なずなと誘拐
あれから私は正式にアレンさんとエレンさんの子供になった。
私は毎日のように二人に可愛がられ、たくさんのきれいな洋服を着せてもらい、おいしい料理をいっぱい食べさせてもらった。
そうして、2か月がたったころ、夜中にサキさんが来てアレンさんたちに
「夜の散歩に連れて行くように頼まれた」
というのでついていったら、知らない大人たちに布でぐるぐる巻きにされて、連れ去られた。
「なんで?サキさん、だましたの?」
「だって、私は養子にしてくれなかったのにあんたは、すんなり養子にされたから。いつか、私のことを養子にしてくれると思ってたのに...なんで私じゃなくて、訳の分からないやつが養子になれるの?だから、あんたみたいな訳の分からない奴は消えて。出してください。」
「はいよ~。へへッ、これは上玉だぞ!いいもんをもらったぜ。じゃあな!」
「・・・」
―また騙された。なんでだろう?いつもいつも私は騙される。あのときも...―
なずなの父親をななが殺してすぐの時
「君!これは君がやったのか⁉この二人を刺したのは君なのか‼」
「ちがうよ?おとうさんはななちゃんがころしたけど、おばあちゃんはおとうさんがころしたんだよ?」
「近隣に住む住人から証言は取れています。おばあさんは男が殺したと。」
それをきいたけいさつのひとは、わたしをしせつというところにおくるといった。
そこでは、つみをおかしてしまったしょうねんしょうじょがたくさんいる、でもしせつのひとはやさしくきみのみちびいてくれるっていっていた。
しせつにはいると、そこにいるおとなのひとたちはわたしをやさしくでむかえてくれた。
「この子ですね、暴力をふるっていた父親を殺してしまったという少女は。大丈夫です。私たちが優しく、丁寧にこの子に何がいいことなのか、何が悪いことなのか、教えてあげます。」
「よろしく頼みます。なずなちゃん、ここでは、君に暴力をふるう人は誰もいないよ、だからもう誰も殺したりしなくていいんだ。」
「ほんとう?じゃあ、しあわせ?っていうのもわかるようになる?」
「もちろんさ、きっとここの人達は君に幸せちううものを教えてくれるはずさ。」
「うん!ありがとう、けいじさん!」
「あぁ、じゃあな。なずなちゃん。」
わたしはそのときけいじさんのことばをしんじていた。だけど、しせつのおとなのひとたちは、ちっともやさしくなかった。
「あんたみたいな殺人者がなんで来るのよ。」
「あんたなんて、ご飯を食べる資格すらないわ。でも食べさせないで死んだらこっちが困るから、残飯だけはあげるわ。」
「うわぁ~さつじんしゃだ!にげろ~!」
わたしは、おとうさんといたころとおなじせいかつをしていた。
―けいじさんをしんじてたのに!なんで!―
「・・・」
「ずいぶん静かな娘ですね。」
「その方が飼い主に好かれるだろう。」
『すまん、なずな。こうもぐるぐる巻きにされてると、身動きが取れない。』
「いいよ別に、もうどうでもいいや。みんな私をだますんだから。」
『なずな…』
それから数時間、ぐるぐる巻きにされながら馬車に揺られた。
そして、なずなは牢屋に入れられた。そこには、たくさんの子供がいた。
「君も連れ去られたの?大丈夫?けがはない?」
「・・・」
「怖いよね...僕もすごく怖いよ。急にこんなところに連れてこられたんだもん。ここじゃ、何でか魔法が使えないし...」
「・・・」
「そういえばまだ自己紹介してなかったね。僕はカルネ。君は?」
「・・・なずな」
名前を教えてあげたら、カルネはとてもうれしそうだった。
「なずな!よろしく!」
『こんなところでよく、元気でいられるな。なずな、もしなにかあっても俺が助けるからな。』
「ありがとう、ななちゃん」
「何⁉なずなの姿が見当たらないだと?」
「えぇ、今日は一緒に寝ようと思って部屋に行ったのだけど、誰もいなかったのよ。」
「護衛のものはなにをしている⁉」
そこへ、警備の者たちがだれかを捕まえながら駆け寄ってきた。
「アレン様!なずな様と最後に一緒にいた者です。アレン様に夜の散歩になずなを連れ出してくれと頼まれた。庭なので二人きりで大丈夫です。と言われ、二人で外に行くのを許してしまいました。」
「俺はそんなこと頼んでないぞ‼どういうつもりだ!サキ‼」
サキは少しの沈黙の後、言った。
「だって、私がアレン様たちの養子になれると思っていたのに、会ってすぐのあの子を養子にしたじゃないですか‼なぜ、私は養子になれないのにあの子は養子になれるんですか⁉おかしいじゃないですか‼私のほうが先にいたのに‼」
アレンとエレンは軽蔑した眼差しでサキを見た。
「お前には、帰る家があるだろう⁉何を訳の分からないことを言っているのだ‼お前には帰るべき場所があるが、あの子にはなかったんだぞ⁉」
「変えるべき場所?あんなゴミみたいな家がですか?私は妾の子だからと冷遇されているのにですか⁉」
「冷遇ではないと何度言えばわかる!あれはどう接していいのかわからないだけだと何度言えばいい?」
「アレン今は話してる場合じゃないわ。なずなちゃんを救わないと。あの子のことだから、私たちが裏切ったと思っているはずよ。」
エレンがそういうとアレンは、はっとした顔をした。
「そうだな、早く誤解を解いてやらないと。こいつは牢へ入れておけ!」
「「はっ!」」
「待っていろよなずな。今助けに行くからな。」




