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魔王より愛を込めて(仮)  作者: ヤシの木 登
第一章 第一次転生期
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種族に関するエトセトラ1

あまりの光景に口をあんぐりと開け、唖然として空中に突っ立ってるメリーちゃん。


「....アンタはまず、魔力制御の練習からしたほうが良さそうね」


確かに一々魔法を使用するのにこの威力では色々と厄介だ。

しかし、ジュエル種の子供は精々、下級魔法が使える程度の魔力しかないという話だった筈だが、今の魔法は下級と呼ぶには些か壮大すぎる。


「今の魔法は何級なの?」

「何級って言われれば....そうね、種類的には下級、になるのかしら。ただ、込められてた魔力は上級に届くか届かないか位だったわね」


上級並み、か....。

これは俺が特別保有量が多いのか、それともウェルから聞いた話自体が間違っていたのか、どちらなのだろうか。


「しっかし、ジュエル種は全員、こんな出鱈目な魔力持ってるの?それともアンタが特別なだけ?」

「俺が特別、って可能性はあると言えばあるけど....。何か引っ掛かるんだよなぁ」


宝石に魔力を通さずとも案外、すんなりと魔法を使用することが出来た。

ならば、俺以外にも今まで何人かは宝石に魔力を通さない使用法に気付いていても良さそうなものだ。


その旨をメリーちゃんに説明して、二人で暫し思考する。


「ーーーもしかして、宝石に魔力を通さないと魔力制御が極端に甘くなるんじゃない?これだけの魔力量だもの、宝石を通せない子供が下手に魔法を使えば大惨事になる可能性があるから」

「....そうかっ!」


その仮説なら話の辻褄が合う。

先程、もし俺があの水の玉を撃ってしまっていたら、目の前一帯の木々の大半が薙ぎ倒されるという惨事に見舞われていただろう。

そのような事態を避ける為に、子供は宝石が成熟していないから魔法を使えない。宝石を通さない魔法の使用法が分からない。等と言っておいて、子供に魔法を使わせないようにしていたのではないだろうか。


「まぁ、予測の域は出ないけどね。取り敢えずアンタは魔力を制御出来るまで練習するか、大人になるまで魔法を使わないか、どちらかにしなさいよ」

「....りょーかいでーす。」


大人になれば使えると言われても早い内から魔力制御の練習をしておいて損はないだろう。

今日から暇な時間を全て、練習にあてるとしよう。


「じゃあ魔法の使い方も教えたし、私は妖精郷の入り口を探すとするわ。....約束の果物、頂戴よ」

「はいよ。どうもありがとね」


果物を渡しお礼を言うと、メリーちゃんは手をヒラヒラさせながら、森の中へ去っていった。


ーー

ーーー


それから暫く、魔力を出し過ぎないように魔法を使う練習をしていたが、これがどうにも難しい。

少し気を緩めると、先程のように特大の水の玉が出来上がってしまう。

進歩した事と言えば、水の玉は魔力に戻すようにイメージすれば、分散して消えるということが判明したくらいだ。

まぁ地道に頑張るしかないだろう。


ふぅ、と一息吐いたところで、周りを見ると空がオレンジ色になり始めていた。

集中し過ぎていたようで、気が付けば夕方になっていた。


「そろそろウェルとの約束の時間だな。....おっとと」


流石に魔力を使い過ぎたのか体が多少重く感じ、よろけてしまう。

自分の魔力量を測るのも練習内容に入れておかないとな....。

そんな事を考えながら、昨日ウェルと薪拾いをしようとしていた場所まで重い体を引きずりながら歩いていく。


「おーい!エル!こっちだ、こっちー!」


ウェルのほうが先に着いていたようで、昨日と同じ場所に立っていた。


「じゃあチャッチャと薪拾って帰ろうぜ!」

「....あいよ~」

「何だよ、元気無いじゃないか。腹でも痛いのか?」

「ちょっと体がダルいだけだから気にするな」


二、三言、言葉を交わしてから、各々薪拾いのために別れる。

三十分程でウェルの持ってきていた大きめの籠いっぱいの薪を集めることが出来た。


「これだけあれば大丈夫だろ。さっ!帰ろうぜ」

「おー!」


俺は体がダルいので、籠をウェルに持たせて集落までの道を歩いていく。



「ーーって言ってんだろうが!早くもってこい!」


森を抜けて集落に入ると、何やら野太い怒鳴り声が耳に入ってきた。

集落で何かあったのだろうか。


「何かあったみたいだぜ!見に行ってみよう!」

「おう!」


俺が行こう、と言うとウェルもそのつもりだったのか直ぐ様返事を返してきた。

二人で集落の中央付近へ行ってみると、他種族と思われる、竜がそのまま人の形になったような姿をした人物が何人か居て、集落の長と会話をしているようだった。


「何回も言わせるなよ?今すぐ酒と食料を持ってこい!」

「ですから、ここには集落の皆が暮らしていけるギリギリの食料しか無いのです」

「そんなこと聞いてねぇんだよ!いいか?俺達はたった今、我ら魔族の天敵である、人間の街を襲撃して帰ってきた英雄様だ!そんな英雄様を労り、供物を捧げるのがお前ら弱小種族の義務だろうが!」


先頭に立つリーダー格の男が声を荒げながら、なんとも理不尽な事を口走っている。


これが種族の格差と言うものか....。

産まれてから今までの記憶の中で、メリーちゃん以外の他種族と出会った事が無かったからあまり実感が湧かなかったが、こう目の前で見せつけられると、腹の底から沸々と怒りが混み上がってくるな....。


「あれは多分、ドラグーン種の精鋭部隊だ」


怒りで拳をギュッと握りしめていると、隣にいるウェルが小声でそう教えてくれた。


「....ですが、本当に食料が少ないのです。どうか勘弁して頂けないでしょうか」


ガキッ


長が言い終わると同時にリーダー格の男が指で長の額の宝石を貫いた。

長は体の力を失い、膝から崩れ落ちその場に倒れる。


「能書きはいいから早く持ってこいって言っただろ?何ならこの集落を壊滅させて丸ごと奪ってやってもいいんだぜ?」


遠目から事の成り行きを見ていた集落の人達をグルっと見回して、そう吐き捨てる。


一瞬の沈黙の後、集落内は喧騒に包まれる。

悲鳴をあげて地べたに座り込む者。長に駆け寄り安否を確認するもの。家の中から食料を持ち出す者。泣き叫ぶ幼き子供。

各々がそれぞれの行動をとっている時に俺はただ茫然とその場に立ち尽くす事しか出来なかった。




....あいつ、人を....殺しやがった....。




この世界では、ありふれた出来事なのかもしれない。

だが、前世も含めて、初めて目にする人の死は、俺に様々な感情を抱かせた。


それは、人の命がこれ程までに軽いという現実に対する恐怖。


何時、自分が殺されてもおかしくないという現状への焦り。


人の命を容易く奪ってしまった強者に対する憤怒、軽蔑、畏怖、憧れ。


色々な感情が頭の中で入り交じって、ゴチャゴチャになってしまうが、その中で、一番に体を突き動かしたのは....


「ふっざけんなよ!テメェ!」


ーーーこの身が燃えてしまいそうな程の、憤怒の感情だった。

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