復活
アランと会った次の朝、アンジーにテキストメールを送った。
返事はなかった。
その夜、DJの仕事が終わってから、アンジーにもう一度テキストしてみた。
今度はすぐ返信があった。
「カイル、これからあなたのアパートメントに行ってもいい?」
「なんか食べた?」
「いいえ、あなたが食べるなら付き合うけど。」
「じゃ、ヌードルでも買ってく。」
「わかった、じゃ後で。今日は飲まないからね。」
「オーケー。」
部屋に着くと、アンジーは先に来ていた。
二人とも何も語らず、しばらく固く抱きしめあった。
彼女は言った。
「最初に言っとくね。今日は愛し合わない。」
「わかってる。」
「私、しばらく腑抜けかも。」
「君らしくないね。」
「アランのこと、私が決断してのことだけど、、、だんだん、空虚感が広がって。カイル、ごめんね、今日はたくさん泣くけど、慰めないで。涙が枯れるまで泣きたい。」
彼女は、僕の胸の中で、肩を震わせて泣いた。そして彼女の悲しみが、僕の胸の中に身押し寄せてきた。僕は彼女の背中をさするしかすべがなかった。
アランは彼女の中でどれだけの存在感があったのかを思い知った。
「アランに会ったよ、昨晩。」
「そう、元気だった?」
「うん、彼は君から飛び立ったようだね。」
「そう、私の半分がなくなってしまって、、、ずっと一緒だったから、凄い喪失感なの。」
「アンジー、僕が君を守るから。」
「ありがとう、カイル、そうよね、これはいつか来ることだった。そしてそれを仕組んだのも私なんだから、成功したってことよね。」
彼女僕を見て力なく笑った。
「ねえ、私も食べる。一緒に食べようか。」
とはいえ、彼女は思いの中に浸り、無言でヌードルを口に運んだ。涙がとどめなく頬をつたう。
「ねえ、アンジー、話変えるけど、いい?」
「なあに?」
「僕さ、DJのスタイル変えたいと思ってるんだけど、今夜もトライしてみたんだけど、どうも既存のスタイルに帰っちゃうんだな。次のDJの時、クラブに来てくれない?僕の前で踊っててくれればいいんだけど。」
「いいわよ。いつ?」
「明日の夜、レイモンドで。9時から。」
「気晴らしに踊るのも悪くないよね。付き合うわ。」
「ありがとう。それとね、アランが独り立ちして、僕は嬉しいし、アンジーは次のミッションを作ればいいじゃない。もっと僕を愛すとか、他の男を愛すとか?」
彼女はアランと同じような、不思議な微笑みを見せた。
「えっ、カイル何言ってるの?私はあなたに夢中じゃない、これ以上何を望んでるの?」
「君にはアランを補足する愛情の対象が必要なんだろ?」
「で、他の男なんて言ったの?、、、、、もし、他の男を愛すとしても、カイルと同じ次元でではありえないから、とりあえず心配しないで。そうね、、、あなたが言ったこと、当たってるかも。」
彼女の機嫌が少し上向きになったようだ。青白い肌に少し赤みが差し、青い瞳に輝きが戻ってきた。
彼女は僕を見つめて言った。
「カイル、次のプロジェクトに取り組むしかないね。あんまり悲しくて、感情に溺れて、やりたいと思っていたことも、忘れてた。」
「愛してる、アンジー。君は魔法使いなんだよ。君の世界を創れる。」
「そうだったわよね。今ね、思いついたんだけど、私もっとカイルと一つになりたい。つまり、メンタルに。なんかできそうな予感がする。」
「わっ、それは恐ろしいね。でも僕は付き合う。君の世界の中に生きる約束だから。」
彼女は笑った。そして顔の涙のあとを服の袖でぬぐった。
そう、今までアランが占めていた、彼女の世界の中に入っていく。これが僕が求めていたものだろうか?まあ、どちらでもいい。後でわかることだ。このまえのセッションで、彼女の世界の中で創作するのが、至上の喜びに感じられた。アランが言ってたっけ。僕がどこまで進化するかが楽しみだって。
アンジーは僕のベッドに横になっていたが、いつしかまどろみ始めた。きっと昨日は寝ていないのだろう。僕はベッドの上に転がって、彼女の背中を抱いて、彼女の背面に体をそわせた。
そして、どんなに彼女が必要かをかみしめていた。
美しい、運命の恋人よ、
未来はどうなるのかわからないけど、
君とすべてを経験したい。
この愛が真実であることを証明したい。
愛する人よ、
僕は一度死んで、蘇ったんだ。
君と生きるために、アンジー。
この魔法が解けるまで。
いつまでも。
END
ファンタジーだけど、現実。現実だけど、ファンタジーの世界。
現実を超えるには、ファンタジーを大きく描いて、努力、挑戦するしかない。
そういう、あいまいな世界に、真剣に生きる恋人たち。
キャラクターは、いつも私と一緒に生きています。