恋がたき
アンジーとの愛をとって、僕は一切の自分の過去を葬った。
アンジーの世界は音楽と映像とファンタジーの世界。
僕は、歌とか楽器の才能はないが、若い時からDJにあこがれていた。自分の作品もたくさん作っていた。これだけが、只一つの過去からの遺産だ。
AZCのプロデューサーの仕事に慣れるまで、アンジーはいつも僕に突然、逃げられない課題を与えて、この世界の生き方を教えた。課題をこなすのが僕の必然だった。
また彼女はこうも言った。
「じゃカイル、そんなに好きならDJも物にしたら、命かけてやってみたら?」と。
僕は、それまでの趣味という言い訳をやめて、全身全霊で取り組んでみて、今では少しは人気があるDJになった。僕は本当は音楽が好きなんだ。
そして、次のアンジーの提案は、彼女が書いた映画台本の主演をすることだった。
台本は、彼女が、僕の過去を伽噺的に創作したものだったが、それをうまく映画プロダクションに売り込み、彼女の魔法を使って、僕を主演に抜擢した。
映画がクランクインする前に、僕を露出するためのあらゆる手段を講じ、ある程度認知されるようになっていた。そして壮絶な演技指導を受け、映画の主役を必死で演じた。
もともと、僕自身の過去の人生を描いたようなものだったし、僕は客観的に自分の過去を振り返り、乗り越え、御伽噺として葬った。
2人の自分がいるような錯覚に陥りながら、自分としてはかなり苦しい戦いだったが、演じ切り、クランクアップまでには、やっと平静な自分を見つけられた。
つまり過去が清算できたというわけだ。その映画は、また彼女の魔法で、予想外に上等に仕上がり、映画祭にも出品されるレベルの出来栄えだった。
僕は新人俳優ということで話題をあびた。僕自身は俳優よりもDJの方を極めたいと願っていたのだが。しかし、僕にはAZCの契約書にはない彼女との無書面の契約があったのだ。
アンジーの世界で生きたければ、彼女の助言に従うこと。それが僕らの愛の契約だった。
またある日、アンジーが言った。
「カイル、あなたは、自分が有名人であることを少し認識したほうがいいと思うわ。そろそろセレブ界にデビューするときなんじゃない?」
「僕はDJの方を本業にしたいんだけどな。」
「それは、それでいいわよ。でもワンランク上のパーティに行ってみない?今まで出会わなかった人たちと知り合えるわよ。」
「でも高級な人種は、僕の分じゃないと思うな。」
彼女はいつも僕に有無を言わせない。その瞳は優しく僕を見つめてはいるが。
「カイル、あなたはランクアップするべきじゃないかな?私がいうのは、つまり、あなたが目指している人間の仲間に入るってこと、つまり自分の才能を発揮して、他の人をより多く幸せにする人たちの仲間になることだけど。」
「それじゃ、つまり、そこで僕の手本になる人たちに会えるというの?」
「そういうこと。いつ会えるかわからないけど、興味あるでしょ?そのために、あなたはまた新しい要素を身につけなくてはならないけどね。マナーとか社交術とかね。」
「また、映画の時みたいに、僕になんかきつい努力を強いるわけだね、アンジー。」
「自分を変えるのは楽しいでしょ。だってやる気になればできるんだもの、カイルは。」
「わかった。行くことにするよ。」
また僕は彼女の魔法にかかってしまった。
そして、僕はそのセレブ界にデビューする特訓が始まった。そのたぐいのパーティのルール、社交のルール、マナーを叩き込まれた。服も高級なブランドものを幾組か調整した。まるで映画に出るみたいだ。
アンジーは楽しそうに言う。
「だって、あなたは今は自分でそれが買える身分なのよ。自分にふさわしいものをそろえなくちゃね。」
「君は僕を作り変えるてるんだね?」
「そうかな? だって、あなたは私の世界に生きることを選んだんだから。これは私たちが付き合い続ける条件のようなものじゃない。嫌なら、、、自分の好きなようにすればいいわ。変わらなければいいわ。私を理解することもできないと思うけど。」
彼女は悪戯っぽく笑った。
「それが君の愛なんだね。」
「そうよ、あなたは私を選んだ。うれしかったわ。だからお返しに協力してるのよ。」
「ありがと。」
...................
