教えて妖精きゅん!1
おぉぉおい!妖精だよ!フェアリーだよ!ファンタジーの体現者だよ!むしろファンタジーそのものだよ!
あぁ、可愛いなぁ.....。
もし、俺と同じような大きさだったら間違いなく「綺麗だ」と表現しただろう整った顔はしかし、身長20cmあるか無いかの大きさでは「可愛い」と表現する他ない!
大きなパッチリとした目、シュっと線の細い顔、高い鼻、神秘的な青い髪。
正に美形だと、万人がそう例えるような美しい顔なのに敢えて言わせてもらおう。
「可愛い」と!
うぉぉぉ......!異世界万歳!ファンタジー万歳!
「転生最高ー!」
「.....アンタいきなり何言ってんのよ」
......失礼。
俺としたことが些か取り乱してしまったようだ。そして魂の叫びpart2が例の如く声に出てしまったらしい。
これは急いで弁解に走らなければ。
先程からジト目でこちらを伺ってくる妖精きゅんの俺に対する評価が山を転げ落ちるが如きスピードで落ちてしまっているに違いない。因みに俺の精神衛生上もよろしくない。
「....失礼。このような森の奥地で貴女のような可憐な女性に出会えるという奇跡に気が動転してしまいましてな。ハッハッハ」
我ながら完璧すぎるダンディ感だ。これで妖精きゅんもイチコロだね☆
「かっ、可憐だなんて....そ、そんなこと、あ、あるかなぁ?」
ほ、ほらな?チョロイだろ?
割りとギャグのつもりでやったのに以外にもクリティカルヒットしてしまった....。
顔を茹でダコのように真っ赤にしながら両手を頬に添えてフルフルする姿は正に「萌え」の一言に尽きる。
こ、これは....魂の叫びが....
「うぉぉー!転生最高ー!」
「だから五月蝿いわよ!」
ーー怒鳴られてしまったので取り敢えず冷静になることに。
「へー、アンタ、ジュエル種なんだ」
「そうだよ、ていうか俺、妖精なんて初めて見たよ。いるって聞いたこともなかった」
「まぁ私達は基本的に妖精郷の外に出ないしね、知らなくても不思議じゃないわ」
落ち着いた所で雑談中である。
話によると妖精に会えるのは極稀らしい。
ということは今、俺の運気は最高潮なのではないだろうか。
ところで
「じゃあ何で妖精きゅんはこんな所に居るの?」
「....きゅんって何よ、きゅんって。それに私にはメリーって名前がちゃんとあるのよ。固有名詞で呼ばないでくれる?」
「わかったよ、メリーちゃん。因みに俺の名前はルシエルだから。エルって呼んで!それで何でここに居るの?」
メリーちゃんと言うのか。名前まで愛らしいな...。
「ーーーみ....まよ...たの」
「え?なんて?」
「だーかーらっ!道に迷ったのよ!」
なんだ?その理由は。
あれか、もはや狙ってやっているのか?じゃないと説明がつかないぞ。こんなキュートな存在。
「.....妖精郷までの帰り道がその....分からなくなっちゃって....森の中をうろうろしてたの。そしたら面白いことしてるアンタが居たから話し掛けてみたの」
ー
ーー
彼女の話を要約するとこうだ。
曰く、妖精は物を食べなくても空気中に漂っている魔力があれば生きていけるらしい。
しかし、味覚自体は存在するので、蜂蜜や果物等の甘い物は稀に口にするようだ。
ある日、妖精の仲間に妖精郷の中には無い果物が外の世界には有ると聞いた。
ならば採りに行こう!と外に出てみたが中々見つからない。
そして探している内に迷ってしまった、と。
「ほ、ほら。森の中ってどこも似たような景色じゃない?どうにも方向感覚が、その....ね?」
ふむ。確かに一理ある。
俺も初見でこの森の深くに入ったなら迷ってしまうだろう。
「それで?メリーちゃんはこれからどうするの?」
「どうするも何も妖精郷の入口を探し回るしかないわよ。多分そこまで離れた場所でもないと思うし.....。でも妖精郷に無い果物、食べてみたかったなぁ」
余程食べたかったのだろう、メリーちゃんはそう言うと力なく項垂れた。
しかし、果物か....。
ん?そう言えば俺、果物持ってるな。
しかもこの辺で採れる果物はこれだけのはずだ。もしかしてこのリンゴもどきのことか?
「もしかしてこれのこと?」
そう言ってメリーちゃんの前にリンゴもどきを差し出すと、目の色を変えたメリーちゃんが詰め寄ってきた。
「こっ、これだわ!こんな果物見たこと無い!ちょ、ちょ、頂戴っ!」
やはりこれだったか。しかしこれは使えるな。
「あげてもいいけど条件がある」
まさかの好展開に思わず口角が上がり、ニヤニヤしてしまう。
まるで悪役のようだ。
「なっ、何よ?」
俺の表情から何かやましい条件でも出されるのか、と若干ひきつったメリーちゃんだったが何のことはない。
「ーー俺に魔法の使い方を教えてくれ」
たったこれだけの事なのだから。