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3話 入学式

野球をする許可を貰ってから数週間後、俺はめでたく少年野球チームに入った。


投げ方や打ち方、ボールの取り方などは知っていても、あまり体を動かしたことがなかったため、最初は拙い動きしかできなかったが、この体がハイスペックなのか、すぐに様になって来た。


正直ここまでこの体が運動神経がいいとは思っていなかったので、すごく嬉しい。すぐに上達するため、一層楽しくなっていた。


俺はそこでついに小学五年からエースになることができた。そして、さらに小学六年のときの夏の大会で、県大会の優勝まですることができた。


それでも関東大会までいくと、強豪チームが集まり、二回戦敗退に終わってしまった。


そんなこんなで、明日から中学生である。母さんに野球をやるための条件として、有名な私立校である、常光学院に入ることになった。


この常光学院は、昔からお金持ちの子供達が入る学校らしく、大企業の社長の跡取りや、いいとこのお嬢様が全国から集まるらしい。


まあ、条件として出されても、ここに入る試験はそこまで厳しくなく、結構楽にいけた。前世での知識で大半を乗り切ったのだが。


というか、前世で俺は病弱だったために勉強する時間は病院でいくらでもあったので、中学試験で出てくる問題くらいは朝飯前だ。


ただ、条件として入ったのはいいのだが、ここの野球部は弱小チームだ。ほとんどはお偉いさんの子供達が知り合う社交の場なので、部活動はあまり重視されてないし、やる人も少ないのだ。


ただ、あるにはあるし、楽しく野球ができればそれでいい、とも思っていた。あの子と出会うまでは.........





















入学式は、ほかの中学とあまりかわらなかった。ただ、入学する子供たちは、有名な資産家の息子や、総理大臣の息子、某自動車会社の娘など、名だたる面子だったが。


まあ家の会社、倉敷ホーム株式会社は、名前からわかると思うが、建築業者で、家やマンションなど様々な住宅を扱ってる。それなりに名の知れた会社だ。正直、あまり興味はない。


それに、父さんが言うには、息子に継がせるとかそういう意思は無く、優秀な部下の内から選ぶ、らしい。


まあ、俺も建築とか家とかに興味はないから願ったり叶ったりである。将来プロ野球選手、それが無理なら大学の教授にでもなって量子力学で場の量子論について研究していこうかと考えてる。前世で興味のあった学問の一つだったし、何より物理が好きなのでその分野に連なるのならなんでもいい、とか呑気に考えてる。


まあ長々と脱線したけど、要するに俺の名前は他の人たちにも知られている、という事だ。


入学式が終わり、自分が割り振られたクラスに行くと、早速話しかけてくる男がいた。


「お、お前隣の席じゃん、俺、佐久間裕人って言うんだ。気軽にひ・ろ・とって呼んでくれよな。」


佐久間裕人と言えば、たしか最近自民党で地位を上げてるって言われてる佐久間智一の息子か。いちようこういうのは全部把握しといた方がいいと両親に言われていたので覚えてきた。結構気さくでチャラそうなやつだな、政治家の息子なのに...ってそりゃ偏見か。


「ああ、よろしくな、裕人。俺は倉敷和宏。かずひろって呼んでくれていい。これから宜しくな。」


「おお、倉敷ってあの倉敷ホームの?こりゃすげぇーのと知り合いになっちまったな。おっと、これからよろしく頼むな。」


そう言って手を差し伸べてくる。握手を求めているらしいので、俺はそれに応える。


裕人は握手し終えると今度は俺とは逆の隣席の人に声をかけ、話し始めた。今のうちに友達をいっぱい作っておきたいのかもしれない。それか、まあこれから偉くなるかもしれない人とお近づきにって魂胆かもな。


そんな風にさっき知り合った裕人のことを考察していると、俺の、裕人とは逆の隣席に女の子が腰を下ろした。何処かで見たことがあるような気もするが.........思い出せない。


「何か用?」


ちょっと長く見すぎたせいか、不快そうに俺に声をかけてきた。


「ごめん、不快に思ったなら謝るよ。なんかどっかで見たことがあるような気がしたから。」


素直に本当のことを言って謝る。するとその女の子は、「そう。」とだけ言うと鞄から筆記用具と何やら英語の参考書を広げて勉強し始めた。半端ないガリ勉系女子のようだ。


「覚えてないのね.........」


その女子の一言は、俺の耳には届かなかった。

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