その夜、サボイホテルでのサー・スコットの60歳の誕生パーティには正装で出かけた。見た目は似合っていたが、僕は新しい服装の中で自分を見失っていた。
これは映画とは違うんだ。台本はないし、初めての人達ばかり。緊張して、周囲を伺い、彼女の振る舞いを見落とさぬよう集中しようとした。アンジーのやるとおりにすれば間違いがないはずだ。
彼女のいうセレブ界で、アンジーを知らぬものはいない。皆が彼女に微笑み、挨拶し、語り掛けた。アンジーは僕を新進俳優、DJとして紹介した。誰も僕の映画のことなど知らなかった。またDJの音楽など聞いたこともない人種だった。
僕は微笑みながらも、内面はひどく委縮して、落ち込んでいた。
グローバルに活躍している大物ロック歌手のエンが正装で、ペネロペ・クルズに似た美しい妻を伴ってきていた。彼は遠くからアンジーの名を呼び、二人は走り寄って親し気にハグを交わした。
それは僕の胸になぜか痛みを感じさせた。彼は僕を見て一瞬、何者であるかを探るような表情を見せたが、それはすぐに大きな笑みに代わり、両手を広げて僕の存在を受け入れた。彼はいい香りがした。
アンジーは僕を彼に紹介し、彼は妻エリーを紹介した。
僕は内心を隠し、演技で快活さをふるまって言った。
「エン、あなたに会えるなんて本当に光栄です。ずっとあなたの音楽に夢中だったんです。」
それは真実だった。彼は長年、僕のヒーローだった。彼女とハグするまでは。
エンも社交的微笑みを浮かべて、言った。
「こちらこそ。でも未来は君の方が長いからうらやましいよ。俺なんかより、もっと高く飛べるさ、君はね、カイル。」
「とんでもない、エン。あなたの才能には死ぬまで及びませんよ。」
彼は頭を横に首を振り、微笑んで僕を見つめ、何も返さなかった。
エリーがアンジーに言った。
「私こそ、ずっとあなたのフアンなのよ、アンジー。お会いできて本当にうれしいわ。私はこういう堅苦しいパーティは苦手なんだけど、今日はね、主催の方の誕生祝いということで、エンが行かなきゃならないというので、しぶしぶ来たの。あなたにお会いできて本当に来てよかったわ。」
アンジーは言った。
「私こそ、光栄よ、エリー。あなたは公の場所にはあまりお出にならないのでしょ。こんなに美しいのにもったいないわ。」
「ありがとう、そういってくださって。そうなの出不精で。だからね、今日もこのパーティに来てる方、誰も知らないのよ。お誕生日のサー・スコットにご挨拶したので、つまらないからもう帰ろうかと思っていたところなのよ。」
アンジーは親し気に微笑んだ。
「あら、私がご案内するわ。みんな実はあなたのような美しい方とお知り合いになりたいと思っているはずよ、保証するわ。」
「ありがとう。本当にあなたって気さくな方ね。優しいのね。そんなに成功を手にしているのに。」
「それは、ご主人にはかなわないわ。そして、彼は今でも、とても謙虚じゃない?」
そうアンジーは言って、僕とエンに目配せをして、エリーと共にとパーティの人波の中に消えた。
エンと残された僕は、胸の奥でうずくものの正体が嫉妬心だと知っていた。アンジーは彼と関係があったに違いない、直感的に二人のハグからそう感じた。このセレブ美男に僕は所詮かなうはずがない。
例えエンに妻がいても、そんなことはこの世界では関係がない。同様に、アンジーには僕いても、エンと関係がないということもないだろう。長身で鍛えられたホットな体型と、クールな顔立ちで、世界中の女性を一瞬にして引き付ける魅力。どう装っても幼く見える僕に較べたら。
アンジーは僕を彼に引き会わせたかったのだろうか。何の目的で、、、、
エンが僕の不安げな顔を覗き込んで、優しく話しかけてきた。
「彼女は魔法を使うよね?アンジーのこと。」
「えっ?ええ。そうですね。」
「やっぱりね。君も彼女の魔法にかかっちゃったんだね。その眼を見ればわかるよ。」
大物シンガーと会話することに戸惑いを感じた。
