漢の俺が聖女ですけど夜露死苦ぅ!!
とりあえず雑に投稿してみました短編です。他のざまぁシリーズや書籍化作品も一緒に楽しんでいただければ幸いです
魔王が世界を侵略し、女神の聖剣に選ばれた勇者が魔王を倒して世界を救う……そんなことが数百年くらいの間隔で起こる世界において、一番最近に現れた勇者ネットリは、とっても性格の悪い人でした。
十人居れば十人がイケメンと褒めるような甘いマスクの裏にはヘドロのような物欲と名誉欲、そして略奪欲が混在していて、とても皆の理想の勇者と言える人ではありません。
こんな性格を知った人たちは、皆「何でこんなゴミ屑カスのウンコタレが女神に選ばれた勇者なんだよ。やっぱり顔か、女神と言えどもイケメンに弱いのか」と思ったそうです。
しかし聖剣に選ばれてしまった者は仕方ありません。人々は唯一魔王を倒せるネットリを勇者として担ぎ上げ、色んな便宜を図るしかありませんでした。
さてさて、ここで本題に入り始めますが、勇者にはその仲間である、剣聖、賢者、聖女のジョブを与えられた者たちが居ます。
この3人も勇者同様、女神に選ばれた魔王を倒す宿命を帯びた者たちであり、勇者は彼ら3人が揃って初めて魔王を倒すことができるのです。
しかし勇者ネットリにとって1番重要なのはそこではありません。剣聖も賢者も聖女も、揃いも揃って美少女であり、故郷にそれはそれは仲睦まじい幼馴染の男の子を残して魔王討伐の旅に赴いたというではありませんか。
人の者に手を出すのが大好きなネットリが、それを聞いて黙っていられるはずがありません。元々可愛い子だらけのハーレムを築いて生涯ウハウハウキウキに過ごしたいという欲望を持っていた彼です。
「くくくくく! 大したジョブでもない雑魚どもは黙ってな! お前らの幼馴染である剣聖や賢者、そして聖女は俺様が寝取って手籠めにしてやるよぉ!!」
なんてことをネットリは考えていました。下劣です。実に下劣。まるでウンコの様に下劣です。その下劣さは最早、ウンチとオブラートに表現しなければならない程です。
そんな勇者の悪巧みなど人々が知る由もなく、やってまいりました勇者パーティ顔合わせの日。先にやってきていた剣聖と賢者をみて、勇者のテンションはうなぎ上りです。
剣聖は遠い東の国からやってきた、艶やかな黒髪が魅力的な女侍。
賢者は魔法使いの王国からやってきた、眠気眼がチャーミングな合法ロリっ子。
どちらもとっても可愛らしい、寝取るに値する美少女たちです。勇者の性欲はウッハウハ、股間の息子はお猿さんのようにウッキウキです。
(剣聖も賢者も、どちらも最高だ!! さぁて、本命の聖女はまだかな?)
聖女と言えば、お淑やかで清楚なオッパイの大きい聖職者であることが通例です。性格はともかく、体つきは関係ないだろというツッコミは受け付けません。聖女の通例と言えば、オッパイが大きいお淑やか系の美人なのが通例なのです。
そして勇者ネットリは、貞操観念がしっかりした清楚でお淑やかな美人を手籠めにするのが13歳くらいで性欲が本格的に目覚めた時からの夢だったのです。実にしょーもなくて傍迷惑な夢です。
「皆様、聖女……様? が、お着きになられまし……た?」
(キター!)
