なずなと国王様
「よいよい、今夜は非公式な訪問だからな。」
「なぜナタエル様がここに?」
「なずなの養子縁組を頼んだら、見てみたいといわれてな。」
「そちらが、森でアレンが保護したなずなだね?僕は、この国の王ナタエル・ラ・バルツだ。」
「・・・」
こくおう?なにそれ?この人、お父さんに似てる。この人は誰?この人は怖い人?
なずなはどうすればいいのかわからなくて、エレンの後ろに隠れた。
「おや?怖がらせちゃったかな?」
「なずな。この人は大丈夫だぞ。君に何かしたりしない。」
『すみませんが、今なずなはパニックを起こしているので私が代わりに話しましょう。私は、ナベルナといいます。』
「本当に口調が変わるんだな!どうしてパニックになったのか聞いてもいいかい?」
『あなたがなずなの父親に瓜二つだからです。』
「「えっ‼」」
『すみませんが、あなたのことをなずなが父親とは別にの人だとわかるまで、わたしでいさせてもらいます。』
「ななちゃん...あなた、そんなしゃべり方もできるのね。」
―今突っ込むところじゃないだろう―
「そうか、私はそんなにもなずなの父親の顔に似ているのか。」
『父親の髪の色は黒だったので、すぐに父親じゃないことが分かると思います。』
「黒髪?金髪じゃなくて?」
『父親は黒髪だ。なずなの母親が金髪だったんだ。』
「そういえば、なずなの母親はどうしたんだ?」
「・・・夫の暴力に耐えられず、でていきました。」
「暴力をふるう夫のところに子供を置いて?」
『あぁ、望んで産んだ子じゃなかったんだよ。なずなの父親が無理やり生ませたんだ。将来子供が役に立つかもしれないって。』
そこにいる者は全員、言葉を出せずにいた。
『なずなもそれは知っている。何回も父親に言われたんだ、お前は捨てられたと。』
「そんな親がこの世に存在していたなんて...誰だ、その者は今すぐにでもとらえよう。」
『この世界中探してもいないさ。俺たちはこの世界の人間じゃないからな。』
「それはどういうことだ?なな。」
「アレンの言う通りよ。馬車でも言っていたけど、この世界の者じゃないってどういうこと?」
『そのままの意味さ。この世界とは別の世界、俺たちは地球というところから来たんだ。』
「ちきゅう?確かに聞いたことのないが...なぜ違う世界だと?」
『地球には、馬車でも言ったけど魔獣なんていないからな。それに魔法なんて力もない。』
「「魔法がない⁉」」
「それは確かに異世界と考えて当然か。」
さっきからずっとななちゃんたちは難しい話ばかりしている。おうさま?の顔を見てたらころころと表情が変わるから、おとうさんじゃないことが分かった。おとうさんはずっと怖い顔しかしていなかったからだ。
「ななちゃん、もう大丈夫だよ。おうさま?がお父さんじゃなくて、怖い人でもないってわかったから。」
『おっ!そうか、よかった。』
「なにがよかったの?もしかしてななちゃん?」
「うん!おうさま?が悪い人じゃないってわかったから、もう大丈夫だよ!」
「そうか、それはよかった。それでなんだけど、君はこの二人の娘になりたいかい?」
私はちょっとだけ考えた。二人が私のかぞくになったら、これからもこんな環境で過ごせるのかなって。また、捨てられないかなって。
でも、二人なら大丈夫な気がする。
「うん!二人のかぞくになりたい‼ここはすっごくあったかいから!」
「ななちゃん...」「なな...」
「わかった。認めよう、君がこの二人の娘になることを。」
「「ありがとうございます、陛下。」」
「ありがとう、おうさま!」
そう言って私が笑うと、その場にいる人たちがみんな笑顔になった。




