なずなと魔法
「おら、出ろ!今からオークションだ!いい子にしてないと、ぶん殴るからな。」
それから私たちは別の場所に連れていかれた。そこにはたくさんの人がいた。
「おい!早くしろ!」「そうだ、とっとと連れ帰りてぇーんだよ。」
『クズばっかだな。大丈夫だ、なずなは俺が守るから。』
「それでは皆さん!お待たせいたしました!オークションを始めましょう!」
会場はとても騒がしく、みんな汚らしい目をしていた。
「それでは次に、人間でとても珍しい魔法、光魔法を持っているカルネという少年です!」
カルネ、ずっと話しかけてくれていた子だ。
「来い!お前の魔法を見せるんだ!」
「いっ!離せ、痛い!」
「うるせえ、とっとと来い!」
バコッ
「ッ!また、殴られるの?」
そんなの嫌だ、ようやく殴られない生活ができたのに...
また、あの時に戻りたくない!
ガシッ
「あ?なんだお前も殴られたいのか?」
「凍っちゃえ。」
バキッ
カルネを殴った男が凍った。
『俺たちも魔法が使えるのか。なら...少し体借りるぞ!』
ななは上に向かって手を伸ばした。
『アレン!エレン!探してるんだろう?場所を教えてやるよ!』
ドゴーンッ
なずなたちのいる屋敷の周りに雷が落ちた。
「なんだ、今の雷は⁉晴れているのに雷があの屋敷の周りに落ちている。まさか!行くぞ、あの屋敷へ。」
「えぇ、もしかしたらあそこになずなちゃんがいるかもしれないからね。今日は私も頑張っちゃうわよ!」
「何の音だ!って何だこれは‼お前がやったのか⁉お前は、今日の目玉にしてやろう。
捕まえろお前ら!」
「光よ!我らを守りし盾となれ!」
光が私やそこにいる子供たちを包んだ。
「なっ!攻撃がはじかれる!子供のくせにこんなに魔法を使えるのか!」
「全員凍っちゃえ。」
そしてなずなの一言で、その場にいた男たちは全員凍った。
「すごいね!なずな、君も魔法が使えたんだね!」
「ただ、思いついたこと言ったでけ。」
「「ありがとう‼お姉ちゃんたち!」」
『よかったな、なずな。お礼を言われたぞ。』
「うん、なんか少し胸が温かい。」
ダンッ
「ここで何をしている‼お前たち、まさかとは思うが人身売買をしていたわけではないだろうな?」
「うわぁー!何でここに宰相がいるんだ!」
「ここにいるやつらをとらえろ!」
「「はっ‼」」
ドーンッ ガシャーンッ
「なんか外が騒がしいな。俺の光の盾もそんなに強くない、ここを動くなよ!」
ダンッ
「なずな‼」「なずなちゃん‼」
「あっ。アレンさんエレンさん...」
なずなは警戒して構えた。だが、
「なずなちゃん...よかった。本当に良かった。」
「なずな、すまない。俺たちがサキを家で働かせてなければよかったのに...本当にすまない。」
なずなは二人の泣きそうな顔を見て戸惑った。
「なんで?だって、夜の散歩にさそって来いって言ったのアレンさんなんだよね?なんで、泣きそうなの?」
「違うんだ。俺はそんなことは言っていない。サキが君を勝手に恨んで、やったことなんだ。」
「本当に?本当に信じていいの?だましてない?」
『大丈夫だ。なずな、二人を信じていいんだ。わかってるだろう?二人はこんなことをする奴じゃないってことを。』
なずなの瞳に涙が浮かんだ。幸せを忘れて、悲しみという感情もなくなっていたなずなの瞳に。
「っ、私、私ね、二人のことずっとお父さんとお母さんって呼びたいって思ってたんだ。でもね、私にとってのお父さんはあの人だったの。だからね、だから、ね...パパとママって呼んでもいい?」
二人は顔を見合わせ嬉しそうに言った。
「「もちろん。私たちはあなたの親なんだから。」」
「ありがとう‼パパ、ママ!」
なずなに初めて子供らしい、満面の笑みがこぼれた。
ようやくなずなは、幸せを思い出したのだ。おばあちゃんとの暖かい思い出とともに。