何故かやけにぎこちなく伝える案内人の事など気にすることなく、ネットリは開け放たれた扉に注目しました。
そこに居たのは、艶やかな長い金髪を特注ポマードでウルトラロングリーゼントにビシッとセットし、背中には〝怒羅魂殺戮〟とかいうちょっと無茶のある当て字が刺繍された、真っ白な特攻服を素肌の上に羽織った人物でした。
「だ……誰……?」
勇者ネットリが呆然と呟くのも無理はありません。現れたのは、想像していた聖女像とは正反対の方向に全力爆走ダッシュしたような人物だったのです。
悪鬼のように鋭い眼光はサングラスでより一層厳つくなり、身長は180センチを優に超えています。
露出した胸筋はガッチガチに硬く張っており、サラシが巻かれた腹筋はバッキバキに割れています。
そして手には錫杖ではなく木刀。それをウンコ座りしながら男らしく肩に担いでいる姿が大変様になっている……これには剣聖も賢者も呆然とするしかありません。
「王国最強の族、怒羅魂殺戮の頭張ってるツッパリってもんだぁ。今日から俺が勇者波亜鎚威仕切ってくんで夜露死苦ぅ!!」
どっからどう見ても聖女じゃねぇ。勇者はそう思いました。
聖職者どころか、今更こんな奴いねーよと言いたくなるようなゴリッゴリのヤンキーの上に、女どころか男です。人によってはナヨナヨしたイケメン野郎と捉えられがちなネットリと違い、誰が見ても硬派の塊と言える、男の中の男です。
「ど、どどどどどどどういうことだ!? 聖女と言えば女なんじゃないのか!?」
ネットリは案内役にして、勇者パーティの紋章の検分役でもあった神官の肩に腕を回し、部屋の隅まで連れて行ってヒソヒソと問い詰めました。
「私も最初はそう思っておりましたが……ツッパリ様には確かに聖女の紋章が刻まれていますし、支援魔法の腕は誰よりも優れているのは事実なのです」
「だからってあんな……!!」
「ぅおいっ!! 何コソコソしてやがんだぁ、あぁんッ!?」
「ひぃっ!?」
ビリビリと響くような地声に勇者は悲鳴を上げます。元々ネットリは勇者の紋章を得る前はただの一般ピープル、ツッパリのような人種は対面するだけで委縮してしまうくらい苦手でした。
「テメェが勇者か……ちょっと跳んでみろや!! 国王から旅の支度金貰ってんだろぉっ!?」
「だ、だだだだ誰がやるかぁ!!」
カツアゲされそうになったところを、ネットリはなけなしの勇気を振り絞って反抗します。勇者パーティの財布の紐を握るのは、代々勇者の役割。金銭的事情を管理するのはリーダーの証とも言います。
だというのに、聖女という名のヤンキーにパーティの主導権である財布を掴まされては、誰がリーダーなのか分かったものではありません。
「勇者は俺だぞ!? このパーティのリーダーは俺だ!! 只の聖女風情が歯向かうんじゃないよ!」
「頭張りたきゃ俺を倒せってか? 面白れぇ……タイマン張れやっ! 勝った方が勇者波亜鎚威の頭って事で文句ねぇだろ?」
「望むところだ! 只の支援職と勇者の格の違いを見せつけぶべばぶぼべはぁあああああああっ!?」
地の文で描写する間もなく、勇者ネットリは聖女ツッパリのデコピンでぶっ飛ばされました。勇者としての力よりも、ツッパリの素の力の方が断然強かったのです。
吹っ飛んだ際にネットリの懐から重い音を立てて床に落ちた、旅の支度金が詰まった布袋を拾い上げると、未だに呆然とする剣聖と賢者に改めて宣言します。
「つー訳で、今日から俺がテメェらの頭だ。チョーシこいてナめた真似しやがる魔王の城までブッコンでくんで夜露死苦ぅ!!」
こうして勇者パーティは、聖女ツッパリに乗っ取られることとなりました。
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はてさて、こうして聖女がリーダーとなった勇者パーティですが、剣聖も賢者も粗野な印象が強いツッパリに対して良い目を向けませんでした。この調子ならパーティの和を保つために、自分がリーダーの座に返り咲けるチャンスが来ると、ネットリは密かにほくそ笑んでいましたが、事態は思わぬ方向へ。
「ぅおいっ!! テメェら! 晩飯が出来たぞっ!! 皿に盛ってくんで夜露死苦ぅ!!」
