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連鎖の将器 〜無才の拍取りは万軍を繋ぐ〜  作者: 鷹山
第一部 無才の木札
1/4

第1話:兵法書の中の矢印


 カイ・リンドには、才能がない。

 少なくとも、本人はそう思っている。

 魔法が使えるわけでもない。剣を握れば近所の薪割り名人のおっさんには勝てないし、足も速くない。腕っぷしも普通。いや、普通と言い張りたい。普通であれ。頼む。そこまで低くはないと信じたい。

 では何ができるのか。

 粉を挽ける。

 水車の音を聞けば、軸が少し歪んでいるかどうか分かる。

 石臼に小石が噛んだ時の嫌な音も分かる。

 袋詰めした麦粉の重さを、手で持っただけでだいたい当てられる。


 ……うん。

 地味だ。

 びっくりするほど地味だ。

 もし英雄譚の冒頭で「彼は粉袋の重さを当てることができた」と書かれていたら、カイならその本をそっと閉じる。閉じるし、たぶん二度と開かない。

 だが現実とは、そういうものらしい。


 カイの朝は、いつも水車の音から始まる。

 村の東を流れる川から引いた水が、古びた木の樋を通って水車を回す。ごとん、ごとん、と木組みが鳴り、石臼が低く唸る。粉の匂いと湿った木の匂いが混じって、まだ眠い鼻の奥に入り込んでくる。

 この音を聞いていると、世界は案外きちんと動いているように思えた。

 水が落ちる。車が回る。軸が回る。石臼が麦を砕く。粉が落ちる。

 物事には順番がある。

 順番を間違えなければ、物は壊れない。

 カイはそれが好きだった。

「カイ! また手が止まってるぞ!」

 父の声が飛んできた。

「止まってないって。考えてただけ」

「粉挽きの途中で考えるな」

「考えない粉挽きって、それもう俺じゃなくて水車でよくない?」

「口は回るな。水車よりよく回る」

「家業を継ぐ才能あるってことで」

「水車の才能だ、それは」

 父は大きくため息をついた。


 父の名はガルド。リンド家の製粉所を二十年以上守ってきた男だ。腕は太いし、声も大きい。口は悪いが、仕事は丁寧。カイが幼い頃からずっと、粉と水と木の軋みに囲まれて生きてきた。

