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魔王より愛を込めて(仮)  作者: ヤシの木 登
第一章 第一次転生期
9/10

イエガネーゼ2

3/15

内容変更しました。

家から飛び出して幾分冷静になった俺は早くも後悔していた。



「さっき賢く生きようって決めたばかりじゃないか……」



確かに両親に対して怒りを感じたが、もっと他にやりようがあったはずだ。

家を、いや、この集落から出るというのは最悪の結果と言える。


どうも感情に流されすぎている気がする。

俺はこんなに直情的な性格ではなかったはずなんだが……。

これが『精神が肉体に引っ張られる』という現象なのかもしれない。



「しっかし、これからどうしようか」



住所不定無職

ホームレス

家出少年


色んな言い方があるが簡単に言ってしまえば、



「イエガネーゼ(家がねぇぜ)!!!」



この一言に尽きる。


こんないたいけな少年が野宿をしているところを発見されたらどうなるか……想像するだけで恐ろしい。

きっと俺のピュアなジョニーを求めて数々の猛者(ショタコン)が群がるに違いない!

その結果どうなるか。

聖杯戦争勃発である。



「……お、恐ろしい!やめろ!俺はマスターじゃないんだ!!」


「またお前は訳の分からないことを……」



自分の世界に入り込んでいると、後ろから声が聞こえたので振り返る。そこにはこの世界で唯一人の親友の姿が。



「聞いたぜ?お前集落を出るんだってな」

「おお、ウィル!

まぁ、あれだ。俺もキレやすい十代だからな。

盗んだバイクで走り出したい時期なんだよ」

「だから意味わかんねぇよ!

まぁ、思いの他元気そうで良かったよ」



俺の軽口にツッコミながらも、どこか安心したように苦笑するウィル。



「だけどお前のことだ。

どうせ内心では心細いんだろ?

だから俺もついていってやるよ」




は?

こいつ何言ってんだ?

ついていく?

俺に?

馬鹿かこいつ。



「お前なに言ってんだよ、俺についてくるなんて緩やかに自殺するって言ってるようなもんだぞ」

「だからだよ。お前一人を危険に晒すことなんてできるか。

俺達親友だろ?」

「でも……」

「あー!うるせぇ!

俺がついていくって言ってんだからいいんだよ!

それに一人より二人の方がまだ安全に旅が出来る。そうだろ?」



なにそのカッコイイセリフ!恥ずかしいんだけど!

そしてそんな言葉に感動しちゃってる自分が悔(ry


でも、



「お前それ魔王軍の真ん中でも同じこと言えんの?」

「は?」



ドラグーンと戦闘してから思ったことなのだが、今の俺が善戦できた奴等が精鋭と呼ばれているなら、修練を積んで魔王軍に所属すれば、俺も上の地位まで上れるかもしれない。だから魔王軍に所属して功績をあげるのもありなんじゃないか、と。



「え?お前軍にはいりたいの?」

「おうさ!もっと強くなってから魔王軍に入る!そしてあわよくば魔王を目指す!」



だからそんな思い付きので危険な行動にウィルを巻き込むのは些か忍びない。それに子供が一人だろうが二人だろうがあまり変わらないというのが現実だ。

子供が二人揃ったってゴ○ンクスにはなれないのだ。



「魔王を目指す者が一人旅位できなくてどうする!だから俺は一人で行く」

「でも……!」

「それでもし、俺が軍である程度の地位に上る事ができたらその時は、魔王になるのに協力してくれないか?」



ウィルが葛藤しているのか顔を歪ましている。

そのまま数秒程、沈黙が続いていたが、不意にウィルの表情がふっと緩む。

その顔には何かを決意したかのような清々しさが見て取れた。



「……はぁ、わかったよ。

確かにそんなに大きな目標があるなら一人旅くらいでうだうだ言ってちゃ駄目だよな。

ただし、絶対に次に会う時まで死ぬんじゃないぞ」



なんだかんだでこいつは人の気持ちを理解できる奴だ。

今のやり取りで、俺がウィルを連れて行くのに心苦しさを感じていることに気づいたのだろう。



「当たり前だ!俺を誰だと思ってやがる!」

「ただの家を追い出された子供だろうが!」



だから、俺が湿っぽい別れになるのが嫌だということも理解したのだろう。いつも通りの軽口にいつも通りのツッコミ返してくれた。



「あばよ!心の友よ!」

「その辺でくたばるんじゃねぇぞ、親友!」



笑顔のまま親友との別れを済ませた俺は軽い足取りで集落から出て行く。


さぁ、今から目標に向かってやることだらけだ!

まず魔法を完璧に使いこなせるようになることと、多少は体力もつけないとまずいだろうから体づくり。

それから軍に入るために魔王城の城下町に行く。そして軍でのし上がるためにも何らかの策略を考えておかないとな。


咄嗟に思いつくだけでもかなり忙しい毎日になりそうだ。



「……だから、グスっ、泣いてる暇なんてないのに」



肉親から裏切られた後に感じる他人の思いやりが俺の頬を濡らしていた。


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