「これは美味でござるな! ツッパリ殿、貴殿は料理が達者でござったのか!」
「美味しい……」
それは初めて野営をした時の事。日が暮れ始めると同時にツッパリは率先してテントを素早く組み上げ、ワイルドに現地調達した食材で手際よく料理を作ったのです。
「俺ぁ普段、冒険者連中が出入りしてる地元の食堂で、厨房任されてんだ」
意外や意外、実はツッパリは、こう見えて結構真面目な勤労青年だったのです。地元の荒くれたちを取り仕切る傍らで、日々の暮らしや将来の為に真面目に働き、明日無き生活を送る不良少年たちの手本となっているのです。
今回の魔王討伐の旅も、彼からすれば仕事の一環。食堂の客や、故郷の舎弟たちが安心できるよう、人類を滅ぼさんとする魔王をシバきに来たのだと言うと、剣聖と賢者は感心し、ツッパリを見る目を変えます。
「ツッパリ、おかわりってある?」
「おうよ。たらふく食ってデカくなりやがれ」
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それからも、ネットリが自らのハーレムメンバーにしようとしていた剣聖と賢者の2人が、ツッパリの評価を上方修正する機会が頻繁にありました。
「このガキの親捜してくんで夜露死苦ぅ!!」
大きな街で親とはぐれた迷子を肩車し、一日中捜しまわるという面倒見の良い一面を見せつけたり。
「今日からこのニャン公は俺の舎弟になったんで夜露死苦ぅ!!」
「ミー」
「「か、可愛い……!」」
またある時は、木箱に詰められた状態で川に流されていた、産まれて間もない子猫を川に飛び込んで救出し、飼い始めたりしました。
どうやらツッパリはかなりの動物好きらしく、彼自身も犬や猫に好かれる質のようです。最初は魔王討伐の旅に子猫を連れていくなど無謀だとも思いましたが、あれでもハイスペックな勇者をデコピンでぶっ飛ばすツッパリは、長いウルトラリーゼントに子猫を乗せたまま、木刀片手に魔王軍の幹部たちをバッサバッサなぎ倒します。
その強さはまさに鬼。聖女の回復魔法の出番はなく、子猫には傷1つ付きません。ついでに言えば、勇者ネットリが活躍する暇すらありません。
「猫乗せても一切形が崩れないって……そのリーゼントどうなってるの?」
「このリーゼントは俺の魂よ。ニャン公1匹程度じゃ折れやしねぇ」
よく分からないものの、そういう事らしいと、脳筋気味の剣聖は納得し、賢者は追及するのを止めました。ちなみにこのリーゼント、子猫を助けるために川に飛び込んでも一切崩れませんでした。
「今日からこいつらも俺の舎弟になったんで夜露死苦ぅ!!」
終いには2人が常に気にかけていた、故郷の幼馴染に魔王軍討伐の旅に付いて来られるだけの力を与え、自らのパーティ……より正確に言えば、舎弟に加えて旅に連れて行くようになりました。
離れ離れだった2組の恋人たちは苦楽を共にする旅を続けることができるようになり、これには剣聖と賢者も大喜び、幼馴染2人はツッパリを兄貴と慕うようになり……勇者ネットリのテンションはただ下がりです。
「イチゃつくなら他所でやれやリア充」
これから自分のモノにしようと画策していた美少女たちが、時間が許す限り知らない男たちとイチャイチャイチャイチャ。寛容なツッパリは気にしていませんが、ネットリからすればこれは非常に許しがたいことなのです。
「だがそれもこれまでだ……この三人まで相手の精神を完全支配できる魅了の魔道具で、剣聖と賢者を寝取ってやるぜ」
しかしそこは靴裏に張り付いたガムよりも粘着質なネットリ。使用回数制限があるものの、凶悪無比な勇者定番の魅了で寝取ろうと、さっそく魔道具を使いますが――――
「勇者波亜鎚威に全状態異常無効のバフを永久的に掛けといたんで夜露死苦ぅ!!」
「こんな時ばっかり聖女らしいことすんなよ、ちっくしょぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!」
普段は誰かが怪我する前に木刀で敵を張り倒すツッパリのまさかの行動の結果、貴重な魔道具の使用回数を2回も無駄に減らしてしまい、ネットリは悲鳴を上げるしかありません。
