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第七十二話 神界会議開幕

お待たせしました、最新話です。



光が弱まり、目を開けるとそこにはたくさんのご馳走と酒を楽しむ神々の姿があった。

俺がその光景を見て呆気にとられていると天使のような恰好をした人がこちらに来た。


「お待ちしておりました。クリンゲル・ヴァールハイト様。ドラゴニア様。そちらの方は?」


「ああ、従者なの。」


その質問にはニアが答えて天使は納得する。すると天使は懐から酒と盃を取り出した。


「失礼ですが、従者の方は神の力を…?」


「いや、宿してないから視えないの」


「承知いたしました。ではこちらをお飲みください。」


そう言って盃に酒を注ぎ差し出す。俺はそれを受け取ると凪沙に渡した。


「なんですか?これ?そもそも、ここどこですか?」


「とりあえず百聞は一見に如かずだ。これを飲め。」


「このにおい…お酒ですか?お師匠様、私、未成年ですから。」


「良いから。」


俺が無理やり渡すと凪沙は恐る恐る酒を口にする。そしてそれを飲み干した瞬間凪沙は自分の眼をこする。


「な、なんですか?いきなり、たくさんの人が…」


「これが神界なの。神様の世界よ」


ニアが答える。凪沙はただただ呆然として辺りを見回している。酒を飲んだ瞬間に神たちが視えるようになったのか。なかなか面白い酒だな。


「では、会議が始まるまでしばしの時間があります。どうぞごゆっくりおくつろぎください。」


天使はそういうとフッと消える。多分あれが案内役なんだな。

ニアは天使が消えるとすぐに歩き出す。そして近くにあった椅子に腰かける。


「ふう、疲れたの。これからすることをちょっと説明するからそこに座るといいの。」


ニアは俺と凪沙に座るように促す。俺たちが席に着くとニアは説明を始めた。


「ここは神様の会議。これはもう言葉通りなの。で、議題内容は恐らく今回は邪神のことなの。最近また動きがあるとかないとかで神界も警戒しているの。」


「え?そうなのか?」


「まあ、案外デマの可能性もあるの。そこは実際のところは分からないのよ」


また邪神が動き出したということはもう受けた傷は回復したということか。俺も4年間で成長したし、今度はただやられるだけじゃない。今度現れた時が奴の最後になるように俺はこれからも力をつけなくては。


「でも実際そういう本気の会議は最初だけなの。それからは雑談会みたいなものなの」


そういうとニアは近くにあったリンゴのようなものを取ると齧る。


「こうやって、もぐもぐ、好きなもの食べたらいいの」


「食べ放題ですか!?」


「そうなの。やけにテンション高いのね?」


「食べるの大好きですから!!」


凪沙は立ち上がるとご馳走が並べてあるテーブルに走る。その時、凪沙は一人の女にぶつかって倒れてしまった。俺は凪沙に駆け寄り起こすと女に謝罪を述べた。


「すいません、うちの従者が…」


「いや、こちらも不注意だったのだ。許してくれ。」


その女は凄まじい美貌を兼ね備えていた。抜群のプロポーションを持ち、長い漆黒の髪をストレートに伸ばしていて整った顔立ちは凛としている。切れ長の大きな目からは覇気を感じる。おそらくこの人も神だろう。日本の浴衣のような服を着ていて全身を深い青色で整えている。


