゴブリンが切り捨てられている事を。
ゴブリンに囲まれようが関係ない! ナンシーの剣はゴブリンの急所を的確に突いて行く。
剣を持っているゴブリンが居ても、剣を合わせる事も無い。金属音の発生すら許さずに、一撃で仕留め続けている。
何処からか飛んで来た矢だって叩き落とす!
ゴブリンアーチャーが居るのね。ゴブリンのくせに組織的ね。でもナンシーにそんなヘナチョコの矢なんて通じる筈ないのよ。
一連の動作に無駄が全く無い。正確無比! それでいて舞うが如くの美しささえ感じさせる剣捌きだ!
おまけに逃げようとするゴブリンや、矢を放って来たゴブリンアーチャーにはどこに持っていたのか小さなナイフを取り出して、これも急所に正確に投げる!
何本持っているんだろう?
うーん、こんな所をデビッドさんやナンシーに好意を寄せる他の殿方にはとても見せられないわね。
「今回のゴブリンは強いのかと思っだけど、取り越し苦労だったわね」
どうやらこれでここの集落のゴブリンを殲滅出来た様だ。
今回の捜索の目的はシンシアの切断された腕だったけど、今となってはジョンさんの救出が最優先になっちゃった。
シンシアの腕がこの集落の何処かにに有れば良いのだけれど。後であの掘っ立て小屋の中とか探してみよう。
「!」
ジョンさんが縛られている木の裏に回り込んで縄を剣で切るナンシー。それと同時に急に身体が開放されてバランスを崩したジョンさんの背後に素早く移動すると、後頭部に手刀を入れて意識を奪った。
これでようやく大手を振って出て行けるわね。
そう思って隠れていた物陰から出た瞬間だった。
「若女将、まだです!」
いきなりナンシーに制止される。しかもその声からしてどうやら状況はよろしくないらしい。
「どうかしたの?」
「これまでとは比較にならない強い殺気を感じます! 念の為に下がっていて下さい!」
「判ったわ。ナンシーも気を付けてね!」
「ありがとうございます」
確かにナンシーの言う通り、これまでのゴブリンとは違う殺気を感じる。
数歩下がって辺りを見回してみると、何か光っている!
「ナンシー、ゴブリンメイジがファイヤーボールを構えているわよ!」
「心得ました!」
複数のゴブリンメイジが居るのは間違いないわね。囲まれているわ。
「!」
ゴブリンメイジを見付ける事に集中して気が付かなかった!
私の背後に1番強い殺気を感じる!
「………」
そ~とっ振り返ると、体格からしてこれまでのゴブリンとは明らかに違うゴブリンが、ゴブリンには不似合いな立派な剣を構えて立っている!
これはゴブリンロード?




