なろう系ゲームだった「戦国立志伝」
歴史シミュレーション好きの戯言です
あなたの好きな歴史シミュレーションゲームは?
そう問われたなら、みなさんは何を思い浮かべるでしょうか。
渋いチョイスのオールドファンならば、システムソフト・アルファー社の「天下統一」をあげる人もいるでしょう。
STEAMで海外製の歴史シミュを嗜んでいる、というPC党ならば、パラドックスインタラクティブ社の「ヨーロッパユニバーサリス」や「ハーツオブアイアン」、「ヴィクトリア」などが思い浮かぶかもしれません。
お金がない頃にフリーウェアを遊んでました、という方であれば、「戦国史」や「天下戦国の上」が、今から十年ほど前にネット界隈で盛り上がっていたことを懐かしく思い起こされるはずです。
しかし、歴史シミュレーションゲーム愛好者にとって避けて通れない存在が残っています。
そうです、コーエーテクモゲームス社の「信長の野望」シリーズと、「三國志」シリーズです。ちなみにかつて第3のシリーズと呼ばれた「提督の決断」は死にました……。
ともかく、信長の野望シリーズ第14作のスピンオフ。
信長の野望14.9とでも呼ぶべき「信長の野望 創造 戦国立志伝」について語っていきたいと思います。
まず戦国立志伝を語る前に、その元となった「信長の野望 創造」について振り返ってみましょう。
この「創造」ですが、現在でこそ評価が低くなっているものの、発売当時は「信長の野望」としてかなりチャレンジングな作品だったように思います。
どんな要素がチャレンジであったかと問われれば、過去作のゲーム性から離れ、「外交」の比重を大きく取り、プレイヤーを思考させる海外タイトル寄りな作りへ変わっていたのです。
「創造」で採用された外交要素で最も大きな変更点、それは「外交姿勢」と呼ぶものです。
外交姿勢は、他勢力の機嫌、と言い換えることもできます。贈り物をしてご機嫌をうかがっていれば信頼され、疎遠な勢力と領地が接していれば敵視され、戦争をすれば断絶します。
それら外交姿勢の変化によって、婚姻同盟を結べるほど仲良くできたり、包囲網を結ばれて攻め込まれたりと、状況が簡単にひっくり返る要素でもありました。(細かく言えば、外交姿勢は8段階。外交交渉には信用値も影響しました)
ちなみに「創造」の外交姿勢に似た要素が、パラドックスインタラクティブ社製のゲームにはあり、バットボーイレート (BBR)などと呼ばれていました。(パラドックス社が先行していたので、創造側が似ていると呼ぶべきかもしれません)
パラドックス社製タイトルのBBRは、その名の通り、どれだけ「悪いヤツ」なのか、を表す数値で、プレイヤーには目に見えないマスクデータとして存在しました。プレイヤーが他国を攻めればBBRが上昇。
開戦する名分の有無や、勝利したとして占領するのか、しないのか。プレイヤーの判断次第でBBRが上昇する要素は複数ありましたがいずれにしても欲望丸出しの行動をとれば、BBRが上昇しました。
このシステムはCOMの他勢力がプレイヤーを「あの勢力は悪いやつだ」と警戒している表現であるばかりか、プレイヤーが一切触れていない他勢力であっても、次第に敵対することになる効果を発揮して、プレイヤーの一人勝ちを許さない要素なのでした。
「創造」は、そういった外交要素の強化によって、小勢力でも大逆転を狙うのが面白さであると同時に、地政学的、人材的に将来有望な大名家でプレイしていても、急いでクリアまで持っていこうとすれば、COMの他勢力が警戒し、滅ぼされるリスクも有り、他勢力を観察しながら隙をつく楽しみ方を持ち込みました。(外交要素が強力すぎるために問題視もされましたが……)
それまで、信長の野望と言えば、「優秀な家臣を集めて内政」、「国力で上回ったら戦争」。そのサイクルにマンネリを感じていた既存ユーザにとって、外交次第で小勢力が大勢力を喰うことのできるダイナミズムが新鮮に写りました。
そして、満を持して発表されたパワーアップキット。(以下PK)
コーエータイトルではおなじみの拡張コンテンツの登場によって、やり込み要素が増え、外交至上主義の創造に合わなかった過去作ファンも満足、不動の過去最高傑作へと駆け上がりました。
めでたしめでたし。
いやいや、本題はここからです。
「信長の野望 創造」は、「創造PK」となり、最後に「創造 戦国立志伝」が登場したのです。
コーエーファンにとって、創造の続編は喜ばしいもので、PKのあとに続く展開は初めて。その上、立志伝。
そう、立志伝だったのです。
いつのまにかフェードアウトしてしまったものの、コーエーで屈指の人気シリーズ「太閤立志伝」を彷彿とさせるタイトルでした。
「えっ、評価の高い創造PKのシステムと、あの立志伝が合体だって!?」
コーエーファンは飛び上がりました。期待値は発表直後から最高潮。
そして迎えた発売日。
期待は戸惑いへ変わり、すぐに失望の声が溢れたのです。
「なんだよ、これ。こんなの立志伝じゃねえ」
「バグだらけじゃん」