「だって、僕を映画スターにしてしまったでしょ?でも本当は僕は俳優より、DJのスターになりたいんだけど。」
「音楽が好きなの?」
「小さいときから、音楽が好きです。でも歌は下手だし、ギターも弾けない。キーボードだけは弾くんだけど。」
エンの表情は柔らかくなり、僕を受け入れて優しく微笑んだ。バラードを歌うときのような優しい顔。すべての女性を魅了する黒い瞳と甘い唇。
エンは続けた。
「はっきり言って俺は少し君に嫉妬しているんだ。アンジーのボーイフレンドなんて。でもこういう疼きが創造力を掻き立てるからいいんだけどね、だからすごく君に興味がある。」
彼の言葉に、僕は少し戸惑いながら返した。
「えっ、あなたはすべてを持っているように見えるし、僕なんか小物ですよ。」
「すべてを持っていたら終わりだよ。さて、どういう風に彼女は君に魔法をかけたんだい?」
「そんなこと僕に聞いてくる人は初めてです。」
相手も知りもしないのに、こんな会話を仕掛けてくるエンの大胆さに面食らっていた。
「君が、アンジーが魔法を使うことを知っているからさ。」
「…ええ、.彼女は普通人間が不可能と思うことを、不可能で無くすんだ。アンジーの世界で生きると、過去の自分とは全然別の人間を生きられる。気が付くと彼女の言葉通りの自分になっている。今日もこんな服着て。」
「は、は、は、そうかもしれないね。似合ってるよ。」
エンはしばらく自分の記憶を探っているようだった。
「実は俺もね、成功を手にして誰もが感じる不自由にとらわれていたころがあった。そんな自分から抜け出したかった。創造力もさび付いて、このままいけば情熱が底をつき、倦怠と惰性の人生しか見えなかった。いわゆる軽い鬱、で、仕事から離れて、しばらく自分を探していたことがあった。」
「そんなことあるんですか?あなたにも?」
「そう、誰にでもそういうスランプは来ると思うな。自分のオーラが最低の時に彼女に会った。暗くよどんだ世界の中で一粒の真珠のように煌めいていた。
アンジーは、田舎のダイナーで会ったんだが、普通の娘の様だった。彼女はどんな姿にもなれるよね。
アンジーは、俺のふさいだ心にそよ風のような爽やかなものを吹き込んだ。金の粉?光?愛?
彼女の語る言葉で、魔法の呪文で、自分の心の中に埋もれてた真実の自分が、次第に表面に浮上してくるのを感じた。今でもその感じをリアルに呼び起こすことができるよ。」
彼は、ウェイターが差し出したシャンペーングラスを2つ取り、一つを僕に差し出して、グラスを鳴らした。
「君ならわかるよね?」
エンの目はうるんでいた。僕も目がしらに温かいものを感じていた。
「新しい自分を見つけたような気がした。目の前の現実から逃れて、もう一人の自分になってに生きられるような気がした。そして俺はそうしないと未来がないことを知っていたから。180度、俺の考え方を変えてしまったね、彼女は。
自分が二人いるようだけど、そうではない。新しい自分は本当の自分で、今までの自分と同時に存在し、双方をコントロールしている。」
「なんか僕には難しくてよくわからないんですが、今の話。でもなんか感じるものがあります。」
エンは軽く笑った。
「君の場合はどんなふうに魔法にかかったの?」
彼は僕に語るように要請した。
「僕の場合は、逃げられないとあきらめていた人生を捨てるように彼女が言ったから、一度死んだんです。そして彼女のいる世界で生きてます。」
「彼女の世界は計り知れない。たぶん彼女は、出会った者に、そういう新しい人生を与えてるんじゃないかな。」
「そうかもしれない。僕も新しい世界で、新しい自分を創っているのかもしれない。自分を変えていくのって面白いですよね。やってみると案外出来るし。」
エンは煌めく黒い瞳で、僕を見つめた。
「やはり、君って面白いね。可能性に満ちているよね。彼女が目をつけるのも無理はない。」
この言葉が胸に響いて、僕はエンに気を許してしまった。思わぬ言葉が出た。