「っと、君は初めて見る顔だね?もしかして君が創造神様の…?」


「あ、はい。クリンゲル・ヴァールハイトです。よろしくお願いします。」


「そうか。私は日本の『竜神』だ。名前は…そうだな。シナノとでも呼んでくれ。特に名前が無くてな。水の神だから川から取った名だ。」


「そうですか。よろしく…」


「ちょっと待つの。」


なぜかいきなりニアが現れる。しかもご機嫌が斜めのようだ。さっきまでリンゴっぽいの食ってたから機嫌よかったんだけどな。


「うん?誰かと思えば神龍王…いや、今はドラゴニアに戻ったのか?」


「戻った?」


「それは後で気が向いたら説明するの。そんなことよりお前、なんでここにいるのよ?」


ニアはシナノに敵意むき出しで問いかける。龍の名残かほかの人より鋭い犬歯がきらりと光る。


「なぜって、呼ばれたからだ。神の会議に神が出なくて如何する?」


「そういうこと聞いてるんじゃないの。なぜわざわざニアが来ることを知っていてニアに近づいたのと聞いているのよ」


「いや、それは君たちの従者と偶然ぶつかったからで…」


「御託は良いのよ!さっさと失せるの!」


「はいはい、落ち着け」


俺は今にもシナノに蹴りかかろうとするニアを抱き上げて押さえてシナノから距離を置く。


「ムキーー!!何するの!」


「今回はどう考えてもニアが悪い。すいません、シナノさん」


「いや、結構だ。どうにも昔から彼女とはそりが合わなくてね。これ以上ここにいると今度こそ蹴られそうだから私は退散するよ。失礼した。」


「いえ、こちらこそすいませんでした。」


そういうとシナノは華麗にその場から去っていく。ニアはそれに中指を立てている。


「こら。女の子がそういうことするんじゃない。」


「けっ、なの。昔っからあいつの態度が気に食わないの。」


「なんかかっこいい女性でしたね。大人って感じです」


凪沙はシナノが去っていった方向をずっと見つめている。でも手に持っている皿にはいろんな食べ物が乗っている。いつの間に取ってきたんだ。


「そういえばドラゴニアに戻ったってどういうこと?」


俺がニアに質問する。ニアは俺に抱きかかえられたまま説明を始めた。


「うーん、簡単にいうとニアももともとクリンゲルみたいに人間だったの。」


「へ?マジで?」


「そうなの。魔法世界で普通に暮らしている女の子だったの。いや、やっぱり普通じゃないの。親がいなくて……」


「え?」


「親の代わりが古龍だったの。」


「ありえねー!!」


まさかのカミングアウト!

親が古龍って。でも、それが神龍王になる理由とつながるのか?


「で、まあいろいろあって死んだのよ。そしたら創造神様が『お前才能あるから神様やってみ?とりあえず竜神で良いだろ。親がそうだったし。』って言うからああなったの。」


「軽い!!」


俺が神龍王の誕生の秘密にツッコミを入れていると大きな鐘の音が鳴り響き始めた。


「なんだこれ?」


「会議の始まりの合図なの。」


ニアはそういうとその場に跪く。俺と凪沙もそれにならって跪く。


すると前方に見慣れた顔の神…創造神が降臨した。


「神々よ、よくぞ集まってくれた。長い前置きももはや必要なかろう。では、これより神界会議を開始する。」


そう宣言する創造神。その発言に周囲の神が歓声をあげる。

いや、なんでこんなに喜んでるんだ。普通会議って嫌なものではないのか?