「PKにあったシステムが、なんで無くなってるの?」
恐ろしいほどのバッシング、低評価の嵐だったのです。
筆者も発売日に遊びましたが他勢力の大名ーー北条氏政ーーが急に、
「未設定」
と話しかけてくるバグに遭遇し、思わず吹き出したものです。
おそらく、セリフの設定が誤って設定されていたのだと思いますが、なかなか趣深いメタ体験だったように記憶しています。
実際のところ、バグが多かったのは事実のようで、修正パッチが大量にリリースされ、てんやわんやが目に見えるような有り様であったのですが、パッチが一通り当てられ終えてからプレイしてみるとこれが思った以上に面白い。
たしかに、創造無印や創造PKとは違う。
そもそもそれらは大名プレイであり、ひとりの武将の視点でスタートする戦国立志伝はプレイ体験が全く異なりました。
そして戦国立志伝は創造PKよりも後に発売されてはいたものの、創造無印を元に開発されていたため、PKとの関係は親子というよりも兄弟。そこまで知らぬプレイヤーにとって、前バージョンのPKにあった機能が実装されていなかったことも、批判が増幅された要因だったでしょう。
また戦国立志伝は、太閤立志伝シリーズの作品とも大きく異なりました。
太閤立志伝はコーエーの定義によれば歴史シミュとRPGの融合した「リコエイションゲーム」。プレーヤーは主人公武将を鍛えに鍛えて活躍させる、というRPGのレベル上げに相当する要素があり、俺tueee、主人公最強、を武将単位で行う仕組みだったのです。(戦国立志伝にも成長要素はあるものの、太閤立志伝とは全くの別物)
戦国立志伝は、主人公が立身出世するゲームである。
その一点において太閤立志伝と共通するものがありましたが、創造無印のシステムをもとに立身出世を行うというゲーム性だったのです。
シミュレーションゲームとリコエイションゲームの中間とはなんだったのか。
その部分が、戦国立志伝の評価をなんとも妙な具合にしてしまった元凶だったのです。
戦国立志伝が主人公武将に俺tueeeさせ、プレイヤーを楽しませるために用意したものは、領地と呼ばれる「箱庭」でした。
領地では施設が建設でき、施設を建設するほど、主人公武将の収入が増え、兵や兵糧が手に入りました。すでにお気づきの方もおられると思いますが、いわゆるブラウザゲームによくある要素とも言えます。
これに古参ゲーマーの多かったコーエーユーザーが怒りました。
ブラウザゲームやソーシャルゲームへの批判が今より盛んだった頃の話です。
国産歴史シミュレーションゲームの雄であり、最後の綱である信長の野望までもが、
「そっちへ逝ってしまうのか」
という感情が爆発するように批判が向けられました。
箱庭はプレイヤーにだけ与えられ、他のCOM武将には無く、シミュレーションゲーム好きにとっては不当なほど主人公が優遇された不公平な内容で、
「こんなの勝ってあたりまえじゃん」
といったように、何を愉しめばよいのかわからなくなります。
また、リコエイションゲームの愛好者にとっては
「もっと自由に武将以外でもプレーしたい。
戦国時代にも武将以外の職業はあったでしょ。
っていうか、太閤立志伝5では色々できたじゃん」
といった塩梅です。
太閤立志伝5が2004年に発売されてから、続編の絶えた飢餓感も手伝って、評価は落ち、実際のプレイ体験よりも低評価になったのではないか。
筆者はそのように思うのです。
話は変わりますが、小説家になろう・小説を読もう様には、とても面白い歴史作品が沢山存在します。筆者も楽しく拝見させていただいていますが、歴史の中に内政による歴史改変や、科学を応用したチート要素を紛れ込ませて、化学変化を見るような作品も見受けられます。(筆者の好物でもあります)
筆者が戦国立志伝を遊んで面白いと思うのは、その内政チート作品を読むような楽しさを感じてのことではないかと、思っています。
箱庭が主人公だけに与えられた長所で、それを利用して成り上がる。
これはもう、コーエーが用意してくれた「公式チート 」そのものではないか。
コーエーのホスピタリティ(おもてなしのこころ)から、
「どうぞ、これで俺tueeeをやっちゃってください」
そのようにお膳立てしてくれている。
行き過ぎた解釈かもしれませんが、そう受け止めると、
「これってなろう系ゲームなのかも」
と俺tueeeが大好物の筆者は、キャラを変え、シナリオを変えては遊び続けるのでした。
○
もしも、これを読んでおられる方で、
「創造PKか、戦国立志伝か、どっちを遊んでみようかな」
とお悩みであれば、シミュレーションゲームを遊びたいのか、俺tueeeしたいのか、前者であれば創造PKを、後者であれば戦国立志伝をおすすめします。
これから戦国立志伝を遊ぼうか、とお考えのかたがおられましたら、上杉家の狩野秀治が重宝するかもしれません。寿命設定のミスなのか、いつになっても死にません。
史実では病気がちで短命ながら、直江兼続と対をなして語られる有能なイケメン武将が寿命で死なない。これは大きい…w