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それからというもの、ツッパリは各地で舎弟を増やしていき、勇者パーティはすっかり大所帯に。
「今日も魔王城目指してブッコンでいくんで夜露死苦ぅ!!」
「うぉおおおおおおおっ!! なんて渋い走りだよ!!」
「どこまでも付いていくぜアニキぃいいいいいいいいっ!!」
今やパーティ構成員全員が小型のドラゴンに乗り、パラリラパラリラ魔王城目指して爆走するヤンキー集団になった勇者パーティの先頭で、肩で風を切りながら駆け抜ける聖女ツッパリは皆のカリスマとなりました。
外見は怖いけど実は良い人を地を行くヤンキーを体現した存在。粗野なところは多々ありますが、元々面倒見が良いアニキ肌で、男気にも溢れる仁義や義理人情を重んじる好漢でもあります。世界を救うパーティで、勇者を差し置いてリーダー的存在となって、各地で活躍していれば、これも当然なのでしょう。
そんな聖女の姿を、勇者は最後尾から眺めながら、どうやってパーティの主導権を奪い返そうか、残り1回しか使えない洗脳魔道具をどう使おうかと悩んでいると、旅の道中でツッパリの故郷に寄ることとなり、そこで信じられないものをみることとなります。
「おう、ナジミ!! 今帰ったぞ!!」
「わぁ!! おかえりなさい、ツッパリちゃん!!」
何とそこには、朗らかな笑顔が魅力的な、黒髪ロングの清楚でお淑やか、それでいてオッパイが大きい、ネットリのストライクゾーンど真ん中の美少女がツッパリを1番に出迎えたのです。
「アニキ、誰ですかぃこの良い女は? アニキのコレですかぃ!?」
「え……えぇえぇぇぇぇえっ!? そ、そそそそそんな!? わ、私がツッパリちゃんのお嫁さんだなんて……!?」
「姐さん!! 誰もそこまでは言ってねぇっすよ!!」
小指を立てて囃し立てる舎弟の言動に顔を真っ赤に染める彼女の名前はナジミ。ツッパリが働いている食堂の看板娘で、ツッパリの幼馴染です。
荒くれの町で暮らしていながらも温厚かつお淑やかさを備えた皆のマドンナ的な存在であり、いつもニコニコした笑顔と気遣いを忘れない、ヤンキーたちのトップであるツッパリを唯一ちゃん付けで呼ぶ、密かな剛の者です。
穏やかな気性ながらも誰に対しても物怖じせず、誰に対しても分け隔てなく優しく、芯が1本通った気質から、別にヤンキーでも何でもないのにツッパリの地元の舎弟たちには姐さんと慕われています。
「女神様……絶対に聖女にする相手、間違えたでしょ」
ネットリがそう思うのも仕方ありません。どうしてあんな聖女としての理想的な女性が居たのに、よりによってその近くの筋肉ムキムキのヤンキーを聖女認定したのですかと、女神に恨み言をぶつけたくなるのも無理ない話です。
最初に聞いた、仲睦まじい幼馴染を残した美しい聖女という評判。これが伝言ゲームの要領で改変されて耳に届いたものであると悟ったネットリは、脱力しました。
しかしこれはチャンスだとも思いました。理想の女を憎きツッパリから寝取り、これまで勇者たる自分を端へ端へと追いやったヤンキーに復讐するチャンスだと。
ネットリはナジミに対し、最後の洗脳を使います。
「うぉおおおおおおっ!? 何だこのステータスカード!? 精神のステータスが∞ってマジっすか!?」
「オリハルコンの精神だよ、オリハルコンの精神!! こんなんどんな精神干渉系の魔法も効きやしねぇ!! やっぱりアニキの女ともなると、このくらい度胸あんだな!! 俺たちも、姐さんって呼んでいいっすか!?」
「うわあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああっ!!」
しかし、素の精神力で弾かれてしまい、洗脳魔道具は回数制限に到達して爆発四散。ネットリの野望は完全に潰えてしまったのです。
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それからというもの、勇者パーティは聖女ツッパリをリーダーとして大活躍。本来英雄譚の主人公になれるはずだった勇者の影はどんどん薄くなっていき、世界中の偉い人も、敵である魔王も聖女ツッパリに注目していました。
