教えて妖精きゅん!2
「.....は?....えっ?そんなことでいいの?ていうか使えないの?なんで?」
ー
ーー
ーーー
『魔法の使い方を教えてくれ』という先程の俺の願いに対して、メリーちゃんの返答がこれである。
「それでいいよ。というかメリーちゃんはジュエル種について良く知らないの?」
まぁ知っていたらそんなことを言わないだろうが一応念の為。
「そういう種族が居るってこと位しか....でも!魔力が強い種だとも聞いたことあるわ!」
うーん。
妖精は他種族についてあまり興味が無さそうだ。妖精郷に引き篭りのようだしそれも仕方ないか.....。
お陰で種族差別されないのだから助かったな。
よし!ここはエルお兄さんが一つ教鞭を振るうとしよう!
かくかくしかじか
「ーーーと。こういうことなんだよ!」
「へー、額の宝石にね~。なんでそんなに面倒なことするのかしら。何か意味があるの?」
うっ、それについては俺もまだ知らない....。
後でウェルに聞いておこう。
「と、兎に角!宝石を通さずに魔法を使う方法を教えてくれ!妖精って言う位なら得意なんだろ?魔法。」
「得意なんてもんじゃないわよ!魔力と供に生きる妖精にとって、魔法なんてアンタ達が呼吸するのと同義よ!見なさい!この華麗なる魔法をっ」
そう豪語するメリーちゃんの手の平の上に水滴が集まり大きくなり始める。
その水滴は直径5cm程で成長を止め、メリーちゃんが手の平を前に突きだす。
すると、ヒュッと音がして水の玉は発射された。
一瞬遅れてダンッと、木に水魔法がぶつかる音が響いた。
見ると木が水の玉の形に抉れているようだ。
ーーー以外に威力たけーな....。
妖精が使う魔法なんて悪戯に使うような可愛らしいものだと思っていたが、普通に攻撃魔法じゃないか。
しかし!今の俺のテンションの前ではそんなこと、些細な問題でしかない!
「うっわ、すげーよ!攻撃魔法とか初めて見た!俺にも使える?ねぇ、使える?ねぇ?」
「....ちょっ、使えるわよ!鬱陶しいから纏わりつかないで!」
おっと、俺としたことがまた取り乱してしまった。
「....コホン。それじゃあまず魔法の基礎から教えます!」
「いぇーい!」
俺のテンションが落ち着いてからメリーちゃんが咳払いを一つして説明を始める。
「まず基本となる五属性ね。火、水、雷、土、木の五つの属性があって、攻撃魔法のほとんどはこれらが基になるわ」
そう言いながら、何処からか持ってきた木の枝で地面にそれぞれの属性の絵を火から順番に円になるように書いていく。
「それと魔法には相性があって、火は木に強くて木は土に、土は雷に、雷は水に、水は火に、って具合になるわ」
書いた属性の絵を枝で指しながら相性についての説明をしてくれる。
「ふむふむ。よくある設定だね」
「設定?」
「いや、こっちの話だから気にしないで」
在り来たりだな、とも思うけど自然の摂理的にこうなるんだろうな。
五行思想みたいなものだ。
「後は催眠と補助系統の魔法があるわね。催眠は幻覚を見せたり眠らせたりする魔法よ。補助系統は治癒とか強化とか空を飛ぶ魔法とかね」
「....色々あるんだなぁ。でも光とか闇とかの属性は無いの?」
この二つは男のロマンに欠かせない属性だけど、そこまで御都合主義じゃないだろうなぁ....
「あるわよ?.....光と闇は上級の魔法になるから、教えなくてもいいかなぁと思ったんだけど」
やっぱりありましたかファンタジー!
しかし上級となると相当難しそうだな。
「ついでに言っちゃうと光と闇の上位にあたる、天属性って言うのもあるわね。」
なん....だと....?
天属性?名前からして神聖な響きだ....。
つ、使いたい!使えたら絶対カッコいい!
「そ、そ、それっ!天属性!教えてくれ!いや、下さい!」
「無茶言わないで!天属性を使える存在なんて二、三百年に一人いればいい方なのよ!私だって知識として知ってる位で、習得方法なんて知らないの!」
二、三百年に一人か....。
そんな伝説級の魔法なら習得は諦めた方がいいだろうな。
....しかし使ってみたい。
光と闇の上位って言うくらいだからまず光と闇をマスターすれば可能性はあるかな。
「じゃあ光と闇の魔法でいいから教えてよ」
「....光と闇は上級だって教えたでしょーが。ていうか基本の魔法しか教えるつもりは無いわよ。果物一つでそこまでする訳ないでしょ?」
確かに果物一つという代価で上級魔法を教えてもらうのは虫が良すぎるか。
仕方ない...
「はいはい。じゃあ基本の魔法を教えて下さい。お願いします」
「ふふん。まっかせなさーい!....と言いたい所だけど、魔法の使い方なんて本能で分かるものだと思ってたから、いざ聞かれると教えずらいわね...。」
「.........」
「そ、そんな目で見ないでもちゃんと教えるわよ!」
「.....じょあまず何から始めればいいの?」
「まず魔力を体の外に押し出して」
体の外に、か。
先程は手に集めてたから出来なかったんだな。
「その次は?」
「後は外に出した魔力が火なら火。水なら水に変化するようにイメージするの」
....なんだ、簡単じゃないか。こんな事なら大人にならなくても分かりそうなものだけどなぁ。
まぁそれはさて置き、早速実践するとしよう。
魔力を体の外に押し出して、と。
魔力が水になるようにイメージ。
そして水になった魔力が手の平の上に集まり、水の玉になるようにイメージ。
おっ!集まってきたぞ!
これが魔法かぁ。
いざ使ってみるとなんだか実感が沸かないなぁ。
ん?
「なんだか大きくなり過ぎじゃないか?」
てっきりメリーちゃんが作った水の玉位の大きさで止まるかと思ったら、その大きさを優に超え、直径20cmを超えてもまだ成長し続けている。
「ちょっ!ちょっと!どんだけ魔力込めたのよ!」
「どんだけって言われても、適当に魔力出しただけだしなぁ」
「適当にって、アンタどんだけ魔力あるのよ!」
会話をしている内も水の玉は大きくなり続け、今では少し大きめの家を飲み込める程の大きさに達していた。
「は、早く玉状じゃなくてただの水になるようにイメージしなさい!間違っても撃つんじゃないわよっ!」
ただの水になるようにイメージすると水は形を崩し、地面に流れていく。
.....辺り一面が洪水の様になってしまった。
こ、これは凄い。
まさか初魔法がこんな事になるなんて思いもよらなかったが取り敢えず、成功?はしたのでめでたし、めでたし。
なのか?