 カイも、本来ならそうなるはずだった。

 リンド製粉所の次の主。

 村の麦を挽き、粉を売り、樋を直し、石臼を磨く。春に水量を読み、夏に湿気を読み、秋に麦を読み、冬に雪解けを待つ。

 悪い人生ではない。

 悪くはない。


 ただ、カイの頭の中には、いつも別の音があった。

 太鼓の音。

 軍旗が風を叩く音。

 何千何万の兵が同じ拍で前進する音。

 それは、兵法書の中から聞こえてくる音だった。


「父さん、三番軸、少し緩んでる」

 カイは粉袋を積みながら言った。

「またか?」

「うん。音がちょっと軽い。昨日より半拍浮いてる」

「半拍ってなんだ」

「半拍は半拍だよ」

「粉挽きに拍を持ち込むな」

「いや、でも拍がずれると全部ずれるから」

 父は眉をひそめ、三番軸の方へ歩いていった。

 木槌で軽く叩く。金具を見る。軸受けに手を添える。

 少しして、父は何とも言えない顔で戻ってきた。

「……緩んでた」

「だろ?」

「その耳をもっと役に立つことに使え」

「使ってるじゃん。粉が無事」

「そういう意味じゃない」


 分かっている。

 父の言いたいことは分かっている。

 本を読む暇があるなら、家の仕事を覚えろ。

 兵法なんて読んでも、平民の息子が将軍になれるわけがない。

 村で生きるなら、水と麦と客の顔を覚えろ。

 分かっている。

 分かっているのだが。

 カイは、どうしても知りたかった。

 何千人もの兵が、どうやって一つの軍になるのか。

 盾兵が前に出て、槍兵が間を縫い、弓兵が空を覆い、魔法兵が詠唱を重ねる。その順番がうまく噛み合った時、軍はただの人の集まりではなくなる。

 兵法書では、それを軍陣循環と呼んでいた。

 そして軍陣循環を順に繋ぎ、敵軍の魔力循環を崩す技術を、チェーンと呼ぶ。

 盾が始め、弓が縛り、魔法が歪ませ、騎兵が裂き、最後に決戦術式で解き放つ。

 読んでいるだけで胸が熱くなる。

 いや、熱くなるのは仕方ない。男の子だし。十八だけど。まだ男の子で押し通したい。頼む。押し通させてくれ。

 もちろん、カイは戦場を知らない。

 知っているのは本の中の戦場だけだ。

 地図の上に引かれた赤と青の線。

 右翼、左翼、中央。

 包囲、突破、解鎖、逆流。

 そこでは兵士は矢印だった。

 数字だった。

 けれど、その矢印が動く仕組みを想像するのが、カイは好きだった。

 好きだった、というより、取り憑かれていた。


 仕事が終わると、カイは手早く粉まみれの上着を払った。

「どこ行く」

「じいさんのとこ」

「また本か」

「また本」

「夕飯までには戻れ」

「戻る戻る。俺ほど時間に正確な息子も珍しいよ」

「昨日は遅れた」

「あれは本が悪い。章の切れ目が意地悪だった」

「本のせいにするな」

 父の小言を背に受けながら、カイは製粉所を出た。


 村外れの小道を歩く。

 空は薄い青。川沿いには白い小花が揺れている。遠くでは子どもたちが木の棒を持って戦争ごっこをしていた。

「だからそこで左に回れって……」

 思わず呟いてしまった。

 子どもの一人が振り返る。

「カイ兄、また兵法?」

「いや、今のは違う。あれは……遊びの質を上げる助言」

「遊びに質とかある?」

「ある。勝てる遊びと負ける遊びがある」

「うわ、面倒くさ」

 子どもたちは笑いながら走っていった。

 面倒くさい。

 はい、その通り。

 カイは自覚している。

 人が道を歩いているだけでも、「あそこの荷車が詰まったら流れが止まるな」とか「市場の露店は右を開けた方が人が回るな」とか考えてしまう。

 もう病気かもしれない。

 兵法病。

 響きが悪い。治らなそう。いや、治す気もあまりない。


 村外れには、一軒の古い家がある。

 石造りの小さな家で、庭には雑草が好き放題に伸びている。門の横には、錆びた槍の穂先が飾られていた。

 そこに住んでいるのが、グレン・アーヴィン。

 元王国軍の下級将校。

 片脚を少し引きずっている老人だ。

 村の人々は彼を「グレン爺」と呼んでいる。だが、カイは心の中で勝手に「師匠」と呼んでいた。

 本人に言ったことはない。

 言ったらたぶん、「気色悪い」と言われる。いや、絶対言われる。


「じいさん、いる?」

