出会い 1
「ハァハァハァ………うぐっ」
私は黒木ハル。この春から高校二年生。確か、一学期の始業式を終えて帰宅しようとしていたのだが、今は森の中を走っている。
「グルルルウゥ………バウバウッ!」
いや正確には逃げている。あのオオカミのような犬のようなヤツから。
私は足と体力には自信がある。とは言えアイツと出会ってから20分近く追いかけっこをしている。木を利用してうまく逃げるが、流石にもう体力の限界。制服じゃあ走りにくくてしょうがない。でも止まらない。止まれない。だってアイツ、絶対2メートルはある。まあ普通の犬ではないな。細い木なんか避けずに突進していく。
「ひゃあっ!」
最悪。足が木の根っこに引っかかった。それだけなら良かった。走ってたから勢いあまって2,3回くらい体が転がる。もう無理。体が痛すぎて動かない。
アイツは獲物が諦めたと思ったのだろうか、ゆっくりと私に近づき、仁王立ちになる。確定した。コイツは犬やオオカミなんかじゃあ無い。腕を大きく振り上げ、鋭いツメを私に向ける。それで私を仕留めるつもりだろうか。それなら私は死ぬのか。
友達と学校から帰っていたはずなのにイキナリ森でコイツに追われる。そして今から殺されようとしている。頭が追いつかない。
「ハア…ハア……なかなかヘヴィだぜ……」
腕を振り下ろし、ツメが私の目先まで迫ったとき。
その腕は血を撒き散らしながら空をまう。
目の前に桜色の髪の少女が現れる。その少女は血の付いた剣を構え直し、アイツに斬りかかる。
アイツは痛みで甲高い声を上げる。そうしている間に右足が体から離れる。そして左腕が、最後に犬のような頭があったところから血が噴水のように吐き出す。数秒の間にアイツは少女によってバラバラにされてしまった。
少女は剣に付いた血を振り払い、こちらに向く。どうやら私と同い年か年上だろう。
「こんな森に丸腰でいるなんて、貴女正気なの?」
「っえ、……あっ、あの、すみません」
いきなり怒鳴られるとは思わなかった。頑張って平静を保っていたが、私はもう色々限界だ。泣いちゃいそうだ。