なずなと父親殺しの真実
「あのねあのね、私はね一人じゃないんだよ?私にはねななちゃんがいるんだよ?」
「ななちゃん?」
アレンさんはこそっとエレナさんに耳打ちした。
「空想上の友達だと思う。なずなは虐待されていたんだろう。だから自分を守るために空想の友達を作って、自分を守ろうとしたんだろう。」
「ななちゃんはくうそうじゃないもん!ちゃんといるもん!ななちゃん!」
『おう、ちゃんといるぜ。初めましてだな、アレンにエレナ。俺はナナと呼ばれてるものだ。ありがとな、なずなを助けてくれて。』
「どういうことだ?口調が急に変わったぞ。」
「俺は、なずなが強い自分を望んで生み出された、ナズナの二重人格だ。」
「「二重人格...」」
『ナズナはな、お前たちが言っていた通り虐待されていたんだ。それで強い自分を望んだんだ。そして俺が生まれた。俺はなずなを守るために存在している。お前たちもなずなを傷つけたら容赦しないからな。』
エレナさんとアレンさんは顔を見合わせてから言った。
「あぁ、約束しよう。もう二度とナズナが悲しむことがないようにすると。」
「えぇ、私も約束するわ。あなたもよろしくね、ななちゃん?」
『あぁ、よろしく。それじゃ、俺は戻るぜ。』
私になった。話が終わったみたいだ。
「わかってくれた?ななちゃん、優しいでしょ?」
「ふふっ、そうね。とっても、優しい子ね。あなたたちはとても仲がいいのね?」
「うん!ななちゃんはね、私がおとうさんにぎゃくたいされてるときにね、殺してくれたんだよ!」
『なずな!それは言っちゃだめだ!』
「「え?」」
「殺した?ななちゃん、なずなちゃんのお父さんを殺してしまったの?」
『・・・そうだ』
「なんでだ?虐待していたとしても父親だぞ?父親を中身が違うとはいえ、その手で殺してしまったんだぞ⁉」
『だから、言わないつもりでいたのに...』
「なぜ、そんなことをしたの?」
エレナさんが悲しい顔をして言った。なんで殺したことにおこっているんだろう?
『なずな、少し眠っていてくれ。これからお前には聞かせられない話をするからな。いつか必ず話すから、今は眠っていてくれ。』
いつもはそんなこと言わないのに...
まぁ、いつか教えてくれるならいいか!
「うん!わかった!」
そう言ってなずなは眠った。
「なんだ、眠るってどういうことだ?」
『そのまんまの意味さ。眠ってもらって、俺たちの話が聞こえないようにしたんだよ。』
「なぜだ?」
『これから話すことは、なずなにとって思い出したくもないことだからだ。』
そして、ななは話し始めた。
2年前
「ねぇ、おとうさん。ごはんは?もうみっかもたべてないよ。おなかすいたよ。」
ガンッ
「うっせぇな、俺に話しかけんじゃねえよ!飯ならどっかでもらってこい‼」
そういわれてなずなは、外へ出た。
ガサゴソ ガサゴソ
「あ、あった。きょうはおにくがある。ごちそうだ。」
なずなはいつもゴミ箱をあさってご飯を食べていた。だから、もちろん食べれない日もあった。そんなときはいつも、家から少し歩いて行ったところにある一軒の家へ行った。そこには、一人のおばあさんがいる。
「おばあちゃん、こんにちは。またもらってもいい?」
「えぇ、いいですよ。またご飯をもらえなかったのね。かわいそうに。」
ご飯がない日は、ここに来るとあたたかいご飯をもらえた。
そこはいつも、とても暖かった。幸せだった。
だが、その幸せは長く続かなかった。
「なずなぁーー!」
「なんだい?こんな夜更けに。誰が叫んでいるんだい?」
ガタガタ ガタガタ
「まさか、君の親かい?」
コクンッ
「そうかい、ずっとね、わたしゃあんたの親に言いたいことが山ほどあったんだよ。」
そう言っておばあさんは外に出た。なずなは窓からその様子を見ていた。
「おまえだね、あの女の子の親は!あんたにはね、言いたいことが山ほどあったんだよ!親だというのになんだお前はっ!」
グサッ
「がはっ!」
「うるせーんだよ。てめーにあれこれ言われる筋合いはねーんだよ。」
なずなは慌てて駆け寄った。
「おばあちゃん!なんで?なんでおばあちゃんさしちゃったの⁉なんでよ⁉」
「あー、うっせ。お前も死ねや。ずっと邪魔だったんだよ。てめえーなんて産ませなきゃよかった。じゃあな。」
そのときなずなの中で、楽しかったこと、うれしかったこと、幸せだったこと、すべてが消え去った。そして、何が善で何が悪なのかも。
―あぁ、つよくなりたい。こんなやつ、けせるくらいに―
『俺が助けてやるよ。俺はナベルナだ。』
『そうやって俺が生まれて、なずなの体を使って包丁を蹴り飛ばした。それで、警察に突き出して捕まえてもらおうと思った。
でも、あいつはもう一本、包丁を持ってた。俺は慌てて、蹴り飛ばした包丁をとって刺したよ。』
「そうか、そのけいさつ?ってのはなんだ?」
『簡単に言えば、罪を犯したやつを捕まえるやつだ。』
「そうか、警備兵のことか!」
「ねぇ、ななちゃん。一つ聞いてもいい?」
『なんだ?』
「あなたは何者なの?生まれたばかりで、名前があるってのはおかしいでしょう?」
『やっぱ気づいたか。これが、俺がなずなに眠ってもらった理由だ。俺は、、、』




