出会い2
今日もいつもと変わらない朝を迎える。次の町への路銀を貯めるため、ギルドへ向かい仕事をもらう。ギルドは朝が一番人が多い。
「今日はデカイ獲物を狙うか」
「あんまり前に出すぎないでよね。あんた危なっ
かしいんだから。」
「大丈夫。怪我したら俺の治癒魔法で直してやる
よ。」
色んなパーティが目に入る。1人でいるのは私くらいだ。寂しくないとは言わないが、今さら一緒に冒険する仲間を見つけるというのも、なかなか面倒なことだ。
貰った仕事もいつもと変わらない、町の近くの森に生息するモンスターの狩りだ。モンスターは多すぎても少なすぎても森の生態系を崩してしまう。そこを冒険者の私たちがある程度管理するのだ。そうすることで町を守ることにも繋がる。
毎日変わり映えしない1日がまた始まることに関して、私は何も考えないようにしている。そんなことを独りぼっちの私が考えても、虚しくなるだけだから。
森の中でいきなりモンスターと遭遇しても常に冷静に対処できるほどの経験は積んでいるつもりだ。だが、今回は久しぶりに心臓が飛び出しそうになった。だって、モンスターがウヨウヨいるこの森に丸腰の女の子がレオハウンドに追われているのだから。
私はすぐさま腰から剣を抜き、彼女たちの方へと走る。
女の子が転び、ハウンドが今にも襲いかかろうとしている。
(間に合えっ!!)
地面を蹴り、剣を構える。そして今にも振り下ろされそうなハウンドの腕にめがけて、力の限り剣を下から上へと振り上げる。腕が宙を舞い、相手の動きが止まる。その隙を逃さず足を斬り落としてバランスを崩し、背後から首を取る。
ここまで慣れたこととは言え、ここまで冷や汗をかいたのは久しぶりである。この森に丸腰で入るというのは自殺を意味する。
「こんな森に丸腰でいるなんて貴女正気なの!」
「っえ、……あっ、あの、すみません」
つい口調が強くなってしまう。後悔した時には彼女はもう涙目である。
「あの、ごめんなさい…強く言い過ぎたわ。そ
の、動けるかしら?」
「大丈夫です………うっ!」
立とうとして足首が腫れているのに気がつく。
「待って、足をひねっているんだわ。治すから足
を見せて」
「え?でもどうやって?」
「普通に治癒魔法よ?私も使えるから安心して」
黒髪の少女は何故か怪訝そうな顔をしていたが、特に気にせず、魔法を使う。体内の魔力を首のネックレスにはめられた魔法石へと流す。そして治癒魔法が発動する。足の腫れはすぐに治る。ついでに転んだときのもものであろうケガも治す。
「っん!んんっ!」
「どうしたの?まだどこか痛む?」
「い、いえ!大丈夫です!」
黒髪の少女は少し体を震わせ、顔を赤らめてた。なぜかその顔は少し扇情的に感じた。
治療が終わり、改めて自己紹介をする。
「私はエレナ ブルックリンよ。」
「黒木ハルです。」
クロキハル、どこまでが名前だろうか。全く聞いたことのない名前だ。異国の人だろうか。
「あの、クロが名前でいいのかしら?」
「いえ、名前はハルです。あっ、でもクロって学
校とか部活でも呼ばれてるし、それで呼んでく
れても大丈夫ですよ。」
なんだか聞きなれない単語が出てきた。ブカツ?学校は魔法学校のことだろうか。すると彼女が訪ねてきた。
「あのさっきのヤツは何なんですか。あとここっ
てどこですか?あとエレナさんはアメリカの人と
かですか?」
「さっきのはレオハウンドよ。ここはカーデフの
街の近くの森よ。アメリカが何かはわからない
けど、とりあえず私たち同い年ぽいから、そん
なにかしこまらなくていいわよ。」
私の話を聞いたクロと言う子は少し青ざめていた。やはり異国の人であるのは違いない。背丈は私と同じくらいで、肩まで伸ばした綺麗な黒髪、なかなか可愛らしい顔だ。種族は人間だろう。
「あ、あの、わ、わたし、日本っていうところか
ら来て、あの、その、」
ニホン?聞いたことのない国だ。それよりクロの顔が真っ青になり、パニックで今にも泡を吹きそうだ。
「お、落ち着いて、森の中じゃアレだし一旦町に
戻ろう。」