勇者ネットリは自分が勇者として称えられたり警戒されたりと、思い描いた未来とかけ離れた現状から逃げ出したくても逃げ出せず、肌に合わないヤンキー連中のノリに合わせられなくて、ずっと肩身の狭い思いをしながら細々と戦っていました。
「ようやく魔王んとこまで来たな……これから魔王の奴に戦争吹っ掛けてくんで夜露死苦ぅ!!」
『『『夜露死苦ぅ!!』』』
そんな日々が続いて決戦当日。単なる暴走族と化した勇者パーティ総勢100人以上は、魔王が潜む城を囲み、パラリラパラリラと騒音を掻き鳴らしながら壁や扉を蹴り、窓ガラスを割って侵入し、中に居る魔王に怒鳴りたてます。
「おらおら出てこいや魔王ちゃんよぉ!!」
「中に居んのは分ってんだよぉ!!」
「おいお前、ちょっと跳んでみろや!!」
「ひぃいいっ!? どうかお許しを!!」
魔王含め、魔王軍の者たちは騒然となりました。それはそうでしょう、勇者パーティは皆当て字が刺繍された特攻服に身を包むヤンキースタイルで攻め込んできては、城内の者に跳んでみろと脅し、カツアゲし始めたのです。
歴代勇者の中でこれほどの大人数で、かつこんな異様な集団は他にありませんでしたし、こんな連中と戦うのはこれまで勇者と戦っては死んで復活するを繰り返してきた魔王も初めてのことです。
……ちなみその中に、死んだ表情で戦っている勇者が居るのは割愛します。
しかし、それでも魔王は一応玉座で勇者を待ち構えました。魔王の最後の戦いの相手はやはり勇者との一騎打ちであるべき……そう思って堂々と玉座に座っていたのですが……玉座の魔の扉を木刀で破壊し、大勢の舎弟を引き連れて現れたのは、やはりというべきかツッパリでした。
「おぅおぅ! テメェが俺の縄張りに上等かまそうっていう魔王か。俺ぁ、勇者波亜鎚威の頭張ってるツッパリってもんだぁ。今日はテメェをぶっ殺しに来たんで夜露死苦ぅ!!」
「くくく……よく来たな勇者パーティ。我が魔王だ。…………ところで、肝心の勇者の姿が見えんようだが」
「あー? そういや、あいつどこ行った?」
「えーっと……魔王城の門を潜ったところで見た覚えはござるが……」
「ん……そう言えばこの部屋に来る前、城の端にあるトイレの前で、四天王配下の部隊の副隊長だーっていう人と戦ってたし、まだ戦ってると思う」
マジかよと、魔王は顔を両手で覆って天井を仰ぎました。そんな魔王にツッパリは1人近付いていきます。
「さぁてお前ら、手ぇ出すんじゃねぇぞ。……おい魔王!! ここは大将同士、俺とのタイマンでケリつけようぜ!!」
「その前に、1つ良いか?」
「んだよ?」
「勇者と魔王の宿命の戦いに、何で男のくせに聖女名乗ってるヤンキーがこんなに出張ってくるんだよバッキャロォオオオオオオオオオ!!」
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「というのが、私が賢者として、昔からの幼馴染だった旦那や、剣聖とその旦那さんと一緒に勇者波亜鎚威として戦った話。この後ツッパリが魔王を一対一で倒して、世界に平和が訪れたんだよ」
「へぇ……それがお父さんの若い頃の話かぁ。勇者が居ないと魔王は倒せないって話はもう完全に無かったことになってて無茶苦茶だね。それはそうとお母さん」
「んー、どうしたの?」
『コカトリスの丸焼き一丁上がりぃ!! 3番テーブルの客まで夜露死苦ぅ!!』
「お父さんって、昔からあんな調子だったんだね」
すっかり大きくなって年老いた猫を膝で抱えながら、店の方からリーゼントを揺らしながら叫んでいるであろう父に呆れる娘の言葉に、妊娠して大きく膨らんだ腹を抱えた、妊娠休暇中の食堂の女主人は、遊びに来ていた賢者と呼ばれた合法ロリと顔を見合わせると、心底可笑しそうに大笑いした。
今年は川〇少女がエクサ萌えた。
一体何が言いたいのかと言えば、黒髪清楚で朗らかな幼馴染みは、一見怖いけど実は良い人なヤンキーがよく似合うという話。
後ついでに、胸糞悪い寝取り勇者に寝取らせない話を書いてみたかったという個人的欲求。今日の朝に構想が浮かび、遊びを挟みながら4~5時間くらいで執筆しました。