「じゃ、思い切って聞きますけど、、、彼女を愛していたんでしょ?今も、、、愛しているの?」
「もちろんさ、、、俺のディーバだからね。」
「ということは、、、僕はあなたの存在も受け入れなくてはならないのかな?」
「それどういう意味?君は彼女の今の恋人でだけど、、、それと俺とは関係のないはなしだ、、、
じゃ、ちょっときついこと言うけど、アンジーは誰のものでもないんだ。君が彼女を所有することはできない。彼女を愛するすべての者のものだから。」
僕は彼から顔をそむけた。その考え方を認めたくはなかった。
もちろん、アンジーは僕だけのものであってほしかった。しかし彼女はそんな約束を僕には一度もしていない。今まで避けていた、抑えることができない苦痛で顔が引きつっていた。
「君はまだ若くて、純粋だね。だから彼女を自分だけのものにしたいだろ?でも彼女はさらに純粋さ。その個体を超えて。愛は無限だからね。」
「僕にはきつすぎますよ。ちょっと耐えられそうにない。」
彼は僕の肩を引いて、人気のないバルコニーにいざなった。
「カイル、はっきり言って、彼女の魔法にかかった君がほっておけない。君の苦しみもわかるんだ。」
「、、、苦しみ? というより、今僕は魔法の中に生きていて、これって夢から覚めるように、いつか現実に突き落とされる時がくるのかと思って、それが、、僕にとっての恐怖なんです。」
エンは不思議な微笑みを浮かべてい言った。
「いや、彼女は言ったことがある。これは全く創造的な世界で、俺たちが創造を放棄するまで魔法は解けないと。
他の言葉で言えば、創造すること、既成概念の限界を超えるのが俺たちアーティストの使命なんだよ。
この世の法則に縛られない世界に飛躍することが仕事さ。」
「それって、ファンタジーですよね。」
「は、は、は。そうだね、でも、こちら側こそがリアルで、本物なのさ。普通の人間はまだ気付いていない。今、そんな生き方してるんだろう、君も?」
僕が頭の中が書き回されたような、かき回されて水が透明に澄んでいくようなそんな感じを味わっていた。
「よくわからないけど、今日はここに連れてこられた。そしてあなたに会った。あなたの考え方を聞いた。また、なんかが変わってきている。化学反応みたいに。僕はどこまでいくんだろう? これは普通の世界では、そうないことですよね。」
エンは一瞬、厳しい視線で僕を縛った。
「えっ、普通?、、君は普通に生きたいの、カイル?、、、何を言ってるんだ、君は、全く。」
彼を怒らせたのか?失望させたてしまったのか?
「僕はシンプルな人間なんです。わかったふりをしたくなかったから。」
エンは表情を緩めて言った。
「例えば、小説を読むときや、歌や音楽の世界にのめりこんでいる時なんか、まるで現実から離れて、その架空世界を生きているだろ。それがもう一人の自分さ。それを認識していないのが、普通の人間で、認識しているのがもう一人の自分。」
「でも歌なんかは自分の体験を重ね合わせて、作ったり、聞いたりすしますよね。」
「でもそれは、現実ではない。もう一つの世界なんだ。これがアートさ。理想を描いてるだろ。」
「理想?例えば振られた歌は?」
「振られた自分を、美しく昇華してるのさ。悲しみを、苦しみを美しく語ってるのさ。そうでなければ人の心に届かないよ。また喜びも楽しさも美に昇華しているんだ。人は美、愛、真実を受け入れる。それが歌、音楽、アートだと、そう思うね。」
僕はいつしかエンの言葉に酔っていた。
「そんなこと考えたことなかった。」
「彼女の世界とはそういう世界。そういう価値を創造する世界さ。」
僕は、エンの言うことは正しいと思った。
「そういえば、そうかも。アンジーはファンタジーの世界に生きていて、それを人に語る。よくわからなくても、なんかそうなりたいと思って受け入れてしまう。まるで魔法みたいだ。」