 扉を開けると、古い紙と薬草の匂いがした。

「勝手に入るなと何度言った」

「十七回くらい?」

「二十三回だ」

「律儀に数えてるの怖いな」

 奥の椅子に腰掛けたグレンが、片目だけを上げた。

 白髪交じりの髭。皺だらけの顔。だが眼だけは妙に鋭い。水車の軸より鋭い。いや、水車の軸は鋭くない。例えが下手だな、俺。


 グレンの前には、古い戦記が開かれていた。

「返しに来たのか」

「うん。『ガルディア平原会戦記』。すごかった。第三騎兵団の側面転回、あれ本当にできたの?」

「できたから記録に残ってる」

「でも地図だと湿地がある。騎兵があの速度で回り込むには、前日に工兵が足場を固めてないと無理だろ。記録には工兵のこと一行もない」

「よく気づいたな」

「やっぱり?」

「勝った将軍の名を大きく書くために、工兵の名は小さく消される」

 グレンは本を閉じた。

「戦記とはそういうものだ」

「でも、だったら本当の勝因が分からないじゃん」

「そうだ」

「いいの、それ」

「よくはない。だが、勝った者は話を美しくしたがる。負けた者は話を書く余裕がない」


 グレンは立ち上がり、棚の方へ歩いた。

 その動きは遅い。片脚が悪いからだ。だが、棚から本を選ぶ手つきは迷いがない。

 カイはその背中を見るたびに思う。

 この人は、どんな戦場を見たのだろう。

 どんな軍陣循環を見たのだろう。

 どんなチェーンの解鎖を見たのだろう。

 聞きたい。

 でも、聞くといつもはぐらかされる。

 あるいは、急に怖い顔になる。

 だからカイは、軽い調子で聞くことにしている。軽く、明るく。そうすれば、自分の中の妙な怯えも誤魔化せるから。

「じいさん、王国軍の大連鎖って本当にそんなにすごいの?」

「本で読んだ通りならな」

「実物見たことある?」

「ある」

「どうだった?」

 グレンは少し黙った。


 その沈黙が、やけに重かった。

 しまった。踏み込んだか。

 カイは慌てて笑った。

「あ、いや、別に言いたくなければいいけど。俺もほら、ただの粉挽きだし? 聞いたところで明日の小麦の値段は下がらないし?」

「美しかったよ」

 グレンが言った。

「え?」

「三万の兵が一つの拍で動く。軍旗が魔力を束ね、太鼓が循環を整え、魔法兵団の詠唱が空を震わせる。盾兵が進むたび、地面そのものが呼吸するようだった」

 カイは息を呑んだ。

 やっぱり。

 やっぱり本物はすごいのだ。

 紙の上の線ではない。生きた軍が、一つの巨大な魔法になる。

「そして、壊れる時も美しい」

 グレンの声は変わらなかった。

 だからこそ、背筋が冷えた。

「……壊れる?」

「長く繋ぎすぎた鎖は、敵だけを裂くとは限らん」

 グレンは一冊の薄い本を取り出した。

 表紙は擦り切れている。題名も半分消えかけていた。

 だが、かろうじて読めた。


 『第五連鎖崩壊記録』


「勝ち戦の本はもう読んだだろう」

 グレンはそれをカイに渡した。

「次は、壊れた鎖の記録を読め」

 カイは本を受け取った。

 紙が古く、指先にざらつく。

「これ、持っていっていいの?」

「返せよ」

「俺の信用、どのくらい?」

「本に関しては低い」

「ひどいな。いや、まあ、昨日も返すの一日遅れたけど」

「一日ではない。三日だ」

「時の流れって不思議だよな」

「ごまかすな」

 カイは笑った。

 いつも通り、軽く。

 だけど本の重さが、少しだけ手に残った。


 帰り道、空は赤くなっていた。

 村の家々から煙が上がっている。夕飯の匂いがする。麦粥と焼いた玉ねぎ。たぶんうちは豆も入る。父は豆を入れすぎる。あれはもう粥じゃなくて豆の集会だ。

 そんなくだらないことを考えながら歩いていると、村の広場が騒がしいことに気づいた。

 人が集まっている。

 役人の馬車が一台。

 そして、王国軍の紋章が入った旗。

 カイの足が止まった。


 嫌な音がした。

 水車の軸がずれた時の音ではない。

 石臼に小石が噛んだ時の音でもない。

 もっと大きなものが、遠くで回り始める音。

 広場の中央で、村長が紙を持って震えていた。

 王国の役人が声を張り上げる。

「王国西部方面における戦線拡大に伴い、国王陛下の名のもと、各村より徴兵を行う!」

