なずなと家族
私は男の人についていった。「自己紹介を忘れていたな。俺はアレンよろしくな。お嬢ちゃんの名前は?」「わたし?わたしはね、なずなだよ。あとねあとね、ななちゃん。」「?お嬢ちゃんのほかには誰もいないだろう?」「ななちゃんはもうひとりのわたしだよ。」そう言うとアレンおじさんは困ったような顔をした。「君は今まで、どんな目にあってきたんだろうね。さぁ、着いたよ。ようこそ、バルツ町へ!」「ここでやすんでもいいの?」「もちろん。休むだけじゃなく、住処にしてくれ。」『住処か、いいんじゃない?』「わかった。アレンおじさん!私はどこに住めばいい?」「おじさん...近くに俺の家があるから、そこに住んでくれて構わないぞ。」そう言って案内されたのは大きなおうちだった。「おおーきい!すごいすごい。これっておやしきっていうんだよね?」「よく知っているな。そうだぞ。ここは俺の屋敷だ。」アレンおじさんがおやしきの扉を開けると何人もの人が頭を下げていた。「おかえりなさいませ、アレン様。」「おう、ただいま。こいつはなずなだ。森で拾ってきた。」「また拾ってきたの?アレン。って、森?もしかして魔獣の?」「あぁ、も中に襲われそうなところを拾ってきたんだ。」「大変だったわね。なずなちゃん?だったかしら、好きなだけここにいてもいいからね。私はエレンよ」わぁ、きれいなお姉さんだ。「よろしく!エレンお姉さん!」「まぁ、かわいいわね。」「アレン!この子、私たちの子供にしない?」「おっ!いいな、それ。なずな、考えておいてくれ。」「?よくわからないけど、わかった。」「サキ!なずなを客室に案内してくれ。」「かしこまりました。こちらへどうぞ。」私より少し大きいお姉ちゃんが、一つの部屋に案内してくれた。「こちらで少々お待ちください。」「わかった。」お姉ちゃんはおじぎをして、行ってしまった。「ねえ、ななちゃん。こどもになるってなぁに?」『家族にならないかってことだよ。』「え?かぞく?あんなにやさしそうな人たちだったのに...私、またぎゃくたいされないといけないの?」『あー、そういえば、なずなは家族は虐待する人だと思ってたな。違うぞなずな。家族っていうのは、そばにいてくれてずっと支えてくれる存在なんだ。お前の父親は、それが分からないゴミだったが...』「そうなの?おとうさんがへんだっただけなの?」『あぁ。俺は別にあいつらと家族になるのはいいと思うぞ、あいつらと家族になれば、なずなも普通になれる。』「私、ふつうじゃないの?」『なずなは虐待のせいで、人の優しさを知らないからな。私じゃ、ダメなんだ。私はなずなのそばにいるけど、抱きしめてやったり、一緒に笑うことはできないんだ。』「ななちゃん...わかったよ。でも、私にとって一番大事なのは、ななちゃんだけだよ?」『...ありがとう、なずな。』
コンコンッ
「アレン様とエレン様がお呼びです。」「はぁーい」さっきのお姉さんがまた、案内してくれた。「なずな様をお連れしました。」「いらっしゃい、なずなちゃん。どう?考えてくれた?」「うん!かぞく?になるよ。」「やったわ~!こんなかわいい子を子供に持ちたかったのよ。ねえ、アレン。」「あぁ、そうだな。俺たちの呼び方はなんでもいいぞ。できれば、お父さんとか呼んでほしいけどな。」「アレンさんとエレナさん!」そう呼ぶと二人は残念そうにお互いの顔をみていた。