「美っていうのはね、古風な言い方をすれば、神からのギフトを最大限に実現することだと思うんだ。本当の自分を見つけて、自分の才能の最高の完成を目指すのさ。アーティストというのは美に奉仕する敬虔なる修道士なのさ。」
僕はこの大物アーティスト、エンにすっかり魅了されてしまった。彼にあらがえない自分に驚いていた。
「エン、あなたって意外にインテリなんですね。すっかり見方代わりました。今では尊敬しています。いままでアーティストとして崇拝していたのとは別の意味で。
僕の生き方に不安があったけど、あなたのような人が、憧れていたあなたがそういう確信を持っているなら、僕は信じようとおもう。この世界を信じてみます。」
「俺はね、有名になって、憔悴していたんだ。自分を見つめても、見つめても何も見つからなかった。彼女と会うまでは。そして一瞬で未来が見えた!一瞬で世界が変わった。彼女は俺のディーバだよ。」
僕の心からエンへの嫉妬心は消えていた。そして僕たちは永遠の友情を誓い、心を溶かしあってお互いのことを語りあった。こんな大物と一瞬にして親友になれるなんて、これも魔法だ。
僕は大胆にも、どのように努力すれば彼のように頂点を極められるのかと聞いてみたりした。
エンは言った。
「自分のことを考えずに、人のためにどこまで生きられるかだね。これがアンジーに出会ってからの俺の哲学さ。だって、彼女はそういう風に生きてるだろう。彼女はいつも、人が幸せになるよう生きてる。」
僕はうなずいた。そう、彼女は人のために生きてる。だから、一人の男を愛せないといったのだろう。
彼女が僕をエンに合わせ、彼を通して大切なことを学んだ。彼女は、僕が望んでいる人に会わせてくれた。
エンは僕の肩に手をまわして、肩を組んで、彼の歌を口ずさみ、僕もそれに合わせてその歌を歌った。
エンの妻とアンジーが帰ってきた。
エリーは夫に言った。
「二人とも楽しそうね。私はここにいるほとんどの人に紹介されたわ。まるでプリンセスの気分よ。握手で手が疲れちゃった。
アンジーって本当に素敵なの。こんなに温かい人だとは思わなったわ。人って外から見ているだけじゃわからないものね。今日誘ってくれてありがとう、エン、すごく愛してるわ。」
「意外なお言葉をいただき、こちらも舞い上がりそうだよ、エリー。何か月ぶりにそう言ったかな?だから、なんか変わるかもしれないといったろ?」
「変わったわ、本当に。ねえ今度、彼らをマリブの家のディナーに招きましょうよ。いいでしょ?」
アンジーは微笑んだ。
「お言葉、すごくうれしいわ、エリー。でもね、私はいつもスケジュールいっぱいで、タイミングが合わなかったらごめんなさいね。私の未来の予定は半年先までいっぱいなの。だから今日ご一緒できて本当に幸せよ。」
「わかるわ、アンジー。世界があなたを求めているものね。ではもし神様がそんなチャンスを下さったら、またお会いしましょう。」
エンは妻に言った。
「今日の君は謙虚なんだね。信じがたいことだが。」
「そう、すごく幸せだから。だって私はもう年を取って魅力もなくなってきたと思っていたのよ。あなたに対してもね。でも今日は、こんな私でもまだ人を喜ばせられることを知って、こんな高級な方々まで。
それで、これからも自信をもって魅力を振りまいていこうと思ったの。だってギフトでしょこれは。彼女が若返りの魔法にかけてくれたみたい。エン、私はまだいけてるわよね?」
「もちろんさ、そして君は1時間前よりも美しく輝いている。ずっとそのままでいてくれよ。」
嬉しそうにエリーはアンジーに言った。
「ねえ、アンジーこの魔力はいつまで続くの?」
アンジーは神秘的に微笑んで言った。
「あなたが、そうしていたい限り。」
エリーはアンジーを抱きしめて、キスをした。
エンと僕は顔を見合わせ、微笑んだ。そして煌めくアンジーを眺めた。
彼女はシャンデリアの光を集めてまばゆい輝きを増幅し、その場一帯に魔法を放っていた。
僕の永遠の恋人、アンジー。