 誰かが息を呑んだ。

 誰かが「まさか」と呟いた。

 カイは、ただ立っていた。

 徴兵。

 その言葉を、もちろん知らないわけではない。

 兵法書に出てくる。戦記にも出てくる。兵を集める。隊を作る。補充する。

 でも本の中の徴兵は、いつも一行で済む。

「王は兵三万を集めた」

 その三万の中に、顔があるとは書かれていない。

 自分の顔が入るかもしれないとは、どこにも書いていない。

「対象は十八歳から二十五歳までの男子。魔法適性および身体検査ののち、兵科を定める!」


 カイは十八歳だった。

 ぴったりだ。

 なんでこういう時だけ条件にぴったりなんだ俺は。もっと剣の才能とか魔力適性とか、そういうところでぴったりしてほしかった。徴兵年齢にだけ完璧適合するな。


 父が人混みの中からカイを見つけた。

 母もいた。

 母の顔は白かった。

 カイは笑おうとした。

 いつものように。

「まあ、検査で落ちるかもだし?」

 声が少し上ずった。

 自分でも分かった。

 情けない。明るくしろ。こういう時こそ軽口だ。ほら、何か言え。粉挽きジョークだ。粉挽きジョークって何だ。知らん。そんなジャンルはない。

 父は何も言わなかった。

 ただ、カイの肩に手を置いた。

 重い手だった。


 その夜、家の中はやけに静かだった。

 母は夕飯を多くよそった。父はいつもよりゆっくり食べた。妹のリナは、何度もカイの顔を見た。

「兄ちゃん、兵隊になるの?」

「まだ分かんないって。検査があるし」

「兄ちゃん、剣、下手じゃん」

「そこはもうちょっと包んで言おうか」

「魔法も使えないじゃん」

「包む気ゼロだな」

「じゃあ何するの?」

「……粉を挽く?」

「戦場で?」

「敵に粉を投げる」

 リナは少し笑った。

 カイも笑った。

 母は笑わなかった。


 その後、自室に戻っても眠れなかった。

 小さな部屋の机に、グレンから借りた『第五連鎖崩壊記録』を置く。

 読もうとした。

 でも文字が目に入ってこない。

 徴兵。

 戦場。

 軍団チェーン。

 つい昼間までは、見てみたいと思っていた。

 本物を。

 名将の采配を。

 何万の兵が一つに繋がる瞬間を。

 なのに、いざ自分がその中に入るかもしれないとなると、胸の奥が冷える。

 俺、最低だな。

 カイは椅子に深く座った。

 戦場に憧れていた。

 でもそれは、遠くから見ているからだった。

 地図の上なら、兵は矢印だ。

 戦記の中なら、死者は数字だ。

 でも明日から、自分がその矢印になる。

 その数字になる。

「……いやいや、まだ死ぬって決まったわけじゃないし」

 カイは声に出した。

 自分に言い聞かせるように。

「落ちるかもしれない。検査で。うん。魔力なし、剣だめ、体力そこそこ。これはもう落ちる条件揃ってる。いける。落ちる才能ならある。やったな、カイ。初めての才能だ」

 言ってから、虚しくなった。

 あほか。

 自分で自分にツッコむ。

 でも、黙っているよりはよかった。

 黙ると、怖さが形になる。

 だからカイは、いつも少し喋る。

 明るくする。

 軽くする。

 自分の心が沈みきる前に、冗談で蓋をする。


 翌朝、村の若者たちは広場に集められた。

 十七人。

 その中には幼なじみのトマもいた。背が高く、腕が長い。槍を持たせたら似合いそうな男だ。本人もそう思っているらしく、妙に胸を張っていた。

「カイ、お前、顔色悪いぞ」

「本好きは朝に弱いんだよ」

「今日から兵士だぞ。朝に弱いとか言ってられないだろ」

「まだ兵士じゃない。徴兵予定粉挽きだ」

「なんだそれ」

「俺の現在地」

 トマは笑った。

 その笑いに、カイは少し救われた。


 馬車に乗る直前、グレンが広場に現れた。

 杖をつきながら、人混みをゆっくり抜けてくる。

「じいさん」

「本は持ったか」

「持った。こんな時でも本の心配?」

「お前より本の方が帰ってくる可能性が高い」

「ひどい。いや、ひどいけど否定しにくいのやめて」

 グレンはカイを見た。

 いつもの皮肉げな目ではなかった。

「カイ」

「うん」

「兵法書を読むなとは言わん」

「言われても読むけど」