「この会議は神様の職務を忘れて飲み放題のいわば飲み会なの。年に一度の息抜きと言えばわかりやすいのよ。」


「そういうことか。ていうか、創造神って本当に偉いのな。」


「様をつけるのよ。創造神様は実質の神界トップ。天照大神様も同じくらいだけど現状は創造神様が一番なの。」


俺はニアの情報に驚きながら周りを見渡す。みんな酒を頭からかぶるように飲んでいる。本当にはめ外してんな…

凪沙を見ると既にさっきまで皿にあった食べ物がすでに無くなっている。いつの間に食べたんだ。こいつ、ここにきて食べることしかしてない。


と、そんなとき、創造神が俺のところまで来ていたのに俺は気づかなかった。


「凪沙、食うのもいいけどちゃんとほかの神さに失礼の無いようにしろよ。」


「多分お師匠様が一番失礼なんじゃないでしょうか。」


「何が?」


そう言いながら俺が振り向くとそこには創造神が。


「うおああ!!びっくりした!」


「それ酷いよね。仮にもトップの神様だよ?」


「口調が崩れてるぞ、創造神。」


「おお、んんっ!して、クリンゲルよ。一か月ぶりじゃな。痣の方はどうじゃ?」


そう問いかけてくる創造神に俺は服の袖をまくりながら答える。


「そうだな。変わりないって言えばつまり、悪いってことなんだけど不幸中の幸いか?広がっては無いよ。」


「そうか。それは良かったのじゃろうな。さて、今日は来てくれてありがとう。ドラゴニアの姿も久しぶりに見ることができて、元気そうじゃし、安心したわい」


そう言った創造神の顔は孫を見守るお爺ちゃんの顔だった。


「クリンゲル、本人にも様つけないのね……」


「だって、友達感覚でいいって言ったの向こうだもん。」


「そうじゃよ?別に問題ではないのう」


「そんなことはありません!!」


いきなり話の間に入ってくる若い男。これも神様だろうか。眼鏡をかけて魔法世界風の衣服を身に纏っている。魔法世界風っていうのはその…説明しがたいけど生地の質が麻っぽい何かでできていて着た感じがガシガシした奴だ。神様もそういうの着るんだな。ちなみに、エリート養成学校は制服なのでもっといい生地でできている。見た目も日本で言うならブレザー的な感じだな。


「えーと、君は確か…」


「神エルノーラなの。」


「そう。神エルノーラ、どうした?」


「覚えていただいており、光栄です。それよりも創造神様?こんな若造に呼び捨てなど…この若造、常識がなってないのではありませんか?普通創造神にため口など聞かないでしょう?」


「覚えてなかったよね?」


俺のツッコミは華麗にスルーされる。


「でもわしが許可したしのぅ」


「そういう問題ではありません!!」


まあ、怒りたくなる気持ちも分かるんだけどね。俺も本当は敬語とか使いたい人なんで。シナノには実際敬語使ってるし。あ、タケミカヅチはなんかそんな気になれないからなしだけど。


「エルノーラ?あんまり怒ってるとモテないの。」


「君は誰だ?さっきからちょろちょろと…!!」


エルノーラがニアにそう言った瞬間その場の空気が凍り付く。創造神と俺はすぐさまその場から離れた。ちなみに凪沙は我関せずといった様子で必死に料理を食べていたので無理やり抱えて連れてきた。


「ニアのことを忘れるなんて。……愚かだな。」


一瞬、神龍王だった頃の覇気がニアの口調に現れる。それだけでエルノーラはその場に尻もちをついて倒れる。


「もう神じゃないけど、発言力は創造神様が認めてくださってるの。それを努々忘れないようにするのね」


ニアはそういうとまたリンゴ的な何かを取って齧る。あいつ、あれ好きなのかな。


「さて、神エルノーラよ。直に会議の題が発表されるじゃろう。それまでお主もくつろいでおけ。」


「……承知いたしました。」


創造神がそういうとエルノーラはおとなしく引き下がる。

本当に神龍王ってすごい権力持ってたんだな。


「それにしてもさっきのドラゴニアは怖かったのぅ。」


「そうだな。あれは怒らせたらダメだわ。」


俺と創造神は改めてそれを心に誓うのだった。





創造神に言外にもうこれらの者に近寄るなと言われてからエルノーラは俺たちから少し離れた場所で酒を飲んでいた。

グラスに入った日本の酒…ワインを眺めながら先ほどの恥辱の限りを思い出す。


「屈辱だ……この私が亜神と人間風情に恥をかかされるなど…」


グラスのワインを一気に飲み干すとそう呟く。


「必ず、報復してやる。」


エルノーラは持っていたグラスを握りつぶすとそう言い残して会場の人ごみに紛れていった。





お読みくださりありがとうございます。

日本の神様の名前や設定等は実際の神話などをモチーフにしていますが僕の妄想で作っていたり、変更していたりするのでそこは大目に見てください。

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