「だろうな。だから言う。戦場で兵法書を信じすぎるな」

 グレンは杖の先で地面を軽く叩いた。

「本は、死んだ後に書かれる。戦場は、死ぬ前に動く」

 カイは黙った。

「見ろ。聞け。疑え。特に、美しい流れほど疑え」

「美しい流れほど?」

「美しい鎖は、切れた時に大勢を巻き込む」

 グレンの声は低かった。

「お前は昔から、壊れる前の音に気づく。水車でも、石臼でもな」

「それは……ただの癖だよ」

「なら、その癖を捨てるな」

 グレンは少しだけ口元を緩めた。

「怖ければ怖いと言え。臆病は恥じゃない。臆病を隠して前に出る奴が、一番早く死ぬ」

 カイは笑おうとした。

 けれど、うまく笑えなかった。

「じいさん、それ、出発前に言う言葉としては最悪寄りだよ」

「最高の言葉はもう売り切れた」

「どこで?」

「戦場で」

「重いなあ……」

 ようやく少し笑えた。


 役人が出発を告げる。

 若者たちが馬車に乗り込む。

 母がカイの手を握った。

「無理をしないで」

「うん」

「分からないことがあったら、偉い人の言うことを聞くのよ」

「うん」

 父が言った。

「帰ってこい」

 それだけだった。

 カイは頷いた。

 リナが泣きそうな顔で言う。

「兄ちゃん、敵に粉投げるの忘れないで」

「任せろ。王国一の粉攻めを見せてやる」

 リナが泣きながら笑った。

 よし。笑わせた。

 任務達成。

 いや、何の任務だよ。

 馬車が動き出す。

 村が少しずつ遠ざかる。

 水車の音も、川の音も、家族の声も、ゆっくり背後へ流れていく。


 カイは膝の上の鞄を握った。

 中には着替えと、少しの干し肉と、グレンから借りた薄い本。

 『第五連鎖崩壊記録』。

 勝った戦ではなく、壊れた鎖の記録。

 カイは空を見上げた。

 怖い。

 もちろん怖い。

 でも、ほんの少しだけ、胸が熱い。

 本物の軍を見ることになる。

 本物のチェーンを見ることになる。

 名将の采配も、魔法兵団の詠唱も、軍旗の下で動く何千の兵も。

 そして、その中に自分も入る。

 それが嬉しいと思ってしまう自分が、少し嫌だった。

 だが、もう馬車は止まらない。

 村は遠ざかる。

 水車の音は聞こえなくなる。

 代わりに、まだ見ぬ軍営の太鼓が、どこか遠くで鳴っているような気がした。


 カイは小さく息を吐き、誰にも聞こえない声で呟いた。

「……大丈夫。俺は脇役だ。粉挽きの平民。才能なし。危ないところには行かない。うん、完璧な作戦だ」

 自分で言って、自分で思った。

 その作戦、たぶん失敗するぞ。

 馬車は王都へ続く街道を進んでいく。

 兵法書の中で美しく引かれた矢印。

 カイはまだ知らない。

 その矢印の一本に、自分がなるのだということを。

 そして、矢印にも心臓があるのだと、まだ知らない。



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 第一話 巻末資料

 王国軍記録:カイ・リンド徴兵前情報


 氏名:カイ・リンド

 種族:人間

 年齢:18

 出身:王国西部リンド村

 身分:平民

 家業:製粉所

 徴兵前職能:粉挽き補助、水車管理補助、麦粉袋詰め


 特記事項:

 対象者は兵法書の読書を好み、村の退役軍人グレン・アーヴィンより戦記・兵法書を借り受けていたとの証言あり。

 水車、石臼、木軸などの異音に敏感であり、機構の不調を音から察知する癖を持つ。


 本人申告による得意分野:

 粉袋の重さを手でおおよそ判別可能。

 水車の軸音の変化を聞き分け可能。

 ただし、本人はこれを「家業による職業病」と認識している。


 軍事的評価:

 徴兵前時点では未測定。

 剣術、魔法、個人レベル、固有スキル、軍才について特筆すべき情報なし。


 備考:

 兵法書の余白に「この地形で騎兵は回れるのか」「損耗率が低すぎる」「工兵の記述が消されている」などの書き込みあり。

 実戦経験は皆無。


 追記:

 本記録は徴兵前の村内聞き取りをもとに作成されたものであり、軍事的価値は確認されていない。




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